エコロジカルアプローチというのをみなさんはご存知だろうか。
この本の中では、今まで私たちが大事にしてきた反復練習を伝統的な運動学習理論と呼んでいる。
フットボリスタの記事でも下記のように説明されている
伝統的な運動学習理論は、人をコンピューター(脳)+ 機械(身体)のような存在だと見積もります。その上でトレーニングを通じて脳内に運動プログラムが記憶・蓄積されていくことが人の運動学習だとして、学習はトレーニング時間に比例して進むものだと主張します。10練習したら10学習する、という主張です。
一方、1980年代頃から人の運動学習はそのような「線形的な」プロセスではないとする趣旨の報告が相次ぎます。運動学習の進み方を線にして描くと、右肩上がりに直線的に学習していくのではなく、急激に学習が進む過程があり、停滞する過程もあり、落ち込む過程もあるという「非線形的な」プロセスであることが明らかになってきたのです。
ではエコロジカルアプローチとはなんなのかというと、一言で言うと繰り返しの動作をしない。
本書では繰り返しのない繰り返しと言っている。
そしてエコロジカルアプローチの事を制約主導アプローチとよんでいる。
つまり、何かを制約していく事によって運動学習者が勝手に適応するのを待つのだ。
例えばカーブを打ちたいバッターがいたとしよう。
従来であればカーブを何球も投げてもらって感覚を養っていく。
これが伝統的アプローチだ。
しかし、エコロジカルアプローチは試合ではカーブがどのタイミングでくるかどうかわからないのだから、いつカーブがくるかわからないようにしなくてはならないと言うことだ。
また、例えばテニスでは小さいジュニアの選手(7歳くらい)がフォアハンドが得意なあまりバックハンドを全然打たないとしよう。
このあまりにも偏った技術傾向を改善する為に、従来の伝統的アプローチではフォームの改善やバックハンドを打つようにコーチングするのだ。
しかし、そういった指導をした研究では全然改善されなかったそうだ。
では制約主導アプローチではどうするのかと言うと
この図1-3のようにセンターラインをずらし
①バックハンド側のエリアを広くする
②対角線のエリアに返したらボーナスポイントを与える
という2つの制約を設けたのだ。
このトレーニングによって最初の伝統的アプローチでは改善されなかったバックハンドの比率が1対1に改善されたそうだ。
このような制約主導アプローチによって習得した技術は一般的にはハイパフォーマンスに繋がりやすいというメリットがあるそうだ。
なぜならば動作フォームを学習者自身で探索できるからで、試合形式(ドリルではなく、より実践向き)の中で学習できるからだ。
この本の中では、ブラジルのストリートサッカーこそが最高のエコロジカルアプローチだと書いている。
試合形式の中でも相手の大きさ(大人もいる)やボールの質(靴下を丸めたものまである)、ゴールの大きさや形(木と木の間や空き缶をおいただけ)など
毎回すべて違うからである。
要するに何が起こるかわからない状態でサッカーをする事によって臨機応変な対応を体が自然に身につけていくというのだ。
日本ではまだまだ伝統的アプローチが主体なところも数多くあるが、練習の上手い日本人。試合の上手いブラジル人といったところなのは、やはりストリートサッカーが大事なのは言うまでもないだろう。
ちなみに、ブラジルでは最近郊外の選手しかプロが出てこないと言われてるみたいだ。
あのマフレズやサラーもストリートサッカー出身で、プジョルでさえも大きくなるまでチームには入ってなかったそうだ。
こう聞くと、教えるというのはなんなのかという疑問が出てきてしまう。
日本はグラウンドの数も少なく、公園ではボール禁止が多い。
強豪国のようなシステムにしようにも、ハードの面で全然追いつかないのだ。
是非日本のサッカー協会がそれぞれの空き地や空いている工場を人工的なストリートサッカー場のようにしてみてほしい。
それが実は1番面白い選手が出てくるような気がするのだ。