真アゲハ ~第75話 シーライオン6~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



オクトパス『…エドワルドが早速向かったのか?』

名古屋港水族館
閉館となった水族館内部で、『アクアリウム』の“館長”ナルミと秘書のハルナ、そしてオクトパスが話していた

ナルミ「あぁ、はりきっていたよ。“また”日本でネクロを殺せる機会が出来たってね」

ハルナ「滞在中の皆さん、そして福島の神戸くん…“ロブスター”には到着したことをお伝えしました。皆さん驚いていましたよ」

オクトパス『それは驚くだろう。何せエドワルドは実力的に、“シャーク”に次ぐネクロハンターだからな』

ナルミ「オクトパス、今は炎とコバルトが次いでるよ?」

オクトパス『…失礼した』

ナルミ「本人の前でそれは言わないように。と言っても、炎は謹慎中だから、コバルトが“シャーク”に次いでるけどね」

ハルナ「ところで…渡しておいて良かったのですか?カプセルを…」

ハルナが言っているのは、炎と彩耶華が謹慎処分を受けて返したネクロの灰だ
それをエドワルドに渡したのだ

ナルミ「あぁ、構わないよ。使わないのはもったいないし、ちょうどエドも使いたいって希望してくれたからね」

オクトパス『先日ドイツのネクロを1人倒したと言って、新たなカプセルを回収した。そのアビリティは、とてつもない力を持っている』

ナルミ「恐らく使うだろうね。さて…そろそろ到着した頃かな?」

ハルナ「もう1度聞かせていただいても?“館長”のそのお言葉、大好きなんです」

ナルミ「いいよ?…“ショーの開演だよ、シーライオン”」





多部「イマノ、ナンダ…?」

多部の大きな拳を喰らったと言うのに、受け止めたエドワルドの腕はものすごく硬かった
コンクリートでも、鉄でもない硬さだ
しかも平気なところを見る限り、骨折もしていない

エドワルド「私の腕、気になりますか?」

多部「?」

エドワルド「ここに来る前に、“射ち込んでおいて”正解でしたよ」

そう言い、エドワルドは装着していた革製の手袋を外し、袖を捲った
その下から出てきたのは、なんとダイヤモンドで出来た腕だった

多部「ナッ…!?」

エドワルド「これは“宝石(jewel)”、先日私の母国ドイツで見つけたネクロのアビリティなんです。攻撃力も高い上に、防御力は石や鉄を超えて1位。倒すのには苦労しましたよ」

そう言った途端、エドワルドの腕のダイヤモンドが消えた
元の腕に戻った

多部「モドッタ…?」

エドワルド「おや、時間切れですか」

ネクロハンターの話は聞いてはいたが、今のエドワルドの様子を見て、多部は違和感を感じた
今の腕は間違いなくネクロのアビリティそのものだった
ネクロハンターはネクロの灰を回収することでアビリティを使うことが出来るが、今のは違う
見たところ使用したアイテムもないし、エドワルドの話からして、エドワルドは人間だと思える

だとしたら、色々矛盾がある
人間のハズのエドワルドの腕が、どうしてネクロのアビリティを使うことが出来たのか?

エドワルド「一体どうやって?の顔ですね」

多部「!」

多部の顔に書かれていたのか、すぐに読むことが出来た
感付かれた多部は再び逆上し、エドワルドに拳を向ける

多部「コイツゥ!」

エドワルド「おっと」

だがエドワルドは軽々しく拳を避ける
諦めずに多部は両手の拳で攻撃するが、それでも避けられてしまう
その時

…ドスッ!

多部「!ギャアァァッ!」

多部の右腕に激痛が走った
見てみると、右腕にサバイバルナイフが刺さっていたのだ

エドワルド「あまりにも遅いので、刺してしまいました」

多部「グギギギ…!フンッ!」

サバイバルナイフを抜き、エドワルドに返すような形で投げ付ける
エドワルドは投げられてきたナイフを綺麗に受け取り、持ち直す
だがその隙に多部が距離を詰めてきた

多部「フキトベェェエッ!」

エドワルド「おっと」

多部が拳を大きく振り上げた直後、エドワルドは下に潜り、多部のみぞおちにサバイバルナイフを入れた

エドワルド「ナイフをお返ししてくださり、ありがとうございます」

ドスッ!と激痛が全身に走り、ゴフッ!と多部は吐血をした

多部「ナ、ナンデェ…!」

エドワルド「抜くと一気に血が流れますよ」

多部「!」

みぞおちは人間の急所だ
いくらネクロでも、ナイフを抜いたら出血死してしまう
戸惑っている間に、エドワルドはスーツの内側に手を入れる
そこにはサスペンダー型のガンホルダーが装着されていたが、ガンホルダーに引っ掻けてあったのは、タダの銃ではなかった

それは、先端が注射器の様な形をした銃だった
注射器の中には、ネクロの灰が入ったカプセルが埋め込まれていた

エドワルド「貴方にタネ明かしを見せてあげましょう」