真アゲハ ~第70話 有馬 隆之4~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



栗栖「…明日、ですか?」

有馬「えぇ、明日の午後15時から手術を行います」

栗栖と2人きりになった有馬は、手術の日程を伝えていた

有馬「ご安心を、美しい私が貴方の病気を治してみせます」

栗栖「…」

有馬「…おや?」

治せると自信満々に言う有馬とは別に、栗栖は浮かない顔だった

有馬「どうか…なさいました?」

栗栖「いや…。今まで治してきた側でしたので、手術を受ける側って、こんな気持ちなんだなと思って…少し不安ですね」

これまで患者を治してきた側だった栗栖
手術を受けるのは初めてだ
その事もあってか、珍しく緊張と不安が高まる

有馬「なるほど、不安ですよね。…私も1度だけ、手術を受けたことがあるので、気持ちは分かります」

栗栖「…!そうなんですか?」

有馬「えぇ、突然起こった病気だったんです。ですが、その時のドクターに救われて、こうして今も生きているんです。治った時は、すごく感謝しました」

栗栖「…私も知っている方ですかね?」

有馬「仙谷清成と言う先生でした」

栗栖「そうなんですね。仙谷清成…後で輝人に聞いてみますね。何のご病気だったんですか?」

有馬「脳出血です」

栗栖「…え?」

有馬から病名を聞いて、栗栖は眼を大きく開く
脳出血は脳の血管が破れて、血液が溢れ出す病気だ
治せない訳ではないが、脳細胞は再生しないため、治癒後はどうしても麻痺が残り、リハビリで改善する必要がある
だが有馬の様子を見る限り、動きに支障はない

有馬「幹細胞も移植され、必死でリハビリに専念して、今は指先もご覧の通り、使えるようになりました。その事もあって、私は医者を目指したいと思ったんです」

栗栖「そう…だったんですね。先生にそんな過去が…」

有馬の意外な過去を知り、少し話したこともあって、手術の緊張も解れた
ある程度話が終わると、有馬は病室から出ていく
それと同時に輝人だけが、病室に戻る

輝人「あ、どうも」

有馬「どうも、お話終わりましたよ」

輝人「ありがとうございます。あの…栗栖を、お願いいたします」

有馬「…えぇ」

ニコッと微笑んで答え、有馬はその場を去る
輝人は栗栖がいる病室へと入る

有馬(…栗栖先生、心配なさらないでください。アンメディック病は私が治しますよ。だって…私が“処方した”んですからね)

それから数時間後
輝人達が病院から帰る時には、夜になりかけていた
徐々に辺りが暗くなり始めている

日奈子「じゃあね輝人」

カンナ「また明日ですね」

輝人「あぁ、お前らも帰れよ」

始「お疲れ様でしたー」

一旦解散し、明日の手術を待つことにする
輝人はツバサ達と帰る

薫子「栗栖くんの手術は明日の15時ね。思ったより早くて助かりましたね」

東郷「あぁ、有馬先生も良い人そうじゃないか」

輝人「栗栖から聞いたけど、昔脳出血で倒れて、医者に助かったことがあったから医者になったとか」

ツバサ「…ねぇ輝人、ちょっとあんたと話があるんだけどいい?」

輝人「え?」

すると突然ツバサが話しかけた
重要な話と言うことで、東郷と薫子、炎は先に神社へと帰す
ツバサと2人きりになると、話し出した

輝人「なんだよ、話って」

ツバサ「確かあんた、先月も総合病院で依頼を受けたのよね?“患者殺しの医者”を見つけて欲しいって」

輝人「え?あぁ、そうだけど?」

ツバサ「その時の犯人って、逮捕されたのよね?」

輝人「そうだけど…突然どうしたんだ?」

ツバサが珍しく真剣な顔つきになる
何か気になることがあるみたいだ

ツバサ「ちょっと気になることがあってね」

輝人「気になること?」

ツバサ「1ヶ月前は何とも無かったのに、突然病気になるなんて奇妙だと思ったの。特に栗栖がそうよ」

輝人「それは…そうだけど」

1ヵ月前の“患者殺しの医者”の事件は解決した
だがツバサが気になったのは、栗栖の容態の事だ
1ヵ月前は何とも無かったのに、突然アンメディック病を発症したのは理解出来ない
偶然にしたって、発症が早すぎる

ツバサ「…ねぇ、1ヶ月前の資料があるなら見せてくれるかしら?ちょっと調べましょう」

輝人「え?なんで急に…」

ツバサ「栗栖のためよ」

輝人「!…分かったよ」