上野の森で開催中の千客万来の「怖い絵展」には、

2種類のセイレーンの絵が出ている。

ひとつは半人半魚のセイレーン、もうひとつは半人半鳥のセイレーンだ。

 

 

まずこちらは人魚に近いセイレーン。

 


ハーバード・ジェイムズ・ドレイパー 『オデュッセウスとセイレーン』(1909年)。

 

 

もうひとつは顔がニンゲンで、体は完全に鳥のセイレーン。

すごい存在感。

 

ギュスターヴ=アドルフ・モッサの『飽食のセイレーン』

 

 

セイレーンを、人間の顔と鳥の体で表すものと、魚で表すものの2通りがあるけれど

一体どちらが正しいのか?

 

 

実はこのセイレーン、ギリシャ神話ではもともと半人半鳥だった。

つまり上記のモッサの作品は、その古い話に基づいて描かれている。

 

 

さらに、ウォーターハウスのセイレーンも、羽ばたく鳥の姿だ。

ただ、胴体と顔のバランスが悪く、超不自然。

まあもともとセイレーン自体が不自然な生き物なのだけれど。

 

 

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作『オデュッセウスとセイレーンたち』(1891年)。

 

 

しかしやがて、北方神話に見られる半人半魚の表現が造形的にもてはやされるようになり、

セイレーンの中に取り込まれるようになったらしい。

 

モデナの大聖堂の柱頭のセイレーンは魚だった。

中世らしいプリミティブ表現がお茶目だ。

 

 

 

スタバのセイレーンも、この魚説を取り入れている。

 

 

 

ちなみに出張で訪れた本場シアトルのスターバックスは

確かにセイレーンを用いているものの、ロゴが微妙に違っていた。

 

 

 

結論としては、セイレーンは元来半人半鳥であったものが、

他の神話との化学反応により半人半魚として表されるケースも出現。

どちらもセイレーンとみなされている。

 

ただし、顔だけは人間の女性というのがお決まりだ。

半人半鳥の場合は胴体全部が鳥ということもあるし、

人間のからだに羽だけがついていることもある。

 

 

芸術家の感性次第で、鳥だったり人魚だったり。

絵画の場合、ロマンティックな画風には、後者の方が似合っている。

 

 

なお、上記のうち、1枚目と2枚目(怖い絵展に出展されているもの)は、

以下の広告看板からピックアップしたものです。


 

 

 

 

3番目のウォーターハウスの絵はWIKIから拝借しました。

 

 

関連:

「怖い絵」展 先に見どころを抑える  

 

(以下は当方のもうひとつのブログFC2から)

イタリア、ちひろ美術館、そしてスターバックス --- ギリシャ神話の人魚をめぐって