石畳をのぼり続ける。見上げても、その終わりは見えない。
振り返ると、谷を隔てて早朝に下ったばかりの峠道が望める。
2時間はのぼり続けただろうか。ウーレリ・・まだ標高2073メートル。
 石畳の途中、マガール族の子供たち。
「ウーレリはここか?」僕は聞いた。子供たちは上を指差す。
お礼に粉っぽいミルクチョコレートを一片づつ手渡した。
 つづいてサドゥが手をだす。いつからここにいたのだろう。
      最後のかけらを彼に渡した。
           「道は上だ。」サドゥは指差す。
 道は一つしかない。甘い風が吹く。
 村を過ぎ、尾根を回って、石楠花の森を駆ける。
                    湿った森。
  足の関節がきしむ。走るのを止めればもっと痛むだろう。
 雹が降り始めた。気分はいい。氷に打たれ、木々の葉が鳴る。
  足を止めた。世界が止まる。暗く透明な水。
             森の中に一箇所、湧き水の溜まる場所。
                 枯れ木が水の中に倒れこんでいる。静かな場所。
夕闇が近づいている。空間がぶれる。そんな気がする。
 サドゥがいる。「何がほしい。」僕は眼を覗き込まれた。
        「ここで眠るか?」彼が言う。
僕はザックから強引にレインポンチョを引っ張り出す。
 雹が降り続いている。
         走りながら、それを被った。
                  癒される感覚。
 ほどなく森の道は闇に溶け込むだろう。