真アゲハ ~第54話 ペンギン9~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



輝人「…なるほど、ネクロ暗殺集団『アクアリウム』ねぇ…」

数時間後
残った炎は、斑目探偵事務所に戻り、輝人達に『アクアリウム』について話をした
先程『アクアリウム』を立ち上げた“館長”であるナルミが出てきたので、隠すことなんて出来ないと思ったのだろう

炎「その名前にちなんで、俺らは水族館にいる生き物の名前をコードネームにしている。俺は鯱(オルカ)だ」

ツバサ「なるほど。ネクロハンターが複数人いるのは分かったけど、まさか組織化とはね」

話を聞いた輝人達は驚く
そこには始達もいた

始「つまり言い方を変えれば、ネクロ専門の殺し屋って事だよな?それも年とか、男女関係なく」

ゆに「大介くんにまで手を出したらマジ許さないんですケド!」

炎「別に隠していた訳じゃないが…俺は仕事としてネクロを狩っていただけだ」

輝人「じゃあお前個人では、ネクロに怨みはねぇんだな?」

炎「あぁ、そこを“館長”が見込んで俺をスカウトしたのかもしれない。“龍の一族”を出てから、1人で生きていくために仕事を探していた。その時に、出会ったんだ。最初は稼げるし、鍛練にもなると思っていたから」

輝人「あいつは俺をと言うか…ネクロ自体を嫌っているみたいだった。何かあったとしか思えねぇが…何か知ってるのか?」

炎「いや…基本的に自分の事は話さないみたいだから、そこまでは…」

日奈子「でも…財前さんは輝人に対する感情が違った。炎さん、財前さんの両親って…ネクロに殺されたんですか?」

彩耶華に同じことを聞いたが、完全に拒否されてしまった
もう聞ける様子がない
炎なら何か知ってると思い、質問する

炎「…詳しくは分からないが、事件の資料を読んだ。あれは、間違いなくネクロの所業だ。あいつも言っていたが、両親が火に包まれて死んだと…。だから火を使うアビリティを持つネクロには、相当怨みがあるみたいだ」

輝人「迷惑な話だな」

栗栖「輝人、そうは言ってるが本当にやってないんだよな?」

輝人「おいなんで俺を信じねぇんだよ!(-_-#」

栗栖「あ、いや…もしかしたら知らないところで燃やしてしまったんじゃないかって」

輝人「アホか!その…財前夫妻が死んだのは確かに俺がネクロになった年と被るが、人を殺したなんて事はしてない!あの時は師匠の敵をとるために、必死に“辻斬り”を探していたんだ!むしろ殺したいのはそいつだけだった!」

栗栖「う、うん…妙に説得力あるな…」

茜「となりますと…財前様のご両親を殺したのは他にいる事になりますね」

カンナ「昨日の松房って人も、財前夫妻が亡くなった時期と、ネクロになった時期が被らないから全然違いますね」

輝人「じゃあやっぱ…別の犯人がいるって訳か」

日奈子「早く見つけたいな…財前さんのためにも」

彩耶華に酷い仕打ちをされたとはいえ、最後に見せた涙が頭から離れない
その犯人がまだ逃げている限り、彩耶華を救えないと思ったのだろう
日奈子は犯人を見つけたいと思った

輝人「言っとくが日奈子、お前は妙なことに首を突っ込むなよ?今回は依頼が無かったからいいものの、次勝手な行動したら処分下すからな?」

日奈子「わ、分かってるわよ!」

炎「フン…」

炎は話が終わったと思い、事務所を出ようとする
それにツバサは気付いた

ツバサ「あら、どこ行くの?」

炎「荷物をまとめるんだ。あんたには世話になったが、息子を狙うような連中の1人と一緒に住みたくなんてねぇだろ?今日限りで出ていく」

輝人「お?マジで?俺助かるわ」

栗栖「輝人…」

ツバサ「待ちなさいよ、あんたが気を遣う事なんて無いわ」

炎の発言を聞いて、ツバサが前に出る

ツバサ「あんたの上司を悪く言うつもりは無いけど…ネクロだろうと、自分の息子を貶されて良い訳ないからね。それにあんたは輝人を殺す任務を外されたんでしょ?なら少し安心したわ、輝人を狙うことは無くなったんだからね」

炎「だが、俺の他に…」

ツバサ「炎、あんたは知ってるハズでしょ?輝人がどれだけ強いのか。そのネクロハンター達がどれ程の腕かは知らないけど…輝人は負けやしないわ」

輝人「あぁ、俺を誰だと思ってんだ?オーバーネクロになってでもこうして元に戻れたんだぜ?」

炎「…そうか、なら心配はいらないな。だが忠告はしておく。俺以外のメンバーはネクロに良い思い出なんてない。ネクロを根っから怨むからな?」

輝人「上等だ。その経験、俺がひっくり返してやる」

日奈子(財前さん…っ)





劉「…ふぅ、ご馳走さまでした」

中国 香港
高級ホテルのレストランで、劉は食事を終えた
張の紹介で知り合った人物と、交渉をしていたのだ
劉の周りには、皿の山が広がっている
どれも食べ方がとても綺麗で、種類ごとに皿が分けられていた

?「…本当によく食べるんですね」

張「えぇ、ですが…」

劉「これでもまだ腹3分目だ」

ウェイター(3分目…だと!?Σ((((;゜Д゜))))

張「それではそろそろおいとましましょう、本日はありがとうございました」

?「…こちらこそ」

張が紹介したのは日本人で、黒いつば広の帽子を被り、黒いコートを羽織る
3人はエレベーターに乗り、1階まで降りる

?「…本日はとても楽しかったです」

張「この後は他のホテルへ?」

?「はい、明日の朝イチの便で帰ります」

劉「ならホテルまで送ろう」

張「ほぉ…珍しい」

劉「話を聞いてて気に入った。これからもよろしく頼もう。だが、裏切るような事があれば…」

?「えぇ、もちろんです。あと、お心遣い感謝しますが…少し運動をしたいと思いましてね。歩いて行けない距離では無いので、歩いて行きます」

そう言うと、エレベーターが1階に到着した
するとロビーの方で、ずぶ濡れの人々を見かけた

「突然下雨了…(急に雨が降ったもんなぁ…)」
「最不好的!我最喜歡的裙子!(最悪~!お気に入りのスカートがぁ~!)」
「哎呀!我忘記帶傘了!(しまった!傘を忘れちゃったよ!)」
「顧客請使用這些毛巾(お客様、こちらのタオルをお使いください)」

張「…どうやら雨が降っていますね」

濡れている人々や対応しているスタッフを見て、張は呟く
その通り、外は強い雨が降っていた
既に暗くなっており、雨が降っていたことに気が付かなかった

張「ホテルに入る前は雨が降る様子は無かったんですがね」

劉「お前、この雨の中を歩いていくのか?傘は?」

?「…いいえ、傘よりももっといいものがありますので」

そう言うとその日本人は、どしゃ降りの雨の中に入り込む
同時に、パチンッ!と指を鳴らした

…ピタッ

劉「!」

パチンッ!と鳴ったと同時に、驚く景色が映った
なんと、その日本人を囲む部分だけ、雨が止んだのだ
それ以外は、まだ降り続けている

?「…晚安(おやすみなさい)」

日本人は劉に挨拶をし、そのまま歩き出す
歩き出しても、日本人の頭の上には雨が降らなかった

劉「…なるほど、あれが奴のアビリティか」

張「えぇ、あの力を使って数々の不可解な殺人を犯してきたんですよ」

その能力を見ながら、張はニヤッと微笑む

張「ある者は車の中で溺死、ある者はお風呂場で凍結、ある者は大学で感電死、そしてある者は…いえあるご夫婦はプールの近くで焼死。あれが…











“天気(ウェザー)”の力です」



ーペンギンー







○NEXT●

→輝人の暗殺を担当していた炎と彩耶華は、担当を外され、コバルト1人になってしまった。
 コバルトは輝人を殺すために作戦を考えるが、その途中で、ひょんな事から『CASINO Shachihoko』に務める駿河つよしを発見する。
 つよしも暗殺対象になっていた事を思い出したコバルトは…!?