先日触れたNHK出版の「旅する日曜美術館」。
既述のとおり、各美術館のコレクションの中からメインとなる作家を抽出し、それを軸に当該美術館を紹介していく内容です。
例えば本書で取り上げられている奥田元宋・小由女美術館などは、日本画家・奥田元宋氏と奥様の人形作家・小由女さんのおふたりの作品を見せる美術館なので、2人の紹介文から美術館概要をつまびらかにする、いたってストレートなパターン。
奥田元宋氏は、力強い赤が印象的な画家。
山種美術館でも繰り返し展示されます。
奥様、小由女さんのほうは、奥田元宋氏より20歳以上若くていまもご健在。
奥田元宋展の記念講演会でお話をされたときに聞きに行ったことがあります。
もともとは元宋のお弟子さん。
その後人形作家の道を歩まれました。
代表作・奥入瀬の制作風景がなかなかタフだったお話など印象に残っています。
一方、自身の美術館では作品を持たず、借りた作品でブロックバスター展を展開する新国立美術館は、当然本書には含まれません。
Bunkamuraミュージアムもしかり。
では、様々な作家の作品を有する美術館の場合、どの作家を軸に語るのか?
興味のある部分でもありました。
だいたいパターンとしては、コレクションのおおもとになった画家、一番作品数の多い画家、あるいは創設者の思い入れが強い画家が選ばれていました。
アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)の場合、取り上げられていたのは、青木繁、藤島武二、関根正二の3人でした。
関根正二はちょっと意外。
確かに短命で作品数の少ない関根の作品を所蔵してはいますが、東近美にも印象的な「三星」があるし。
むしろ、ブリヂストン美術館創設者・石橋正二郎氏に絵の手ほどきをしたうえ、青木繁の絵の収集を勧めた坂本繁二郎こそが、アーティゾン美術館の目玉となる作家では?という思いがありました。
ブリヂストン美術館時代には、大々的に坂本繁二郎展を開催していたし、石橋氏との結びつきが展示室内でも説明されていたのに。。。
・・と思って、「旅する日曜美術館」の西日本編を見て納得。
正二郎氏のコレクションのもうひとつの拠点である石橋文化センター(現・久米市美術館)のほうで坂本繁二郎が紹介されていました。
私が坂本繁二郎の特別展を見たのはいつだったのかな、と先日アーティゾンのポスター展示でチェック。いまから16年も前のことだったか、と懐かしく。
石橋美術館開館50周年記念の展覧会だったらしく、それに坂本が選ばれていたということは、やはり石橋氏との結びつきは強いようです。
その時のポスター(右)
そうそう、この絵がメインビジュアルだった。
ただこの展覧会、馬の絵ばかりで、ちょっぴり飽きてしまったのは内緒!
青木繁もやはりアーティゾンの目玉作家に違いありません。
ずいぶん久々に見た「海の幸」。
本書の解説を読むとー
よく見るとこの絵の群像の肩、足の付け根の位置を確定するためにあらかじめ線を引いていることが指摘されています。
ラフなスケッチ風の絵ながら、意外に緻密だったことがわかります。
展覧会で今回気になったのがこちらを見つめる女性の顔。
これまではあまり気に留めなかったけれど、これは画家の大切な人だったのかも、と。
ひとりだけ丁寧に塗りこめられていますし。
本書で、実際青木の彼女だった、と指摘されていて、ビンゴ!と膝を打ちました。
森村泰昌さんのパロディー「海の幸」を見てみるとー
青木が施した下書き線まで再現されていて笑えます。
解説書とか読まずに、自分で何か発見できると嬉しいものです。
これまでブリヂストン美術館にせっせと通って、私が見つけた(でも、これはどこにも、だれにも指摘されてはいないけど)ものがあります。
何度も繰り返し見てきたゴッホの風車の絵のなかに、、、、
ある日突然、人物を見つけました。↓
この部分。
人物なんじゃないかなぁ。
ドットで描かれた花と同化してはいますが。
最後に、アーティゾンの代表作家と目された藤島武二とー
関根正二。