真アゲハ ~第5話 駿河 つよし1~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



裁判官「…それでは、判決を言い渡します。被告人A田氏は…有罪」

「え!?有罪!?」
「マジかよ…」
「また負けたな…」

A田「そ、そんな…!私はやってない!絶対無罪にするって…!話が違うじゃないですか!駿河さん!」

つよし「…すみませんでした…っ」

名古屋市高等裁判所
ここである裁判が行われたが、被告人の有罪判決が下された

つよし(…これで、7回目だ…)

被告人を担当した弁護士の駿河つよしは、泣き崩れる被告人に深々と頭を下げて謝罪をする

『駿河弁護士、またもや敗北!』
『敏腕の汚名、返上ならず』
『頭を下げる駿河弁護士』

あの遺産事件以来、つよしは負け続けていた
彼は常に被告人に寄り添って、裁判で勝つことを約束していたが、負けたことで信頼を失っていくばかりだ
マスコミも、勝利した時よりも敗北した時を多く取り上げ、世間からの目が変わった

「駿河さん、また担当を外してほしいと連絡が…」

つよし「は、はい…」

何度も汚名を返上しようと努力した
しかし努力をしても負けばかり
“敏腕”の肩書きも、消えつつあった
それだけじゃない

「駿河さん、お電話です」

つよし「は、はい…お電話代わりました。駿河で…」

『さっさと辞めろ!』ガチャッ!

つよし「…!またか…」

負け続けていると同時に、自分への誹謗中傷が増えていく
それもイタズラ電話だけじゃなく、事務所に直接脅迫文や殺害予告の手紙やメールまで届く事もある
それが毎日のように続けば、同僚から自分への態度も変わる

「毎日毎日、本当迷惑だよな。片付ける俺らの身にもなってくれよ」
「敏腕って言われて調子乗ってたからじゃね?」
「自業自得じゃん、このまま案件無くなればいい」

つよし(落ち着け…大丈夫、大丈夫だから…!)

陰口を言われたつよしは、自らの精神を落ち着かせようと、胸ポケットから飴玉を取り出す
口に含めて、コロコロと舌で転がす

「駿河さん、ちょっと」

つよし「…はい?」

同僚に呼ばれ、会議室に案内された
そこに入ると、部長など自分の上司達が揃っていた

つよし「…え…?今、なんて…?」

部長「君のパソコンから、顧客の個人情報が流出した形跡がある。どう言うことかと、聞いてるんだ」

つよし「……え…!?」

弁護士が依頼人や被告人などの個人情報を流出するなどご法度、それが行われた事で呼ばれた
つよしは全く身に覚えがなく、「やっていない」と否定したが、結局1ヶ月間の謹慎処分が下された

つよし「…ごめん、ごめん真帆ちゃん…。僕、クビになるかもしれない…」

ーつよしの妻
 駿河(旧姓:天野) 真帆(26)ー

つよし「1ヶ月間…調査に入るから、それまでは自宅待機だって…」

真帆「そんな…」

つよし「どうしよう…もしクビになったら…」

真帆「…大丈夫だよ、つよしくん。だってやって無いんでしょ?諦めないで訴え続ければ、信じてもらえるよ」

つよし「真帆ちゃん…」

弱気な夫であるつよしを、励ます妻の真帆
2人は大学の時に知り合い、結婚した
まだ子供はいないが、お互いに気持ちを理解し合い、辛い時もこうして寄り添ってくれる
情報漏洩の真相が分かるまで、つよしは自宅待機となったが、真帆はそんなつよしを信じていた

真帆(今日はつよしくんの好きな鶏肉がたくさん入ったクリームシチューにしよう。つよしくんを元気にさせなきゃね)

真帆は買い物へ向かう
つよしの事を思って、好きな料理を作ろうと予定していた

「あれ?真帆ちゃんじゃん!」

真帆「え?あー!早川くん!久し振りね!」

その時、真帆は大学の時の同期と出会った
久し振りに再会して嬉しくなったのか、楽しく会話をする
まだ時間がある事を確認し、買い物を後にして、真帆は会話を楽しむ事にした

しかし、それが良からぬ事を招いてしまうのだった

…カシャッ!カシャッ!


それから数時間後、真帆はマンションに帰ってきた

真帆(ふぅ、結構買い過ぎちゃった。それにしても早川くんも結婚して、来月にはパパになるんだ~。私達も子供…いや、まずはつよしくんを慰めないと!)

両手に大きな買い物袋を抱え、つよしが待つ部屋のドアを開ける

真帆「ただいま…って、うわっ!お酒の匂い…?」

玄関の扉を開けると、アルコールの匂いが広がっていた
進んでいくと、ゴクゴクゴク…とビール缶を飲んでいるつよしがリビングにいた
それも1つではなく、既に開けていた缶が4つもあった

真帆「ちょ、ちょっとつよしくん…!そんなに飲んだら夕飯食べられなくなるよ?てか、ビール買ってきたの?言ってくれたら買ってきてあげたのに…」

つよし「…あのさぁ、何か言うことあるんじゃない?」

真帆「え?な、何の事?」

ビールを飲みきったつよしは、真帆を睨み付ける
何か怒っているみたいだ

つよし「さっき、真帆ちゃんが出ていった後で…ポストにこんなのが入っていたんだけど?」

そう言いつよしは、茶色い封筒を取り出す
それを逆さまにし、中身をテーブルの上に広げた

真帆「…え…!?な、なんでこれが…!?」

中身を見て、真帆は驚く
それは先程、真帆と大学の同期が再会して、カフェで楽しく会話をしている写真が出てきたのだ

つよし「こいつ、早川だよね?」

真帆「そ、そうだけど…でも久し振りに会ったの!だから少し会話をしただけで…!それに彼は結婚して、奥さんのお腹には子供も…」

つよし「それを聞いてるんじゃないよ」

真帆「…え?」

つよし「真帆ちゃんさ…僕が今どれだけ大変な時にさ、よく楽しんでいられるよね」

真帆「え…な、何言ってるの?楽しい訳無いじゃない。つよしくんの事を思って…」

つよし「僕がどれだけ辛いか知らないだろ!」

そう怒鳴ったつよしは、真帆に向けてビール缶を投げつけた

真帆「キャアッ!」

ビール缶は真帆の額に当たってしまった
咄嗟だったとはいえ、怪我をさせてしまった事に気付き、すぐ我に返る

つよし「!ご、ごめっ…!」

真帆「痛っ…ちょっと!何するのよ!」

だが時既に遅し
真帆は涙目になって、つよしに怒鳴った

真帆「つよしくん!私ずっと言ってるよね!?私のお父さんが、お酒を飲むと暴力を振るう人で、私とお母さんは傷つけられたって!暴力を振る男は嫌いだって言ったよね!?つよしくんだってそれを聞いて、絶対しないって、するわけ無いって言ったじゃない!もしそんなことをしたら離婚するって約束も…!」

つよし「ごめん…ちょっと、1人にさせて…っ」

つよしはお酒の勢いで真帆を傷付けてしまった罪悪感と、これまで溜まったストレスで、精神がいっぱいだった
「放っておいてほしい」と言ってる様で、真帆はわなわなと震えた

真帆「…良いわよ、言われなくてもこっちから出ていくから!」

買い物袋を床に起き、すぐ寝室へと向かう
旅行用のキャリーバッグに服や下着に化粧品、スマホ、財布、その他必要な物を詰め込んで、真帆は出ていく
マンションを出ていくつもりだ

つよし「ま、真帆ちゃ…」

真帆「ついてこないで!」

そう言い放ち、バタンッ!とドアを強く閉めた

つよし(…どうして…?どうしてこんなことに…?)