真アゲハ ~第20話 茜ヶ久保 まゆ4~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



絵麻「…」

名古屋製菓専門学校に絵麻はいた
本日金曜日は作品の審査と表彰式のため、そして翌日の土曜日の一般公開のため、ここにいた
審査と表彰式を終えた絵麻は、自身の作品を改めて見ていた
彼女の目の前には、マジパンで出来た人形や動物達が表情豊かにケーキを作ると言う可愛らしくも繊細な作品が飾られ、その横には『金賞』と書かれた銀色の札が置かれていた

甘利「森口さん、お疲れ様でした」

そこに『HAPPY!Bombom!』の店長の甘利がやってきた

絵麻「甘利さん、お疲れ様です。本日はおめでとうございます」

甘利「いえいえ、そんな…っ」

甘利の作品は、マジパン部門の隣に飾られている大きなウエディングケーキの様なデコレーションケーキ部門に飾られている
青から黄色、緑にかけて綺麗なグラデーションがかかったケーキを3段に重ね、ハイビスカスや白い貝殻が飾っている、これからの季節の『夏』をイメージした作品だ
その横には『連合会会長賞』と書かれた、金色の札が置かれていた
これは、コンテストの中で大きな賞だ

絵麻「あんなにも可愛らしく、夏を先取りしたケーキ…私には作れないわ」

甘利「そんなことないですよ。東京に行ったら私の実力なんて…」

絵麻「次は全国のパティシエが集まる東京での大会、頑張ってくださいね!」

甘利「アハハ…あ、写真撮ります?明日は一般のお客様がやってきてしまいますし…」

絵麻「そうですね、えっとスマホは…」

絵麻が写真を撮ろうとして、スマホを探したその時だった
コンテストのスタッフの1人が、絵麻に声をかけた

スタッフ「あ、森口絵麻さん。すみません、入り口前で貴方にお会いしたいと言う人がいて…」

絵麻「?…はい」

呼ばれた絵麻は、名古屋製菓専門学校の入り口まで向かう
そこで待っていた人物を見て、絵麻は眼を大きくさせた

茜「…絵麻さん、お疲れ様です」

絵麻「!茜ヶ久保さん…」

茜だった
輝人達は連れていなく、茜だけだった

昨日の夜、茜から話があると聞いて待っていたが、ネクロハンターの炎に襲われ、さらにはネクロだと言われ、その場を逃げてしまった
本当なら会いたく無かったのかもしれないが、絵麻は逃げずに、茜と話をすることにした

絵麻「…あの、私に話って何ですか?私はこの後も予定があって…」

茜「すみません、お忙しいところを無理に呼んでしまって…。ですが、私からお話があるので聞いてもらってもよろしいですか?」

元々茜から話があると聞いて、待っていてくれた
だがそれが出来なくなってしまったため、こうして話をすることにした
茜は、自身が務めている探偵事務所の事と、今回調べている事件の事を話した

茜「…ネクロに関係する事件を、これまでにいくつも解決してきています。そして今回も、そのネクロが起こした事件だと私達は考えております。貴方の事を疑っている訳ではありませんが…どうか、お力を貸していただけないでしょうか?」

絵麻「…」

茜は、絵麻が犯人だと疑っていない
だがネクロなら、どんなアビリティを持っているのか知りたい
それがもし、事件の解決に1歩近付くのなら、絵麻に嫌われても構わない
話を聞いた絵麻は、少し黙っていると、ようやく口を開いた

絵麻「…私は昔から、外見だけで否定されてばかりでした」

茜「え?」

絵麻「お婆様がドイツ人だからって、私は日本人っぽくないからよく“外人!外人!”って嫌がらせを受けられたことがありました。そのせいで、私の事をバカにする人の事が苦手になってしまって…」

茜「そんなことが…あったんですね」

絵麻「…私が数年前に事故の影響で、変な力を持った時も、昔の事がフラッシュバックして…また嫌な目で見られるんじゃないかと不安で隠していたんです」

茜(変な力…ネクロのアビリティ…)

絵麻「隠しているからもう大丈夫かと思っていたのに、昨日私を襲ってきた人の顔が、嫌がらせをしてきた人達と同じ顔をしていて…茜ヶ久保さんにも知られてしまったと思って、軽蔑されるんじゃ無いかと思って逃げ出してしまったんです…っ。ごめんなさい…っ」

絵麻の目に涙が浮かぶ
外見だけで判断されて、辛い思いをしてきたのだろう
そんな様子の絵麻に、茜は声をかけた

茜「…辛かったですね。ですが、私は貴方がどんな存在であれ、貴方を嫌ったりなんてしません。お客様の身体のために安心安全なお菓子を作っていましたし…。それになりより、お婆様の話をしてる時の貴方はすごく楽しそうでした。家族を大切に、そして尊敬する人を嫌うだなんて、そんな酷い真似は致しません」

絵麻「茜ヶ久保さん…っ」

茜「…ですので、見せていただけませんか?貴方の力が、きっと事件を解決するかもしれないんです」

絵麻「…分かり、ました…。」

ハンカチで涙を拭いた絵麻は、茜の目の前で、自身のアビリティを見せる事にした

絵麻「…これが私のアビリティです」

涙を拭いたハンカチに突然口づけをする
すると、ふわわ…とハンカチが勝手に動き出し、光出す
光が終わると、ハンカチが姿を変えた
なんと、着せ替え人形が着る様な、リボンやフリルが付いた可愛らしい洋服になっていた

茜「…!これは…っ」

絵麻「私のアビリティは“装飾ーデコレーションー”。キスをするだけで、対象物を綺麗に装飾する事が出来ます。」

ー装飾(デコレーション)ー
使用者:森口 絵麻
対象物に口づけをすることで、綺麗に飾りつけが出来る。
その形はずっと保たれる。

絵麻「実は…私のお店のほとんどの装飾品は私がこれで作ったんです。あのお店自体は安い物件で、自分で廃材とかを集めて、キスをして、作っていたんです。あ、中の作業台やショーケースはちゃんと自分で購入しました…!」

茜「…良かったです…っ」

絵麻のアビリティを実際に目の前で見れて、絵麻は“呼出ーコールー”のネクロではないことも確認できて、茜は安堵した

始「…なるほど、あの人が茜さんが言ってたネクロか」

2人の様子を、茜に連れてこられた輝人達は見ていた

栗栖「アビリティによっては、人に危害を加えない物もあるけど、彼女がネクロだって知って、不安だったんだろうね」

航平「あのネクロハンター…そんな人でも殺すなんてあんまりじゃないか」

輝人「私情を挟むのは良くないって師匠にも言われていたが、可能性があるのは捨てがたいな。けどこれで、また誰が笛吹き男なのか分からなくなってきたな」

絵麻が犯人では無いことは分かったが、まだ事件解決になっていない
輝人達は引き続き、捜索を行う

炎「…フンッ」

絵麻の様子を見て、遠くから見ていた炎も、その場を去っていく


















?「…いよいよだ…!これでたくさんの人々を…!」