真アゲハ ~第63話 乙葉 来海2~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



日奈子「…輝人!ちょっと良い!?」

放課後、日奈子は斑目探偵事務所に現れる
そこには急遽駆けつけた始達はもちろん、依頼人の乃亜もいた

乃亜「どうも」

日奈子「え?あ、貴方は…」

栗栖「徳川笑太郎が依頼した時に、探して欲しいって言ってた人だよ。藤咲乃亜、覚えている?」

日奈子「あっ…!あの時の…!」

日奈子にとって、乃亜と出会うのは初めましてだが、知らない訳じゃない
以前徳川から乃亜の捜索依頼を受けた時、写真を見た事があった

輝人「…まさかあんたと再会するとはな」

乃亜「基本的貴方以外は初めましてね。藤咲乃亜、元々“CASINO Shachihoko”で“DJスパイス”として活動して、同時に徳川笑太郎の秘書を務めていたわ」

栗栖「…!」

茜「随分…あっさりと白状しましたね」

乃亜「そうは言ってられない事態が起きたからね。徳川様お墨付きの貴方達に、依頼をしたいと思って」

カンナ「依頼って…なんですか?」

乃亜「妹を探して欲しいの、今朝から行方不明でね」

輝人達に警戒された中で、乃亜は依頼内容を話す
輝人と栗栖は先に聞いてはいたが、後から緊急招集を受けた始達のために、乃亜は改めて話し出す

乃亜「妹の名前は、藤咲らんる」

日奈子「え?ら、らんるって…!」

乃亜「貴方はご存知でしょ?妹がいつも迷惑かけちゃってるわね」

日奈子「姉妹…だったんですね」

乃亜「らんるも同じカジノで、歌姫として活躍していたわ。今は…学校に通えない状態にまでなってしまったけど。おまけに今朝部屋を見たら行方不明だったわ。靴も無かったから、多分外に出て拐われたのか…」

始「なんか…妹が大変な目に遭っているかもしれないってのに、妙に冷静ですね」

乃亜の様子を見て、始は気になったのだろう
血を分けた姉妹が何かの事件に巻き込まれているかもしれないと言うのに、乃亜の冷静過ぎる態度が気にくわないみたいだ

始「俺だったら、大切な妹が拐われたりでもしたら、普通は血眼になって探したりしますけど?」

ゆに「お兄ちゃん…っ」

乃亜「貴方は妹思いの良いお兄さんね。私は違うわ、いつまでも甘やかしたりなんてしない。それに世の中の兄弟姉妹が全員、仲が良いなんて考えないことね」

始「は?」

航平「そ、それで…その妹さんを、探して欲しいと?」

乃亜「えぇ、もちろん報酬は払うわ。このために貯金を…」

輝人「待て、金はいらない」

全員「え!?」

輝人の口から意外な台詞が出たことに、その場にいた全員は驚いた
あの輝人が、「金はいらない」と言ったのだ

航平「お、俺の聞き間違いじゃないよね…!?」

始「お金…いらないって言いました!?え!?」

カンナ「輝人さん…何言ってるんですか?」

ゆに「いつもお金しか考えてないのに!?」

茜「これは明日季節外れの台風が来そうですね」

日奈子「栗栖さん、変なもの食べました?」

栗栖「いやいつも通り俺が作ったものだけど…あ、もしかして賞味期限が昨日までのちくわを、もったいないからって炒飯に入れたのが原因だったのかな?」

輝人「ちくわは初めて知ったわ(-_-#」

栗栖「あっづ!Σ((((;゜Д゜)))」

輝人は珍しく栗栖に火を向けた
ギリギリのところだったが、栗栖の前髪が少し燃える
「コホン」と乃亜が軽く咳をし、改めて話を聞いた

乃亜「…いらないとは?前払い分と報酬分は払うのでは無かったんですか?」

輝人「普通はそうだ。だが…それより欲しいものがある」

乃亜「…なんですか?」

輝人「徳川の情報だ」

乃亜「…!」

輝人が望む物、それは徳川の情報だ
徳川は“アルルカン”と名乗り、『REBORN』をばら蒔いていた
どうしても止めたいと言う輝人は、その徳川の情報を聞いて、徳川の居場所を突き止めたいと思った
先日はカジノで働いていたバーテンダーから聞こうとしたが、那取鮮斗の邪魔が入り、聞けなかった

だが今回は違う
幹部より上の秘書の立場の人間だ
徳川の事を知っているかもしれない

輝人「徳川の情報、持ってるんだろ?話してくれるんだったら、妹を探してやる。言っとくが、俺は本気だぞ?」

乃亜「…そうね…。でも悪いけど、私は情報なんて持ってないわ」

輝人「は?」

乃亜「あの人は何も言わずに逃げた。だからどこにいるかも分からないし、答えることも出来ないわ。申し訳ないけど、その報酬は与えられないわね。やっぱりこの依頼は無かったことにするわ」

そう言うと乃亜は立ち上がる
事務所の扉に手を掛け、出ていこうとする

乃亜「…やるつもりかもしれないから先に言っておくけど、私を監禁とか拷問しようとかしても無駄よ?最もそんなことをしたら、警察に訴えるわ」

輝人「訴えられるんだったらだけどな。…まぁ安心しなよ、女相手にそんな事するかよ」

日奈子(私と初めて会った時、アゲハ族の事を知られて監禁しようとしていたような…(・・;)

乃亜「…そう」

乃亜は事務所を出ていく
一気に緊張感が抜ける

カンナ「はぁ…あんな依頼人は初めてでしたね」

航平「美人だけど…高飛車なところあるな」

栗栖「…輝人、いいのか?徳川の居場所を聞き出せるチャンスだったかもしれないのに」

輝人「どっちか分からないし、下手に聞き出せばまたすごい技を喰らいそうだからな」

日奈子「すごい技って?」

輝人「まぁとにかく、今日は受けた依頼をこなそう。まずは桜木さんに…」

輝人は先に依頼を解決しようと日奈子達に話す

しかし、事務所のソファの下に盗聴器が付けられていた事に気付いていない

輝人『……まずは桜木さんに、話を聞くぞ?』

乃亜「…行方不明事件は私も知ってるわ。それにらんるが巻き込まれたとしたら…厄介だけどね」