真アゲハ ~第35話 龍 麟6~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



炎(…どうした?何故震えている…)

自身の部屋へと向かっている途中、炎はここに戻ってきてからの自分を不思議に思っていた
光と昴からある程度の情報を聞いてはいたが、いざ戻ってきてみると、思うように言葉も出ないし身体も動かない
むしろ、震えていて、恐怖を感じている

炎(震えるなんて…もうあの頃の弱い俺はいないんだ…っ!5年も帰ってきてないし、俺だって日々訓練を重ねてきた…!それにあいつらが見たことがない怪物だって何体も倒してきたんだ…!)

龍の一族の人間が知っている龍 炎はいない
忌み子と罵られ、いじめられていた炎はいない
そう心に呼び掛けてはいるものの、震えが止まらない
むしろ冷や汗がドッと流れ出す

日奈子『…大丈夫ですか?』

炎(大丈夫だと…!?そうに決まってる!)

強く心にそう言い、自分の部屋の扉を開ける

炎「…!」

扉を開けた瞬間、炎は目を丸くさせた
なんとそこはかつての自分の部屋の姿は無かった
兄弟達の物置小屋と化していた

炎「これは…」

?「…おぉ~?やっぱり話は本当だったんだなぁ」

炎「!」

炎の背後から声が聞こえた
その声を聞いた瞬間、背筋が凍るようにゾクッとなった
振り返ると、そこには2人の男がいた
1人は2mを越えるほどの大きな身長とがっちりとした体格の男性で、もう1人は舌先が割れている蛇舌が特徴的な腕まである長さの黒い手袋をした男性だ

ー龍の一族 3男 “熊”型の使い手
 龍 大(ロン ダア)(37)ー

ー龍の一族 4男 “蛇”型の使い手
 龍 毒(ロン ドゥ)(35)ー

大「光から帰ってくると聞いてまさかかと思ったが…本当に帰ってくるとはな」

毒「ヘッヘッヘッ、今更何しに帰ってきたんだよ。お前の部屋はもうねぇから」

炎「大…毒…」

大「兄を呼び捨てとはな、家を出て口の聞き方も忘れたのか?」

毒「それはダメだなぁ。また前みたいに絞め殺してやろうか?それとも…」

毒は右腕の手袋を外そうとする
それを見た炎はすぐ叫んだ

炎「止めろっ!」

毒「あ?」

炎「…っ!」

咄嗟に口を抑える炎だが、遅い
毒は炎を睨み付ける

毒「お前…兄貴に向かって止めろだと?偉くなったなぁ。たった5年しか家を出ていねぇくせに、いつから命令出来る立場になったと思ってんだよ」

炎「い、いや…今のは…!」

毒「ア゛ァッ!?聞こえねえな!」

炎「っ…!」

毒の怒鳴り声に萎縮してしまったのか、炎は声が出せなかった
その様子を見た大は言った

大「フンッ、情けないな。これくらいの事で悲鳴をあげるとは、龍の一族の恥め」

炎「…!」

大「毒、もう行くぞ。そろそろ葬式が始める。兄者を探そう」

毒「そうだな、ヘッヘッヘッ」

離れていく大の後を追うように、毒もついていく
2人は炎から離れて行った

炎「…ハァッ…!ハァッ……!」

解放された炎は、すぐ深呼吸を始めた
威圧感が凄まじい2人に睨まれていたのだから、息が出来なかった
その場で倒れるように膝をつくと、ポタポタ…!と汗が流れた

炎(何も、出来なかった…っ)

5年間鍛えたハズだった
離れていたから平気になったハズだった

だが、過去の事を思い出してしまった

『おい炎!俺の実験体になれよ!今度はもっと強い猛毒だぜ!』
『同じ龍の一族に生まれた身だと言うのに、情けないったらありゃしないな。全員に嫌われて、当然だ』

炎(…俺はまだ…弱いのか…?)





輝人「悪い、便所行ってくる」

一方の輝人は、待機部屋から出ていく
光から場所を聞いて、歩き出す

輝人(…ま、退屈だから本殿の見学だけどな)

実は部屋を出たのは、本殿の見回りだった
葬式が終わるまでとはいえ、ずっと部屋にいるのは退屈だと思い、外に出た

他の兄弟達に見つからないように、歩いて行くと、中庭に到着した
手入れされた立派な中庭だ

輝人(あいつ…日奈子だけじゃなく、俺まで分かったぞ?顔色悪くなっていたな)

先程の炎の事を思い出す
日奈子が心配で声をかけたが、炎はそれを振り払った

輝人(あいつって強がりなとこあるな。無理に弱い事や怖い事を隠しているのがバレバレだ。そんなに実家が嫌だったら葬式なんて来なけりゃ良かったのに。まぁ俺もか)

?「おい、そこの眼帯のおっさん」

輝人「!」

その時、輝人が誰かに声をかけられた