ライトノベル→本格派三国志小説→ゲームときまして、次は漫画です。
「蒼天航路」
原案・李學仁(イ・ハギン)、漫画・王欣太(きんぐ ごんた)
全36巻 講談社モーニングKC (文庫版全18巻 講談社漫画文庫)
私は文庫版を買いました。
実はこちらも今手元には置いていなくて、若干記憶があやふやだったりするんですけど、ご了承ください。
兄はこの漫画を友人宅で読んだらしく、当時「かぜ江」で孫策にハマっていた私に、
「孫策はラーメンマンみたいなやつで頭かち割って死んだ」
と、ショッキングなことを言ってくれました。
いったいどんな漫画なんだと思っていたんですが、とあるきっかけで漫画の一部を読む機会があり、「やばい面白い!」と思って本屋に走り第一巻から揃えました。
結果、兄の言うことはあながち間違ってはいなかったんですけどね。
この漫画は曹操が主人公で、曹操の子ども時代から曹操の死までの時代を描いています。
それまで吉川三国志や横山三国志の、いわゆる「演義」がベースの三国志は曹操がよほどの悪玉として描かれているそうで、それに対してこの漫画では曹操をそれだけではない、尋常の物差しでは測れない破格の人として描いています。
実は私はこれまで悪玉の曹操に触れたことがなかったので、その点に関しては何の引っ掛かりもありませんでした。「演義」では悪役だという知識だけはあったのですが。
「かぜ江」でも「北方三国志」でもどちらも史実ベースの作品でしたし、「無双」に関しても特に曹操が「悪」としては描かれていないので。
新しい解釈の人物描写は曹操だけにとどまりません。
私が驚いたのは、董卓と諸葛亮ですね。やっぱり。
董卓といえば、やはり無双の董卓みたいに残忍で欲深くて頭悪そうな(悪知恵は働きそうだけど)イメージあるんですけど、蒼天董卓は圧倒的な武力をもって、どこか英雄然としているというか。残酷なんですけど口汚い田舎者って感じは全然しないんですよね。たしかに正史では、もともとは辺境地域で活躍したエリート武官らしいですからね。
諸葛亮にいたっては、変態です。子供のころにちょくちょく出てきたときは可愛いもんでしたが、大人になって三顧の礼で迎えるときなんか、もう人を超越してます。おそらく「三国志」で最も人気のある人物を、よくあんな風に描いたなとw赤壁後は少し落ち着くんですけどねw 何かと(精神世界で)曹操にちょっかいかけますが、てんで相手にされない。どうやら正史の曹操伝(正確な伝の名前忘れた)で、「諸葛亮」の名が一切出てこなかったことをこういう解釈で描いているようです。あの人材狂いの曹操が、一切興味を示さなかった、と言う風にですね。これはなるほどーと思いましたね!
~好きな人物・心に残るシーン、たくさん~
曹昂の死
素直で利発そうな、曹操の長男です。苑城で罠にかかり曹操とともに逃げ出すんですが、先を行く曹操の馬に矢が刺さり、さらに自分の背中にも矢を受け、ためらいなく自分の馬を曹操に譲り、そこで命を落とします。
その時の曹操の表情と言葉。のちに自分の子供もろくに覚えないような人になっていますが、ここでは自分のせいで死なせたこともあり、珍しく自分の行いをひどく悔いています。曹操の息子としては曹丕や曹植、曹彰が有名ですが、曹操は彼らを「人材」としてみていたのに対して曹昂はより「息子」として見ていたのではないか、と妄想する次第でございます。このあと曹昂の養母となっていた正室に責められ、離縁を突き付けられます。この時の曹操の「ごめん」が可愛くもあり切なくもあります。
周瑜
周瑜がまたかっこいいんですよね。赤壁前後にかけて、特に。孫策と仲良くやってる頃もいいんですけど、やっぱり赤壁で曹操の大群が迫る中、毅然と孫権と軍全体を支えている裏で、自分の才覚が曹操にかなうのかと苦悩している姿が印象的です。小喬に「かまってやれなくてすまない」って言ってたところもなんか好きですね。小喬と言えば、大喬の孫策に対する愛が深かったことを描いているのも嬉しかったです。あと、徐々に体をむしばんでいく病を必死に抑えようとして、弱っている姿を見せようとしなかったところ。「もう少し、静かにしていろよ、じゃじゃ馬!」みたいな感じだったと思うんですけど、泣けます。自分がいなくなったら天下二分が成らないことがわかってるんですよね。で、いよいよ死が迫って呂蒙に筆を用意させ、遺書をその場でザーッと書いたところで崩れ落ちる。なんだっけ、ええと、調べてきました(ネットで)!
「心を燃やすは帝王の軍略 心を包むは孫家三代
天は一個の武心に これほど裕福な天命を与えたことがあったか
周瑜 字を公謹 享年36 」
あーもうやばい、泣ける。。
長坂における張飛
北方を読んでいた私は長坂と言えば趙雲の活躍の方が印象に残ってたんですが、蒼天ではここの張飛めっちゃかっこいいですよね!民を守るため最後尾で曹操軍に向けて長時間の威嚇。名だたる将を押し返す気迫。最後橋を落とす前、曹操とジェスチャーで会話しますが、全くかみ合っていないところ、大好きですw 張飛らしいw
もちろんそのあとの趙雲のアクロバティックな活躍も素晴らしかったんですが、やっぱり張飛が心に残りましたねー。蒼天の張飛は愛嬌があって可愛いです。
孫家三代・特に孫権
孫堅がえらく外人ぽくてイケメン(?)で、抜け目なくて曹操も認める英雄だったのがうれしいです。
孫策はなぜあの髪形にしたのか、これだけはどうしても解せないんですが(ww)、人物的には魅力的に描かれていて、まずまずですね。
そして三代目の孫権。兄がまだ生きていたころは、動物好きで虎にまたがって敵を追いかけまわすような自由奔放な子供だったんですが、孫家を継いで一転、どっしり落ち着きをもった雰囲気に。一見無気力にも見えるんですが、赤壁の戦いを通してより素晴らしい君主として成長していきます。それでも曹操や劉備に比べて、いい意味でも悪い意味でも若さが見えるんですよね。勘とか感情とかではなく、よく物事を考える人だと思います。
「要は、っていうな」
と、何でもかんでも物事をわかりやすくしたがる劉備に対して、そんな単純なものじゃないだろう、というスタンスです。これには感動しましたねー。
今まで孫権と言うと、特に赤壁前までは、父や兄のように戦はうまくないし、まだ年若いのもあって軍議での発言権もほとんどないと言っていい状態で、コンプレックス持ちだったり優柔不断だったり、必要とあらば同盟ひっくり返す狡猾さも持っているといったイメージがあったんですけど、蒼天の孫権は今までのなかで一番好きな孫権です。部下のことも大切に思い、また信頼しているとてもいい君主だと思いました。
遼来来
まさしく合肥の張遼は鬼神!あの強さ、あの迫力はやばいですね!!
烏丸で郭嘉と共に戦っている時もかっこいいんですが、ここはもう言葉にできません。呉軍も頑張ってるんですけど止められない。このあと需須口(だっけ?^^;)で甘寧に奇襲されて馬持ってかれて、自分は体調崩して何もできなくて悔しがってる張遼かわいいですけどねw
荀彧と曹操の雪合戦
なんといっても、雪合戦~荀彧の死という流れが泣けます。下手に私が解説すると価値が下がる気がして恐縮ですが・・・。儒を真っ向から否定する曹操と、曹操を史上の主君としながらも儒を捨てきれない荀彧の対立、そして病床の荀彧のもとに曹操から届けられた器に入った何も書かれていない丸めた紙。これを見て荀彧は「お前はもういらない」と言われたと誤解し、こぼした薬を大量に飲み込んで死に至るんですが(自殺・・・ですよね)、死ぬ直前か死んだあとか、荀彧は曹操の真の意を理解します。
以前戯れに雪合戦をしていた時に、荀彧が仕事で呼ばれ、「またの機会に」という言葉を残して立ち去ったんですね。だから「また雪合戦をしよう、まだ死ぬな」という曹操の想いが隠されていた。恥ずかしながら最初読んだときは「どーゆーこと??」って感じだったんですが、気づいたときは超感動しました。もともと雪合戦のシーン好きだったのでよけいに。正史だか演義だかで空の器を贈るというエピソードあったと思うんですけど、見事なアレンジですよね。北方でも護衛のつもりが監視をつけられたと誤解して荀彧が服毒自殺し、ひどく曹操が落ち込む様に描かれてましたけど。
その後も、曹操がどこからだったか忘れましたけど、本拠地へ戻るときに、
「帰るか――友のおらぬ天のもとへ」
のようなモノローグがあったと思うんですよね。
あと、荀彧に似た隠者を訪ねて「友に似ていたものでな」みたいなこと言ってて、「うわぁやばい、曹操のなかで荀彧って友といえる大切な存在だったんだ…!」て思いました。それからというもの荀彧が一層好きになりましたね。殿に振り回されて必死で兵站整えて、品行方正で。素敵な人物です。アニメで「あいやー!」が早く聞きたいです。
呂布の再来か――馬超
これまたかっこいいんですよね。ビジュアル的にも。口数も少なく表情もあまりないし、蜀に行きつく前はいろんな意味で若いんですが、なんか魅力を感じるんですよね。
その強さ。潼関で曹操を追い詰めて、許チョと渡り合うところとか。馬超と木の棒で手合わせして、棒が木っ端微塵に砕けるところとか。境遇が境遇だけに、馬超はどの作品でもどこか寂しさだったり孤独感だったりを感じるんですが、張飛との撃ち合いを通して感情を取り戻したような馬超を見るとなんか安心しましたw
定軍山の夏侯淵
夏侯淵が、無双からは想像もできないくらいダンディ!!かっこよすぎです。物語後半になるまであまり目立たないんですが、ここだけで完全に盛り返してますね。死に様は壮絶です。
劉備
なんとも人間臭い劉備です。史実の劉備は、演義の聖人君子的な性格よりもむしろ劉邦のような人物だったらしいですから、案外こういう劉備の方が実像に近かったりするかもしれませんが…キャラクターとしてはいまいち好きになれませんねw
純粋軍師・郭嘉
根っからの戦好き。頭を使う方の。
実際、荀彧なんかはどちらかというと内政とか、兵站の確保とかのほうに手腕を発揮しているのに対して、郭嘉は本当に戦に頭を使ってましたからね。そういう意味でも、純粋軍師といえると思います。
あと、曹操にも物おじせずズバズバものをいうのは、夏侯惇を除いてはこの人くらいだったんじゃないかと。もっと長生きしていたら、荀彧とはまたちがった曹操の「友」になっていたかも。
呂蒙と陸遜
終盤の呉軍を率いる中心的な人物となる二人。呂蒙は可愛いキャラクターですよね。一見頼りなさそうだけど実は一生懸命努力して軍略磨いて立派な将になってるんだけどやっぱり陸遜にいいとこ持って行かれちゃうw
「自分は億の単位で周瑜殿に届きません」
みたいなセリフで涙をこぼすシーンあったと思うんですけど、ここでも周瑜の偉大さと、彼を尊敬する呂蒙が感じられて周瑜ファンには嬉しいセリフでありました。
陸遜はまたイケメンというか、美男子というか…エリートですねww呂蒙との掛け合いが面白くて好きですw
あとは、
曹植の恋だったり、赤壁で腹壊して死にそうな曹操や、荀彧を元気づけようと自分の作った酒や料理を出す曹操、「兵卒の夏侯惇です」、孫権と曹操の「親子」関係、劉璋のもとへ赴いた簡雍、岩に吹っ飛ばされる夢を見た諸葛亮、
等々、心に残るエピソードは数多くあります。
さて、こんな感じで「蒼天航路」について語ってきましたが、これでますます演義から遠ざかってしまいました。
いつかは吉川三国志も読みたいと思っているんですが、好きな人物が損な役回りになってたりすることも多いと思って、なかなか手が出ません。でも一般的に知られている三国志がどういうものかも見てみたいし…(ある程度の知識はあるんですけどね)。一番困るのは、周瑜ですw いろいろ諸葛亮の手の内で転がされてる周瑜を見るのはイヤww あと、孫策が于吉に呪われるのもヤダwww
さて、この「蒼天航路」を含めての4作品をもちまして、「私の三国志歴」と題した作品紹介は最後になるのですが・・・。
次回、一応まとめとして、史実的な視点から見た人物についての思いを語りたいと思います。
あとその他に触れた三国志作品について少ないですが紹介したいと思います。基本漫画ですw
ではまた、よろしければお付き合いください。 ノシ