真アゲハ ~第62話 藤咲 らんる6~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



らんるがいじめられて、早くも1ヶ月が経った
スポーツフェスが終わった後も、いじめは続いた
最初は机に落書きされたり、自分の荷物を隠されたり、水をかけられたりされたが、徐々に服を脱がされて裸にされたり、顔に油性ペンで「バカ」「ブス」と書かれたり、裸の写真を撮られては「チクッたら拡散する」と脅されるなど、エスカレートしていった

らんる『……ただいま』

乃亜『……あ?らんるか』

らんる『……うん』

学校に帰ってきても、家族にいじめに遭っている事なんて話せなかった
両親共に姉の乃亜を気にかけていたからだ
姉は生まれたばかりの頃に一回行方不明になり、帰ってきたが太ももに変なマークをつけられていた
そのマークを消して生活をしていたが、何故か最近酒を飲んだり、タバコを吸ったりと、荒れていた

らんるはその時の姉が、愛海に似ていたような気がして、相談できなかった、怖かった
多忙の両親にも「いじめられている娘」の存在を知られたく無かったと言う遠慮もあって、らんるは1人で溜め込んでしまった

らんる『……行ってきます……』

ある日、らんるはいつも通りの学校に通い出す
だがその日の足は、重りをつけているみたいで、思うように進まなかった
いや、進めなかった

らんる『……うえっ…!』

通学路の途中で、らんるは吐いてしまった
学校に行けばまたいじめられる、今日は何をされるか分からない
その恐怖が襲いかかり、らんるはその場にうずくまってしまった

らんる(行きたくない…!学校に行きたくない…!)

苦しくなり、目尻に涙が溜まる
過呼吸になりだす

らんる『……カヒュ…ッ!ウェッ…!』

『え?どうしたのあの子』
『あんなところにうずくまって…』
『ねぇ、泣いてない?』

近所の人達がらんるの存在に気付く
らんるも近所の人達の声と存在に気付いたが、それをマイナスに捉えてしまった
学校に行けない、うずくまって吐いている、過呼吸の迷惑な女、その言葉ばかりがらんるの頭の中をぐるぐると回り出す

らんる(ヤダッ…!お願い…!誰も見ないで…!もう、イヤァ…ッ!)

放って欲しい、ジロジロ見ないで欲しい、迷惑ばかりかけてごめんなさい、生きててごめんなさい…
その負の感情がらんるの心を殺していく
立ち上がって逃げようとしても、足がガクガクして動けない
もうダメだ……そう思った時だった

笑太郎『……おっとぉ?大丈夫か?ほら吸ってぇ?』

らんる『…!』

そこに当時22歳の徳川笑太郎が現れた
徳川は片手に袋を持っていて、らんるの口に向けようとする

らんる『ヒュッ…!ヒュッ…!?』

突然の事にらんるは混乱するが、徳川は小声で話す

笑太郎『大丈夫だ、ゆっくり吸え。俺様が注目を消すから』

らんる『……?』

笑太郎『すみません、妹なんです!方向音痴な物ですから、迷って泣いちゃったみたいで!俺様が見つけたんで気にしないでください!』

『え?方向音痴?』
『あら~、お兄ちゃん優しいわね』
『なぁんだ、なら良かったわ』

徳川の一言で近所の人達は興味を無くして、離れていく
らんるは突然現れた徳川にまだ混乱はしているが、過呼吸を治そうとする
ゆっくりと吸って、吐いてを繰り返し、ようやく呼吸が落ち着いた
場所を変えて、近くの公園へと移動する

らんる『……あ、ありがとう…ございました……っ』

笑太郎『ほら、見てごらん?』

らんるの前に立ち、徳川は右手を見せる
そこに何もなかったが、徳川が1回拳を軽く作るとバッ!と勢いよくまた掌を見せる
それと同時にペットボトルの水があった

らんる『え…?』

笑太郎『飲めよ、落ち着くから』

らんる『あ……ありがとう、ございます……』

恐る恐る手に取り、ペットボトルの水を飲む
少し飲んでペットボトルを口から離すと、らんるは徳川に話しかける

らんる『あの……どうして私を助けたんですか?』

笑太郎『そんなの質問するなって、泣いていたから助けてあげただけだ』

らんる『……私みたいな奴、助けなくて良いんですよ。むしろ、放っておいてくれれば良かったのに…』

笑太郎『……こんなこと聞いてもいいか悩んだが、やっぱ聞くわ。なんかあったのか?』

らんる『…聞かないでください。関係ないですから…』

笑太郎『関係ないから良いんじゃないか。知らない人だから、吐き出せる事だっていっぱいあるんだぜ?』

らんる『…そう言えば、名前聞いてなかったですね』

笑太郎『徳川笑太郎だ。笑う太郎って書いて、笑太郎。お嬢ちゃんは?』

らんる『藤咲…らんるです』

笑太郎『らんる…か!良い名前だな!』

らんる『そんな…良い名前じゃないです。私なんて…』

らんるが震える
再び恐怖がぶり返しそうだった
それを察したのか、徳川はらんるの目の前で

…パチーンッ!

らんる『わっ!』

目の前で猫だましをした

笑太郎『戻ってきたか?』

らんる『は…はい…っ』

笑太郎『見たところ…制服を着てるな。学校は休むのか?』

らんる『え…が、学校は…』

笑太郎『良いじゃないか、休もう!』

らんる『え!?ええぇ…?』

徳川がらんるの手を引っ張る
そのまま公園を出ていく

らんる『あの…!ちょっと…!』

笑太郎『学校に1日行かなくたって、何も困ることなんてねーよ!今日は俺様と遊ぼうぜ!w』

らんる『え!?で、でも連絡…』

笑太郎『風邪で休むって言えばいいだろ!ほら行くぞ!』

らんる『えぇ…!?』

出会ったばかりの徳川の行動にらんるは混乱する
下手すれば徳川の行動は、誘拐と同じくらいの犯罪でもある
知り合ったばかりの男に付いていくなんて、普通なら考え付かない
だがこの時のらんるは違った

らんる(なんて…なんてロマンチックな人なの…!?)

と思ってしまった