NHK Eテレで毎週日曜日に放送されている美術番組「日曜美術館」。
放送開始は1976年だそうで、そのアーカイブたるや膨大な量と思われます。
たまに美術館ロビーなどで昔の放送回を上映していることもありますが、単なる展覧会の案内というより、昔は今以上に画家本人へのインタビューや対談が豊富な印象です。
1965年には本番組の前身として短期間美術インタビュー番組が構成されたといい、それらとあわせると情報の蓄積は計り知れず、いまや貴重な宝。
これらを使えば、どんな切り口からでも様々な本が誕生しそうです。
そんななか、見つけたのがNHK出版の「旅する日曜美術館」。
日本全国の美術館それぞれにゆかりのある作家をフィーチャーし、作家を主体として美術館を紹介するのが特色です。
TV番組「日曜美術館」では、日本画家の東山魁夷さんなど、存命中に同番組に出演した作家さんも数多くあったのでしょう。
本書にも、そうしたインタビューテープから掘り起こされた言葉が数々登場します。
宮城県美術館を例にとると、中心的に語られるのは地元出身の彫刻家・佐藤忠良。
本人のインタビューも盛り込まれています。
3年に及ぶシベリア抑留の経験が語られ、少なからず作品にも影響を与えている様子。
長年の共同生活で現地の人とも自然と深い結びつきが生まれ、美意識の変化をもたらしたようです。
例えば、彼の名前を知らしめた「群馬の人」。
表面的にきれいなものよりも、じわじわとなにかにじみ出てくるものを目指していたように感じます。
その後はモダンな女性像を多く生み出していきますが、帰国直後の初期作品は、シベリアをどこか引きずっていた気がします。
そういえば、つい先日、国立近代美術館の常設展に行ったところ、その「群馬の人」を見つけました。
近美にも佐藤忠良作品があったのですね。
宮城県美術館の別館には佐藤忠良に特化した展示室があり、これほど数多く所蔵した経緯は知らずに見てきました。
今回本書で知りました。
本人から寄贈があったと。
舟越保武さんと親友だったというのも初耳です。
野外にある佐藤忠良作品。
展示室の内と外で、同じ構図の材質違いの彫刻が見られるというしゃれた演出も。
自画像。
新館(右)と旧館
「日曜美術館」は現在柴田祐規子アナと作家・小野正嗣さんのコンビが出演中。
これまで数々の方たちが担当されてきました。
WIKIで見て、記憶にあるのは:
加賀美幸子アナ、森田美由紀アナ、山根基世アナ、伊東敏恵アナ、髙橋美鈴アナ。
浜美枝さんも出演されていたようです。
またあまり記憶にないけれど、俵万智さんの名前も。
ほかに、はなさん、檀ふみさん、千住明さん、井浦新さんなど。
近年地方の町おこし目的なども含め美術館がどんどん増えて、様々な展覧会を紹介する番組というイメージが強くなった「日曜美術館」。
時代とともに、多少の変化を伴いつつ、今後も続いてほしい番組のひとつです。