「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 その6」の続きです。
「第3章 ヴァン・ダイクとイギリス肖像画」では、
17~18世紀にイギリスで描かれた肖像画が
取り上げられていました。
イギリスは、肖像画のみを展示するナショナル・
ポートレート・ギャラリーがあることが示すように、
肖像画が大変多く描かれた国であり、
18世紀に肖像画の黄金時代を迎えました。
古くからの権力をもつ王侯貴族と、
産業革命により力をもつようになった
資産家階級が、自らを誇示する手段として
肖像画を描かせたからのようです。
ヴァン・ダイクは、17世紀前半のイギリスで
活躍したフランドル人の画家です。
彼はルーベンスに師事しました。
1649年に清教徒革命により処刑された
チャールズ1世の宮廷画家で、
イギリスの上流階級の肖像画を多く描きました。
ヴァン・ダイクによる肖像画は、
その後のイギリス肖像画に大きな影響を与える
ことになります。
ヴァン・ダイク「レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー」(1635年頃)
花を受け取る妹のエリザベスと、その横に立つ
姉ドロシーを描いた肖像画です。
おそらくエリザベスの結婚を契機に描かれた作品だそうです。
ドロシーの白いドレスも、エリザベスの黄色いドレスも、
布がたっぷり使われていて、豪奢ですね。
二人の耳元を飾る大粒の真珠も目を引きます。
エリザベスに花を渡しているのはキューピッド。
花冠を被り、深紅の衣装を身に着けたキューピッドは、
母ヴィーナスの象徴である薔薇を渡しています。
落ち着いた威厳のある二人の女性は、キューピッドと
一緒に描かれることにより、神話世界にいるように
思えます。
キューピッドはエリザベスを見上げているにもかかわらず、
ドロシーもエリザベスもキューピッドに視線を向けていないので、
まるで彼女たちの方が上位にいるように見えますね。
背景の右半分に緑の幕が描かれているので、
舞台のようにも思えます。劇的な効果を狙ったのでしょうか。
→「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 その8」に続きます。
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