人生の<逃げ場> | リフレッシュコミュニケーションズ 吉田幸弘

人生の<逃げ場>

こんばんは。



コミュニケーションデザイナーの吉田幸弘です。




今日のご紹介は、上田紀行氏の著書です。




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■人生の<逃げ場>
■上田 紀行(著)
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昨今、日本の会社では効率と成果を求めているところが多くなってきています。



確かに、会社は儲けがなくてはなりませんが、あまりにも効率と成果を求めすぎると、従業員は疲弊してしまいます。



メンタルの問題を抱えている人は予備軍も含めて、日本では非常に多いと言われています。



本書にはその要因として、以前の会社には「共同体」と「宗教」の要素があり、その2つの要素に救われている人が多かったのですが、今はなくなってしまったということがあります。




ならば、どうしたらいいか。




自分で会社以外の場所を作って、自己重要感を満たしていくことです。



本書は決して会社を辞めて起業しろなどと言っている本ではありません。



会社員でいながらも自己重要感を満たす方法、心の保ち方を伝えている本です。



最近、疲れ気味の方は気分転換に読んでみるといいでしょう。



それでは特に参考になったエッセンスをご紹介していきます。




●人は、自分を支える「線」を単線ではなく複線にしておいたほうが、精神的に安定します。




たとえば会社ではなかなか出世ができなくてくすぶっていたとしても、地域で少年サッカーチームの指導者として頼りにされていれば、「俺だってけっこうやれるんだぞ」とプライドを保つことができます。



一方、会社単線社会で生きている人は、会社で自分が評価されるかどうかが世界のすべてになります。



その会社から外れることは、人生の落伍者になることを意味します。



ですから会社単線社会は、本来はそこで生きる個人にとってはリスクが大きな社会なのです。



(P20~21)



最近はSNSなどの発達によって、会社以外にも居場所を作りやすくなりました。



会社と家の往復では、会社でイヤなことがあった場合、全てを引きずってしまいます。




会社以外でも居場所を作ることで、自己重要感が満たされるようになります。



●「できる人」よりも「魅力的な人」になることを目指しましょう。



「できる人」になること自体を否定しているわけではありません。



特に若いときには、まずは自分が自立することが一番です。



いくら利他、利他と言ったところで、自分のことさえおぼつかない人間が、他人のことを支えられるわけがありません。



けれども少なくとも40歳ぐらいになって、周りから「あの人は仕事ができる」と言われるようになったら、そろそろ自分の生き方を転換するべき時期だと思います。



これまで自分が成功を収めるために用いてきた知恵や知識を、これからは周りの人たちや社会のために使ってみるのです。



そうすることで、多くの人に喜んでもらうことを自分の喜びとしていきます。



また管理職に就いている人であれば、自分の成功や成長だけではなく、部下の成功や成長を自分の喜

びとしていきます。



また周りの人から相談を受けたときに、ちゃんと含蓄のある言葉を返せるように、モノの見方や生き方の幅を広げておくことも大事です。




実は「できる人」は私の経験でもそうですが、脆かったりします。



何かのきっかけで「できる人」から「できない人」に転落する危うさがあります。



例えば、上司が合わない人になった、環境が変わったことによる心身の不調だってあります。



その場合、すぐに「できない人」になってしまいます。



すると乱高下する株価のように、安定しない他者からの評価にずっと苦しめられることになります。



けれども一度蓄えられた人間的な魅力は石垣の土台のようなもので、そんなに簡単に評価が揺らぐようなことはありません。




「自分は人からどう見られているだろうか」といちいち気にする必要がなくなります。



魅力的な人になって他人を支えていくことは、結果的に自分を支えることにもちながっていくわけです。



●文化人類学の贈与論や婚姻論の理論のなかに、「限定交換」と「一般交換」という概念が出てきます。



限定交換というのは、たとえばAさんがBさんに何かプレゼントをしたら、BさんはAさんにネックレスと等価のものをお返しするといったように、交換が二者間で成り立っているような関係です。



これに対して一般交換は、AさんがBさんに何かプレゼントをしたら、今度はBさんはCさんにプレゼントをし、そしてCさんはDさんに、DさんはEさんにというように、プレゼントの受け渡しが多数間で円滑的に行われ、最後はまたAさんのところにお返しが戻ってくることを前提に行われる交換のことを言います。



文化人類学や社会学では、限定交換による交換しか成り立たない社会よりは、一般交換が成立する社会のほうが強いとされています。




限定交換の場合、交換は二者間で行われることになりますから、「こいつに贈り物をしても、ちゃんとお返しをしてくれないんじゃないか」という疑念が生じると、相手にプレゼントをしようとはしなくなります。



事実プレゼントをしても、相手が返してくれないリスクはかなり大きいと言えます。




ですから双方の間に強固な信頼関係がないと、限定交換は成り立ちません。



一方、一般交換は、「自分が誰かにプレゼントをすれば、回り回っていつかは自分い戻ってくるだろう」といった社会に対する信頼感によって成り立っています。



一般交換では、いろんな人のところにプレゼントが回って行きやすいですから、それだけ恩恵を受ける人もたくさん出てきます。




よく、人に貢献しようということが自己啓発の本などに書かれていますが、「限定交換」では精神的に辛くなります。



誰かに何かをしようと思ったら、「一般交換」の概念を持ち合わせているほうがいいでしょう。




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