新アゲハ ~第60話 加賀 隼司8~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



黎「…ハッ!」

その頃、黎は目を覚ました
そこは黒い靄がかかっていた場所だ

黎「ここは…?確か俺は加賀の心の中をレンズで覗いたら…」

何故ここにいるのかを思い出し、思い出してここが何処なのかすぐに分かった 
ここは、淳之介の心の中だ

黎(そうか…確か俺はよく見ようとしてレンズに触れたんだった…。そしたら光り出してここにいたわけか)

周りの黒い靄を見て、何故か気分が悪くなっていく
こんなところに淳之介がいるとなると、大変な事が起きそうな気がした
すぐに淳之介を探し出す

黎「そんなに遠くは無いはず…」

隼司『淳之介、お前の母さんは亡くなったんだ』

黎「…!」

淳之介を探している途中、どこからか父親の隼司の声が聞こえた
だがその内容は、どれも冷たいものだった

隼司『仕事が入ったからな、ご飯は1人で食べてくれ』

隼司『話がしたい?今忙しいから後にしてくれ』

隼司『熱が出た?自分の体調の事は自分でちゃんとしろと言ったはずだろ?』

黎(加賀の父親か、話は華林先生から聞いていたがここまで厳しいとは…)

隼司『先に家に帰ってなさい!』

麻里奈『何よ!冷たいわね!』

淳之介『そんなに…僕の事が嫌いなの!?』

進んでいくうちに、母親の麻里奈や淳之介の声も聞こえてきた
新しい記憶の様だ

黎「…!あれは…!」

目の前に淳之介がいた
虫眼鏡で見た時と同じく、うずくまって暗い顔をしていた

黎「加賀!助けに…」

?「ウフフフ…」

黎「!」

そこに不敵に笑う声が聞こえた
見ると、淳之介の目の前にソアが現れた

ソア「随分すごい変わりようね、雑誌でチラッと見たことあったけど、情けなさそうだわ」

淳之介「…そうだよね…。僕なんか…」

ソア「怖い?怖いわよね…頑張って仲間を守っていたのに、それが通用しなくなっちゃったんだもの。仲間に見捨てられたら、もうアゲハ族をやっていけないものね」

黎「…!」

淳之介「そうだね…僕は、皆の役になんて立てない…。どうせ何やっても無駄なんだ…!皆に迷惑がかかるだけ…!」

ソア「可哀想に…でも安心して?1つだけ、貴方が助かる方法があるわ」

淳之介「え…?」

ソア「それは…忘れることよ」

ソアは淳之介に近寄り、手を淳之介の頬に触れる
それと同時に淳之介の身体が、ズブズブと下に沈んでいく

淳之介「忘れ…る?」

ソア「そうよ。貴方がこんなに辛いのは、アゲハ族だからでしょ?自分がアゲハ族だと言うことを忘れてしまえば、もう辛い思いをする事はないの。悩みも恐れも侮りも全て忘れられるわ」

淳之介「忘れ…られる?」

ソア「えぇ」

ニヤッと微笑み頷く
その頷きに答えたかの様に、ズブズブとまた沈んでいく

淳之介「…そうだよね…忘れてしまえばもう辛い事なんて無い…。僕が守ったって、何の意味も無いなら…忘れてしまった方が…」

黎「それは違う!」

ソア「!」

そこに黎は手をのばす
淳之介の身体が全部沈む直前で、黎が止めた

淳之介「せん…せぇ…?」

ソア「綾辻黎、何故ここに!?…でももう遅いわ!彼はもう恐怖に溺れたの!2度と立ち上がることなんてない!」

黎「勝手に決めつけるな!加賀はお前が思っているより弱くなんて無いし、情けなくなんてない!」

ソア「アハハ、何言ってるの?この姿を見て分からないの?もう立ち上がる事なんて出来ない無様な蝶なのよ!こんなのアゲハ族にいらないじゃない!」

淳之介「…!」

ソア「こいつは役に立たないのが怖いからって全てを忘れるのよ!恐れだけじゃなくあんた達の事だって!こんなに情けない話がある!?顔は良くても中身はダメダメな弱虫なのよ!アハハハハハハ!」

淳之介「っ…!」

ソアに罵られ、淳之介の身体はさらに沈む
全身が沈まりそうになる
その時だった

黎「…な…!」

ソア「え?何?何か言った?聞こえないんだけど?w」

黎「笑うなぁっ!」

ソア「!」

淳之介「…!」

黎「何が可笑しいんだ…!?無様?情けない?怖いものがある?それの何が可笑しいんだよ!?」

黎はソアに強く言った
それと同時に淳之介を引き上げようと、両手で淳之介を掴む

黎「俺だって怖いさ!俺は1度アゲハ族を裏切った身だ!アゲハ族を辞めた後、どんな未来が待っているか怖いさ!だけど俺は…俺はそれでもお前らを探した!ファントムになって、アゲハ族を裏切っても、その怖さを覚悟していた!」

ソア「ハッ、何を話すかと思えば武勇伝のつもり?アゲハ族を裏切った奴が、何を言っても何も響かないわよ」

黎「あぁそうだ…!俺は自分の事ばかりを考えていて、加賀がすごく悩んでいるのに何も聞いてやれ無かった…!恐怖の感情は誰にだってあるはずなのに、俺はアゲハ族以前に教師失格だよ!」

淳之介「先生…っ」

黎「悪かった加賀!俺は…お前の話をちゃんと聞かず、ちゃんとアドバイスをせずに受け流してしまった!許してほしい!」

淳之介「先生…でも僕は…」

黎「忘れたい気持ちなら、俺にだってある!俺だって過去や嫌なことは全部忘れたい!でも…忘れるなんて、そんなの間違っている!」

黎の力が強いのか、淳之介が引き上がっている

黎「忘れれば確かに楽だ!でもそんなことをしても、何も成長に繋がらない!恐怖を覚えるってことは良いことでは無いけど、悪いことでも無い!恐怖を知ることで、また新しい事に挑戦出来るチャンスがもらえるんだ!」

淳之介「…!」

ソア「何よ…怖くないって言うの!?そんなのただの綺麗事じゃない!」

淳之介「…綺麗事だと思うなら勝手に言ってろ!」

ソア「!」

淳之介の口が開いた
同時に淳之介は自分から出るように、這い上がった

黎「加賀…!」

淳之介「先生の言う通りだ…!忘れるなんて違う!僕の心が弱かった!だからこそ…僕はここまでタテハくん達と来られたんだ!いい加減…僕の心から出ていけぇっ!」

ソア「きゃあぁーーっ!」

淳之介の強い思いがソアの存在を消した
黒い靄が消え、強い光が淳之介を包み込む
黎はそれと同時に、淳之介の心から出られた

黎「…!加賀!」

仁の部屋に出たと分かると、すぐ淳之介に駆け付ける
震えもなく、毛布も脱ぎ、優しい笑顔を見せた淳之介がいた

淳之介「…先生…ありがとうございます…!」

黎「加賀、良かった…!」











…ピキピキッ…!パカッ!

その時、強化アイテムの1つがまた割れたのだった