真アゲハ ~第71話 星浦 綺堂5~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



ネクロ研究センターの加治木が持っていた資料のおかげで、輝人は死因から、ネクロのアビリティを予想した
そのアビリティとは…

輝人「…“天気(ウェザー)”だ」

瑠美「ウェザー?…天気のこと?」

輝人「あぁ、それなら納得が行く。もし天気を自在に操るアビリティなら、これまで殺された人間の死因がすべて照らし合わせると…」

矢田「溺死が雨、感電死が雷、凍結されたのは雪か吹雪、焼死体は太陽、つまりは晴れ…本当ですね」

瑠美「木に刺さったって言うのは?」

輝人「恐らく風だ、それも台風とかで身体が浮いて、それで刺さったのかもしれない」

瑠美「じゃあこの中国で起きた事件の犯人は…」

輝人「複数犯だと思ったが、実際は1人だ。天気のアビリティを持ったネクロの犯行だ」

矢田「これまで雷だけのアビリティや、氷だけのアビリティを見たことがありましたが…まさかよくばりセットとは」

瑠美「よくばりセットって例えが合ってるか分からないけど…放ってはおけないね。天気は自然現象の中で最も危険だからね。表情を変えるだけで、人を死に追いやる事も出来ちゃうから…。すぐに誰が持っているのか調べた方が良いかも」

輝人の推理が正しければ、放っておくのはまずい
加治木はオレンジジュースを飲み干し、調べ出す

矢田「私もお手伝いします」

瑠美「あ、ありがとう」

輝人「…あ!待ってくれ!」

突然輝人が2人を止める

瑠美「?どうしたの?」

輝人「…加治木、悪いがその…。矢田の手を触って欲しい」

瑠美「へ?」

矢田「ど、どうしたんですか?」

輝人「いいから、触ってくれ」

輝人がこう言うのは理由があった
矢田が実はクロノスではないかと考えたからだ
もしそうだとしたら、加治木だけじゃなく、ネクロ研究センターの人達全員が危ない
あの骨喰を連れて逃げたと言うことは、只者ではない
クロノス自身が、ネクロだと言う場合も危うい

輝人(このネクロ研究センターで、ネクロの研究員はいないハズだ。俺が触ってもいいが、手袋の上からじゃ分からないし、素手で触っても燃やしてしまう。ここは加治木で試すしか…)

瑠美「ねぇ、斑目くん。これでいい?」

輝人に言われるがまま、加治木は矢田の手に触れる

輝人「…どうだ?冷たいか?」

瑠美「え?冷たいも何も、温かいよ?」

輝人「…え?」

矢田「あの…なんですか?」

輝人「体温…だよな?」

瑠美「体温だよ?…あ!まさか矢田さんがネクロだと思ってるの?」

輝人「!」

瑠美「失礼だよ、矢田さんはネクロじゃないよ。丁度1週間前に健康診断やったけど、矢田さんの体温36℃あったんだよ!」

輝人「そ、そうか…?す、すいません…っ」

矢田「いいえ、疑いが晴れたみたいで良かったです…!」

矢田がクロノスかと思ったが、違った
瑠美の弁解もあって、誤解が解けた
しかし加治木を怒らせてしまったこともあって、輝人は研究センターから出ていく

輝人「うーん、あの人でも無かったか。となるとまた別の誰かとなるな…」





彩耶華「…え?ネクロ?」

その頃、彩耶華は花巻女子学園の人気がない場所で電話をしていた
相手はコバルトだ

コバルト『うん。昨日、成田空港で3人が死亡する事件が起きたんだよ。今動画送ったから』

そう言うと彩耶華のスマホに1つの動画が届く
その動画はニュースの動画だが、公表されたものが、事件が起きた直後を撮影された動画だった

急な強風から、3人の男女が巻き込まれ、強風が止むと3人は落ちて死亡してしまった
間違いなくネクロの仕業だ

彩耶華「一体誰が…?」

コバルト『オクトパスが動画をより詳しく検索してみたところ、1人だけ不審な人物を見つけたんだ』

彩耶華「どなたですの?」

コバルト『動画の左側、黒い帽子を被っている人物いるでしょ?こんな強風が起きてるのに、帽子は全く飛ばされないし、3人が浮いているのに知らん顔、普通は気になるハズだしね』

彩耶華「確かに…まさかこの人物がネクロですの?」

コバルト『可能性は大だよ。オクトパスが細かく検索したら、名前が出てきたよ。星浦綺堂って名前で、普段は漫画家として活躍してるんだって。どーする?今日なんかショッピングモールの本屋前で、イベントあるみたいだけど…行ってみる?“館長”には了解得てるよ』

彩耶華「…仕事が随分お早いですこと。もちろん向かいますわ」