江田島海軍兵学校 世界最高の教育機関
こんばんは。
コミュニケーションデザイナーの吉田幸弘です。
今日のご紹介は、徳川宗英氏の著書です。
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■江田島海軍兵学校 世界最高の教育機関
■徳川 宗英(著)
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海軍兵学校というと戦争のための教育とネガティブに捉えてしまいがちです。
しかし、著者が入学した昭和20年の江田島海軍兵学校では、戦後に向けての教育を図っていました。
この江田島海軍兵学校は、かつて若者が東大以上にあこがれたそうです。
この学校の教育方法、現代にも参考になる部分がたくさんあります。
それでは特に参考になったエッセンスをご紹介していきます。
●江田島海軍兵学校の井上成美校長は、上級生が下級生に型にはめるような行動をとるように指示し、時には体罰をしていたことに対して、呆れていました。
下士官や塀を指揮する士官は、「何を、いかに、いつ、どこで、どうすべきか」を、自分で考えて決定せねばならない。
つまり、自由裁量が最も大切である。
それなのに、やがて士官となるべき生徒たちに、まるで家畜のような生活をさせている、と感じたのです。
そのうえ、こうしたルールに反した場合、上級生が下級生の頬を拳で殴る「鉄拳修正」がしばしば行われていたため、生徒たちは心の余裕を失い、目は緊張のために吊り上がっていました。
将来、人の上に立つことになる生徒たちは、心の豊かな真摯に成長していくべきなのに、このようなこせこせした生活を送っているのは大問題だと感じた井上は、規律やセレモニーが多すぎると考え、教官に意味のないルールを廃止するように命じたのである。
改革の根底にあったのは、日課にリズムをつくり、変化を与えることでした。
朝から晩まで緊張を強いて「張り切れ、頑張れ」と発破をかけたところで、人間はそう頑張ってばかりいられるものではない。
生活にはリズムがあるはずだと考えたのです。
そして、生徒たちの緊張をほぐすためには、一日に一度、腹の底から笑う機会をつくることが肝心だと考え、生徒たちが夜ベッドに入る前の5、6分でよいので、そういう機会をつくるよう指示したといいます。
確かに、士官には判断力が必要です。
判断力をつけるためには、「柔らか頭」が必要です。
この井上校長の考え方は非常に共感できます。
●山本権兵衛は自分と同じ薩摩藩出身者であっても、組織にとって益のない者は淘汰し、若手士官を第一線に起用したのです。
また、自分のやり方に反発する者であっても、組織にとって有用と思われる人物は残すようにしました。
すべては海軍の将来を考えてのことでした。
組織をあずかる者として、派閥にとらわれない人事を行うのはあたりまえのことですが、いざ実行するとなると難しいものです。
しかも当時の「藩閥」は、現在の私たちが想像する以上に強固なものでしたから、海軍内には相当な反発があったと思われます。
しかし山本は、そうした子をものともせず、改革を断行して意欲のある若い人材を活用する道を開きました。
日本海軍は真の近代化に踏み出したといえるでしょう。
●トラファルガーの海戦に勝利し、ナポレオン一世のイギリス本土上陸作戦を挫折させ、この海戦で勝利したネルソン提督は、イギリスでは知らぬ者のない英雄です。
ネルソン提督は、戦闘開始にあたって旗艦「ヴィクトリア」上に、「わが国は各員がその義務をまっとうせんことを期待す」との信号旗を掲げ、部下たちを鼓舞しました。
「国のために命を捨てよ」とも「他に抜きん出るはたらきをせよ」とも言わず、士官は士官として、兵隊は兵隊として、与えられた任務を忠実に遂行することを求めたこの言葉は、イギリス史上に残る名句として今に語り継がれているそうです。
与えられた任務をきちんとこなす。
このように部下に動いてもらうためには、適材適所の仕事を与え、かつ自己重要感を満たすために承認するということが大切になりますね。
●分隊には「隊番」という制度がありました。
これは1号、2号、3号の生徒が3人1組となり、1号生徒が2号生徒と3号生徒を個別に指導するシステムです。
この方式には3つのメリットがありました。
1.生徒1人に先生が1人ずついるようなものなので、こまかいところまで目配りができ、指導がゆきとどくことです。
2.指導に遺漏がないよう、上級性も常に勉強しなくてはならないこと。
企業でも、先輩が後輩に仕事を教えるのが一般的ですが、「自らも勉強を怠ってはいない」と断言できる社員が、どれほどいるかは疑問です。
3.画一的な教育ではなく、それぞれの生徒の個性に即した指導ができること。
このやり方は、現代の人材教育でも活かせますね。
部下が部下を育てていく。
そうすることによって、次世代のリーダーが自然に生まれていく。
いい制度ですね。
●マリアナ沖海戦で零戦部隊に壊滅的な打撃を与えたアメリカ軍戦闘機グラマン「ヘルキャット」等には、操縦席後部に防弾用の鋼板が配され、燃料タンクは特殊なゴムで覆われていました。
こうした防禦装備をすることで、アメリカは多くの時間とお金をかけて養成したパイロットの損失を、最小限にとどめようとしたのです。
零戦の弱点は、そうした装備がないことでした。
航続距離を伸ばすことを重視し、機体を可能な限り軽くしようとしたため、操縦席や燃料タンクを守るための装備を犠牲にしたのです。
そのせいで、敵の砲弾を受けると燃料タンクにすぐに引火し、機体は空中分解し、多くのパイロットが命を落としました。
前線の指揮官からは、防禦装備を望む声があがりましたが、海軍の幹部はこの容貌を、「大和魂が足りない」のひとことで退けたといいます。
マリアナ海戦の敗因をひとことで言えば、日本がアメリカのように合理的かつ科学的な志向に徹底できなかったことにあった、といえるでしょう。
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