真アゲハ ~第101話 アズーロ・セルリアン2~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



翌日、名古屋港水族館はまだ臨時休業だったが、そこにはたくさんの人々が集まっていた
『アクアリウム』のメンバーだ

ナルミ「……皆、急とはいえ、集まってくれてありがとう」

今日はトールをノルウェーに帰す前に、簡易的な葬式を行う
全員でノルウェーにまでは行けないため、仕方ない

ナルミ「…これが終わった後で、私はルーカスを連れてノルウェーへ行ってくる。奥さんのマチルダには、もう話は通してある」

コバルト「奥さん?寝ていたんじゃ……?」

ハルナ「先日、眼を覚ましました。トールはそれを知って、帰国を考えていたそうです」

エドワルド「帰国前に、殺されたと言うのか…」

ルーカス「ふ、ふぇぇ…!」

ルーカスが泣きそうになる
滅多に泣かないルーカスも、父親がいなくなった時は悲しくなる

ナルミ「…トールは、ルーカスと共にここに来て、子育てを行いながらもネクロハンターの仕事をこなしていた。お世話になった者もいるだろう、しっかり…顔を見てやってくれ」

千晴「……は、はい……」

その中に千晴の姿もあった
結局炎と彩耶華は狙われていると言う事もあり、訪れることは無かった
千晴は今回、2人の分までトールに想いを伝えようと思ったのだ

行われたのは、名古屋港水族館の入り口前だ
そこに、棺の中に安らかに眠るトールの姿があった
まずナルミが、トールに話しかける

ナルミ「……トール、今まで本当にありがとう…。お疲れ様…」

ルーカス「ふえぇ…!ふえぇ…!」

ルーカスはトールを見て手を伸ばす
抱いてほしいと伝えているのだろうが、トールにそれは届かない

ナルミ「…トール、君とは子供の話が出来て、嬉しかったよ。私の子供はもういないけど、父親として、君には見習うところがあった。君とまた、最後に子供の話をしたかった…!」

ルーカス「ふええぇぇ~~、あぁぁ~~~っ…!」

ルーカスの眼からも涙が流れる
ナルミは必死にあやすが、ルーカスは泣き止まない
やはり父親でないと、ダメなのだろう

エドワルド「…トール…貴方は子連れではありましたが、よく頑張って戦い続けましたね。立派でしたよ…」

次にエドワルドが話しかける
冷静ではあるが、エドワルドの眼からも涙が溢れそうだ

エドワルド「貴方を殺したネクロを、私が必ず裁きを下します。だから、今は安らかに眠ってください…!」

ハルナ「……お疲れ様でした、トール。寂しいですよ。あんなに愛らしい姿を、もう見れなくなるなんて…」

ハルナからの挨拶も終わり、他のネクロハンター達も駆け寄る
特にナイルは、トールと共に行動してきた人物で、トールが亡くなったことに人一倍泣いていた

ナイル「トール…!君が死んだら、私はまた迷ってしまうじゃないか…!誰が、紐を引っ張ってくれるんだよ…!私はまた…!うぅっ…!あああぁぁ〜…っ!」

話している途中で泣き出してしまう
よく迷子になりそうになり、トールに止められた
それがもう出来なくなると思うと、寂しくて仕方ない

サミュエル「俺さ……トールの親バカには正直、耳にタコが出来るほど、うるさいって、しつこいって思ってたよ…!けど、もう聞けないって思うと…、なんでこんな、こんなになんで、聞きたいって思うんだろうね…!?ねぇ、トール…!起きてまた、ルーカスの話を聞かせてくれよ…!写真とか、いっぱい見せてくれよぉぉ…!」

ニコール「…本当、息子の自慢話ばかりで、幸せそうでいつも、“いいな”って思ってた…!微笑ましいなって、思ってたよ…っ…!奥さんが、目を覚ましたって…!ねぇ、なんで…?なんで起きないのよぉ…っ!」

サミュエルとニコールは、普段トールに言えなかった事を口にしている
その分、涙の量が違った
それほど、トールを大切に思っていたのだ

神戸「ちくしょう…!こんな良い人が、先に逝っちまうなんて…!絶対に、絶対に俺が仇を取るからなぁ…!」

オクトパス『涙は出ないが…トール、私はすごく悲しいよ。ゆっくり、休んでくれ…』

マサキ「ひっぐ…トールさん…ッ!」

小浜「…いつも、仲間が負傷すれば見舞いによく駆けつけてくれたな。笑って癒してくれて…。もう、見られないなんて、悲しいなぁ…っ」

神戸やオクトパス、マサキ、小浜も挨拶に出る

鮮斗「…すみません、遅くなりました」

入口の方から、休業していた那取鮮斗が現れた
喪服を来て、進んでいく

ナルミ「鮮斗…っ、来てくれたんだね、ありがとう…っ」

鮮斗「“サーディン”から連絡を受けて、ゆっくりしてられないと思いました…っ」

鮮斗は数ヶ月前に大怪我を負ったが、ようやく完治に近い状態にまで回復した
トールが眠っている棺に、顔を覗かせる

鮮斗「…僕がずっと、休んでいる間にこんな事になっていたなんて…。本当にごめんなさい…!」

休んでいた間にこんな事になっていたなんて思ってもいなかった
トールと最後に話も出来ず、悔やんで泣き出す

コバルト「…トール…ッ」

ネクロハンターの最後はコバルトだ
コバルトは棺の前に立ち、眠っているトールに言葉をかけようとする
ところが、いつまで経っても何も言わない

コバルト「…うっ…ひっぐっ……!」

いや、言えなかった
言いたいことがあったのに、ボロボロと涙が滝のように流れて、トールの冷たい身体にかかる

コバルト「……すみません…!言えない、です…っ!」

ナルミ「…か、構わない、よ…っ!」

ルーカス「ふぎゃぁぁぁぁあ〜〜〜っ!」

コバルトの涙を見て、引っ込みかけた涙がまたぶり返してしまった
どんな呼びかけをしても、どんなに泣いてもトールは起きてくれない
ネクロハンターが終わると、残りは“サーディン”が挨拶を行う

漆島「…トールさん…うぅっ…!」

“サーディン”のリーダー格である漆島は、口元を抑えて、涙を流す。それ以上の言葉は発しない

トールを殺した張本人は、それだけで十分だった

漆島(ふっ…ふふふっ…!誰も気づいていない。俺が殺したと言うのに、部外者がやったと思ってる。本当に馬鹿な連中だよ…!)

口元を隠しているのは、口角が上がって笑っているのを見られたく無いため
涙も演技で出来たものだ
棺から離れると、両手で顔を覆い隠しながら離れる

千晴「…トールさん、ありがとうございました」

続く千晴は、トールに優しく話しかける

千晴「…トールさんの存在が、皆を明るくしてくれました。感謝します。絶対に、貴方を殺した奴を、とっ捕まえてみせますから…!だから、だから待っててください…っ!」