栗栖「…スー…」
名古屋市総合病院の手術室前
栗栖は麻酔薬で眠らされ、運ばれていた
有馬「準備をお願いいたします」
看護師「はい」
弘泰「有馬くん、頼んだよ」
有馬「はい、院長」
手術室に栗栖が運ばれることを確認すると、有馬は準備を行う
手術用の服に着替え、手袋を着用する
有馬(…フフッ、かつて名外科医と言われた栗栖先生。その先生の身体を、この私が美しく手術出来るなんて楽しみですね)
看護師「先生、準備が終わりました」
有馬「はい、先に行っててください。すぐ行きます」
看護師は準備室から出ていく
有馬も服装を確認して、準備室を出ようとした
その時、ガチャリ!と強く扉が開いた
有馬「…!おや?」
橋川「…有馬先生」
そこに入ってきたのは、橋川だった
突然彼が入ってきた事に半分驚く
有馬「橋川くん、どうしたんですか?今日は手術の担当では無かったハズですよね?」
橋川「有馬先生…手術を止めてもらって良いですか?これ以上、栗栖先生を苦しめないでください…!」
昨日とは違い、有馬をキッ!と睨み付ける
有馬「苦しめる?何を仰ってるんですか?私はこれから栗栖先生を手術するんですよ?あぁ、身体を切られるのは苦しいとかそういう…」
橋川「違う…先生は、先生は治す医者では無いですよね?」
有馬「…?」
橋川「昨日の電話、聞きました。貴方は、病を処方する医者…ですよね?」
怒りで震えながら橋川は質問する
有馬は少し反応するが、しらばっくれる
有馬「病を処方?一体何を…」
橋川「昨日誰かと電話をしているところを聞きました。嘘だと思いたかったです。でも…!もしかしてと思って、これまでの先生のカルテを確認したんです…!」
有馬「!…ほぅ」
橋川「そしたら奇妙な事に気付きました。1ヶ月前は何ともなく健康だったり、ただ健康診断や予防接種を受けに来た患者が、重い病気を患って病院に帰ってきて…!そのほとんどが有馬先生が担当した患者ばかり…!今回の里中さんの娘さんのりかちゃんや、栗栖先生だって、先月は何とも無かったのにあんな病気を患うなんて…!」
有馬「…止してくださいよ。ただの偶然ではありませんか」
橋川「僕だって…偶然であって欲しかったですよ…!でも、栗栖先生が、女性にしかかからないアンメディック病になるなんてあり得ないと思って…!」
有馬「…!」
橋川「…先生の論文や症例も確認しました…!でも、全て日本で起きて、全て先生が担当しているのはおかしいです…!貴方は、医者じゃ無いですよ…!そんな人に、栗栖先生の手術なんて…!」
出来ることなら、有馬を信じたかった
だが調べていくうちに有馬が電話で話していた事が、事実だと知った
病を処方しては手術を繰り返す、そんなマッドドクターに栗栖を担当してほしくない
有馬「…フッ」
ガバッ!
橋川「!?」
その時有馬の手が橋川に飛びかかる
橋川の左腕を後ろに回し、背後にまわって引っ張り、準備室のロッカーに押さえつけた
橋川「うぐっ…!?」
有馬「…驚きました。若い看護師だと甘く見ていましたが、随分勉強熱心ですね。医者になれますよ?」
橋川「な、にを…!?」
有馬「おっと、騒ぐと死にますよ?病を処方するって、とっても簡単なんですよ」
橋川「っ…!」
橋川の耳元で有馬が話す
それに橋川はゾクッと恐怖を感じ、呼吸が粗くなる
有馬「私の美しい手、冷たいでしょ?まるで死人の手を触っているみたいで…。この触っている瞬間にも、貴方は私から病をもらってるんですよ?」
橋川「ひっ…!」
振り払おうと力を入れるが、背後にまわれているせいで、力が入らない
逆に腕にギュッ…!と有馬の力が入る
氷みたいに冷たい
有馬「病を処方すると言っても、どんな病になるのか私にも分からないんですよ。癌なのか、心臓病か、アンメディック病か、かつて君がなってしまった白血病にまたなるのか…私にも分かりません」
橋川「…!」
学生時代白血病になった恐怖が蘇る
栗栖に治してもらったが、また白血病になるのか、それともそれ以上の病気になるのか、もう絶体絶命だった
バンッ!
輝人「おい!」
有馬「…おや」
準備室の扉が再び開いた
真相を知った輝人達が駆けつけたのだ
炎はすぐ、中国剣を引き抜く
橋川「ま、斑目さん…!」
輝人「その手…放せ。自慢の顔をケロイドにされたくなければ」