真アゲハ ~第30話 犬渕 健太郎1~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



…ザパーンッ…!ゴロゴロゴロ…!

?『…まれっ…!痛い…!』

脳裏に映るのは、真っ青な顔をした女性だ
お腹がとても大きい妊婦だ
股から透明な液体が漏れ、苦しみや痛みを訴えてくるところを見ると、陣痛の様だ

?『しっかりしろ…!』

助産師ではないが、そばにいた男は妊婦を寝かせ、近くから綺麗なタオルやつかむ棒、ハサミなど出産に必要と思われる物を持ってくる

ザパァァアン…!
ピカァッ!
ゴロゴロゴロ…!

激しく聞こえる大波の音
大きな雷の音に揺れる室内
それらが共通するに、ここは船内だ
それも、嵐の中だ
他の乗客がいないところを見ると、2人を除いて避難したのだろう
タイミング悪く陣痛が始まり、避難なんて出来ないと思った
だが避難用ボートでは、出産出来るスペースは無く、安定しない場所は船内しか無かった

?『痛い…!痛いよぉ…!あぁっ…!』

?『大丈夫だ!俺が付いてる…!』

嵐の中で行われた陣痛
新たな生命が生まれるまで遅くても1日はかかることもあるが、今は時間との勝負だ
そして…

『オギャアァァアーーーーーッ!』

嵐の中、新たな生命が生まれた
産声を上げ、生まれたのは小さな男の子だ

?『産まれた…っ!元気な男の子だぞ!』

?『ハァッ…!ハァッ…!』

何とか出産には成功し、産まれた赤ちゃんの体を洗い、清潔なタオルでくるまれる
その時、船内が傾き出した
そろそろ限界だ

?『さぁ!行くぞ!』

男は赤ちゃんを抱え、女性も支えようとするが、女性は立てなかった
出産後の影響で、下半身に力が入らないのだ

?『…犬渕くん…っ。その子をお願い…!その子を、助けて…!』

ピピピピピ…!





ピピピピピ…!
ピピピピピ…!

犬渕「…ハッ…!」

アラームの音で目を覚ます犬渕
気が付くとそこは、今自身が住んでいる家の寝室だった

犬渕「…懐かしい夢を見たな…」

そう呟き、犬渕は鳴っているアラームを止める
時間を見て、ベッドから飛び上がる

犬渕「…しまった!寝過ごした!」

予定している起床時間より30分も遅かった
すぐ起きて、リビングダイニングへと向かう
到着すると、キッチンの方でオムレツを作る人物がいた

遥「…やっと起きた?“おそよう”さま」

それは、明智遥だった

犬渕「すまん!寝過ごした!」

遥「うん、ずっと鳴ってたね」

犬渕「起こしてくれたって良いだろ!」

遥「俺だって準備してたの、はい」

出来立てのオムレツを皿に盛り付け、テーブルへと運ぶ
そこには、犬渕用に朝食が並んでいた

犬渕「あ…ありがとう。ゲ、玉ねぎ入ってる…」

遥「警察官は好き嫌いしない。片付けはよろしく、じゃあ行ってくる」

犬渕「…どこ行くんだ?」

遥「部活だよ」

そう言うと遥は部活の鞄を肩にかけ、靴を履いて外へと出る

犬渕「…もう17年も経ったんだな…」

犬渕はとある理由で、遥と共に住んでいる
血縁関係は無いが、遥を息子のように育て、遥も犬渕を父親のように慕っている

ちなみに、遥は“怪盗団ラグドール”のクロとして活躍しているのだが、犬渕はそれを知らない

犬渕「…“香織”、お前の息子は元気に育ってるよ。大丈夫だ、俺がちゃんと守るから」

ある女性の名前を口にし、コーヒーを飲んでそう呟いた





同時刻
とあるビルの屋上

屋上には、飛行船があり、そこからはしごが伸びていた
はしごを使って降りるのは、輝人の兄の斑目アサギだ

アサギ「ようこそ!“我が犯罪事務所”へ!」

ロビン「フォッ!フォッ!フォッ!」

手を大きく広げて、挨拶をするアサギ
その前には、1つの人影があった

アサギ「…早速だけど、君が希望したリクエストを元に作ってみたよ。この通りやれば、君の復讐及び“完全犯罪”は綺麗に終わるからね」

アサギはそう言うとある資料を手渡す
その人影は、資料を手にし、1度目を通す
全て読み終えたのか、口角を上げる

アサギ「上手く行くと良いね~、俺は見物してるよ♪」