オークションの光と影 | 『美術商の鑑定日記』

『美術商の鑑定日記』

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先日、中国の爆買い失速”などのニュースの中に、また一つあまり良くないニュースが入ってきた。

 
『中国人収集家、乾隆帝の印章を約26億円で落札も代金未払い』

フランスの競売で26億円で落札された玉璽(印章)の支払いがされていないというものだ。清朝の皇帝・乾隆帝が使用したもので希少性が高く、人気の品の一つである。


参照元:レコードチャイナ
http://www.recordchina.co.jp/a159791.html
 
またこの記事は 約1億円以上の入札で、ちゃんと支払っている人はわずか47%にとどまっている、ともある。
 
支払い率が47%というのは日本のオークションでは考えられないような数字である。
 
しかも一度、外国に古美術品を持ち込むと、国外へ持ち帰るという事は不可能に近い。
 
中には日本人古美術商が中国に販売目的に持ち込んだが、売れずに持って帰ろうとしたところ、税関で没収されたといった類の話は昔からよく聞く話だ。


この様な情報から見えてくるのは、中国人富豪層の欲望とそれを取り巻く人々の欲望だ。富豪層は、とにかく見栄が欲しい。地位や名誉なようなもので、ここでは皇帝が持っていたものを所有する満足感や見栄である。
またバイヤーの存在も重要だ。高額商品になれば、なるほど得られる手数料は増え、支払いはクライアントの富裕層に任せるといった立場である。

ところでマカオなどの中国人の来るカジノには「大小」というゲームがある。三つのサイコロの数字が大きいか?小さいか?当てる単純なゲームだ。
未払い47%というのはその数字を彷彿とさせる。このゲームに匹敵するくらいの割合でしか大金を得られないというのは、まさに博打的な仕事である。もちろん世界の商人といわれる彼らはその中をたくましく生き抜いているのだ。

幸いにして我々の会社で行なっている日本での売買では、こうした未払いの壁に当たったことはない。それだけでも幸運と思わなければいけないのだろう。


本郷美術骨董館・中国オークション