ピンポーンッ
塚本「丸原さーん、いるんでしょー?お話聞かせてくださいよーっ!」
ージャーナリスト
塚本 雅春(45)ー
半年後
とあるアパートの部屋の前で、1人の男がいた
その男は塚本と言って、ジャーナリストだ
これから取材をしようとしているのだが、アパートのドアが開かない
玄関のチャイムを何度も押しているが、開かない
しびれを切らしたのか、塚本は大声で叫ぶように言った
塚本「詐欺事件を起こした息子さんについて!お話ししてもらえませんかぁー!?」
その大声にアパートの部屋の住人は出てくる
塚本より歳上の、細い女性だ
女性「ま、また貴方ですか…?近所迷惑なので、や、やめてください…っ!」
塚本「取材を受けてくれたら、止めますよ?」
塚本は汚物を見るような眼で、女性を睨む
このアパートに来たのは、先日逮捕された詐欺事件の容疑者の家族にインタビューをするためだった
逮捕されたのは、この丸原と言う女性の息子だ
塚本「息子さんが騙したのは15人!中には全額支払ってホームレスになってしまった方も…」
女性「わ、分かりました…!入ってください…!」
他のアパートの住人の眼が痛く感じたのか、塚本を中へと入れさせる
中に入ると、塚本は録音器の電源を入れて、女性へと迫る
塚本「近所の方への取材で聞きましたよ?あなたは息子さんにお小遣いどころか、やりたいこともやらせてくれなかったそうですね!それがお金に執着するようになったのではないですか!?」
女性「い、いえ…あの…」
塚本「貴女がちゃんとお金の管理を教えていれば、息子さんは犯罪者にならなかったんじゃないですか!?罪の意識はありますか!?被害者やご家族に仰りたいことは!?」
女性「うぅ…!も、申し訳ありません!」
塚本の強烈な圧に負け、女性はすぐ土下座をする
眼には涙が溜まり、罪悪感で胸がはち切れそうだ
この女性には2人の息子がいるが、上の息子が老人相手に詐欺を働き、多額のお金を騙しとったのだ
その息子は警察の調査で逮捕されたが、未だに元の生活に戻れず、苦しんでいる人が絶えない
女性「申し訳ありませんでした!申し訳…」
塚本「あ~ぁ、違う違う。それを求めてるんじゃないんですよ」
精一杯謝罪する女性に塚本はさらに圧をかける
塚本「それで?今はどんな気持ちですか?」
女性「う…ううう…!」
丸原「母ちゃん!」
ー丸原 隆一(当時18)ー
丸原「またあんたか!もう帰ってくれ!あんたに話すことなんてない!」
丸原は母親の女性を抱え、塚本を追い払う
塚本「…ちゃんとお話ししていただけるまで来ますからね?明日も、明後日も…」
女性の様子を見て、塚本は手を引いた
アパートから出ていく
アパートの前に停めてある車に乗り込むと、運転手役の塚本の後輩が声をかける
後輩「塚本さん、今日もダメでしたか?」
塚本「明日もここに来るぞ?いいな?」
後輩「…あの、ちょっとやりすぎではないですか?実際詐欺を犯したのは丸原って人の長男で、母親と次男は関係ないんじゃ…」
塚本「“法で裁けぬ悪人(クズ)”、そう言うのいるだろ?」
後輩「?…は、はぁ…」
塚本「例えば…大量殺人犯を作り上げた親は無罪放免か?」
後輩(また始まった…)
塚本「誰かが裁かなきゃならない。そのために、俺らジャーナリストが裁くんだよ、ヘラヘラと笑って、生きていかないためにな」
塚本は、自分が善人だと思っているジャーナリストだった
これまでに取材をしてきたがそのほとんどが犯罪者やその関係者達で、自身の「どんな気持ちですか?」と言うスタイルで、記事をわざと大きく盛り、悪人を社会的に裁くのが塚本のやり方だ
しかし彼のやり方に少し戸惑っている人物も少なくない
この後輩も一緒だ
丸原の母親が答えないと判断した2人は、そのアパートを後にする
その10分後だった
女性「…ブツブツ…」
丸原の母親が、ベランダで涙を流しながら、ブツブツと口を動かしていた
女性「…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
そう口にしながら彼女はベランダへと出ていく
そして…
ドサッ!
丸原の母親は、死んだ