1.
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『おはよ、(名前)。』
事は三週間前に遡る。
私と、ピアノ講師の櫻井先生が初めて出会ったのは、不思議にも大学構内だった。
「…おはよ。二宮くん」
和『なんか今日テンション低くない?』
「別に。そんなことないよ?」
和「そ?なら、いいんだけど。」
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ギターを背負った二宮くんが、いつものように私が大学の門を通った時に後ろから声をかけてきた。
二宮くんとは、音大に入ってからの仲で。
だけど、もう随分と前から知り合いだったようなそんな関係。
恋愛感情とか、そうゆうのは無いけれど
私は二宮くんと、大学では殆ど一緒にいる。
ドライな性格だからか、もともと女友達が出来ない私に二宮くんは入学式の日、声をかけてきた。
丁度隣に座ってたからってこともあるけれど、彼は私に興味を持ってくれたらしく。
ーー(名前)は他の奴とどこか違ってる
って、出会ってから3日程でそう言われた。
他の奴と違う…
何が違うのか、と問うと
なんとなく、って彼は答えた。
だけど、優しそうに笑う彼のその横顔を見て
きっと彼も私と同じ世界にいる人間なんじゃないか、ってそう思えた。
ゆえに、二宮くんとは一緒にいると楽で。
私が大学で唯一、信頼できる…
そんな人だ。
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二宮くんとの何気ないやりとりは、私にとっては本当に落ち着けた。
そうやって、いつもの日常がこれからも続くと思ってたのに。
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キャーッて女子の悲鳴が聞こえてきて
何か事件でもあったんじゃないかと思い、私は声のする方を見た。
和「…あれ、ウチの学校のOBじゃない?」
不審そうな目で二宮くんが遠目でその光景を眺めながら言った。
私達の視線の先には、男の人が。
遠くではっきりとは分からなかったけれど、佇まいがとても格好良かった。
スラッとした長い脚に、ワックスで少し遊んだ茶色の髪。
目が悪くてよく見えないけど、相当の美形だと思う。
「あの人…、前にも見たことあるの?」
和「知らないの、(名前)くらいだよ。
あの人、ウチの学校で有名人だよ」
「知らなかった。てか、何かで有名なの?」
和「…ピアノだよ。
昔、ピアニストやってたみたい。」
「今は?」
和「今はやめて、ピアノの講師やってるみたいだけど。」
「ふーん」
和「あれ、これで質問終わりですか?」
「え。っあー、名前は?あの人の」
和「櫻井翔。…ほんとに聞いたことない?
ピアニストやってた頃は、”イケメンピアニスト”ってことで取材とかもよく受けてたみたいだよ」
櫻井…翔
どこかで聞いたことがあるような、無いような。
その名前を聞いた時、私は一種の懐かしさを感じた。
テレビで昔…きいたことがあるのかも。
うん、きっとそうだ。