アゲハ ~第67話 黒木 大雅5~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



―質問です。黒木竜之介という人物をどう思いますか?

「えーと、すごく優しいですよ!図書室で高いところにある本を取ってくれたり!」

「そうそう!この前なんか、クラスのノートを係じゃ無くても集めてくれていたし!」

「頭良いから分からないところ教えてくれるし、運動も出来るからいい奴だよな」

「前に不良校の人達が絡まって来た時は助けてくれましたよ、強かった!」

「でも……怖かったよね?不良を殴っている時の顔」

「うん、何かドス黒い感じだったね」

「この間、俺の成績表見られてすごくバカにしてきたよ。あいつだってそんな良い成績じゃないのに……」

「何か話していると見下してる感あるんだよねぇ…お前らと俺は違うんだ~って言ってるみたい」

「俺……あいつに最悪なことされたよ。絵画コンクールの絵、俺の絵なのに自分の絵で提出しやがった!しかも賞まで……!」

竜之介の話は7割りが「優しい」や「かっこいい」など褒め言葉が多いが、残りの3割りは「最低」や「怖い」と言う言葉が出た

大雅はその3割りの方だった

バキッ!

大雅「ゲホッ…!」

竜之介「お前、何母さんにチクろうとしてんだよ?あ?」

大雅「ち、違う……僕はお兄ちゃんの帰りが遅いって……っ」

竜之介「嘘ついてんじゃねぇよ!」

ドガッ!

大雅「ガハッ……!」

竜之介に気に障る様な事があればすぐこれだ
大雅を虐待し、ストレスを解消させる
しかも竜之介は「俺の心を助けてくれ」と、これは治療なんだと言い訳をしてくる

大雅は正直嫌だった
ストレス解消なら他に良い方法があるはずなのに、自分が怪我をするなんて納得が行かなかった
だが口答えや両親に話そうとすると、虐待は酷くなっていった
顔や腕はすぐに気付かれると思い、腹や首、背中など服で隠れる部分にばかり攻撃した
おかげで大雅の身体はボロボロになっていった

父親「ん?大雅、背中どうした?」

大雅「え?あ、あぁ……これは今日体育で跳び箱やったんだけど……」

父親「背中を打ったのか?」

大雅「う、うん……」

父親「気を付けなさい。もっと高く飛べば当たらないから」

大雅「あ、ありがとう……」

竜之介がイライラするほとんどの原因は父親だ
成績が悪いとすぐ怒り、竜之介に暴言を吐いたりする
そのせいで、大雅にも被害が加わっている事に気付いていない

誰かに相談したいが、誰にも相談出来ない
もし相談してバレたらまた暴力を振るわれるかもしれない
それが大雅にとって、精神的なストレスとなってしまった

やがて、大雅は中学や高校と進学して行くが、竜之介は地元に残ると言って、大学も就職先も家から通える所にしたため、地獄は終わらない
竜之介が大人になると、仕事とかで暴力は減って行ったが、その分量は増えた

今まで腹や首、背中に暴力を振るっていたが、手や足などにも怪我を負わせた
この頃から長袖を着るようになった

大雅「ゲホッ…!」

竜之介「今日はこのくらいにしてやんよ」

そう言うと竜之介は大雅の部屋から出る
前までは竜之介の部屋でやっていたが、時々大雅の部屋にまでやってきて、暴力を振るったりするようになった

大雅「うっ……くぅ……っ!」

成長しても竜之介に勝てない自分が情けない
何も言い返せない自分が情けない
本当の事を言えない自分が情けない

大雅「っ…!」

大雅は自分の机の中からあるものを取り出す
それは、カッターナイフだった
カッターナイフの刃を出し、自分の左手首に当てる
そして、引いた

……ポタッ…!ポタポタッ…!

大雅「はぁ……はぁ……っ!」

リストカットだった
だが、今ので30回目だった
初めてのリストカットは中学生の時で、その頃からずっと続けている
そのせいで左手首は赤い横線で染まりかけていた

大雅(……血が流れると、妙に“生きている”って思うんだな……)

最初は怖かった
死んじゃえばいいんだと思って初めてみると、実際は怖くて死ねなかった
それから何度も続けているものの、死ななかった

だが正直心は限界だった
風船みたいに破裂しそうだった

大雅「……ごめんなさい……」

大雅、20歳。
ある日、大学に行くフリをして大雅は海辺へと向かった
潮風が吹き、海の音がする崖の上に登った

大雅「もういいんだ……これで、もう自由だ……」

自分を育ててくれた父親と母親、暴力を振るってきた竜之介には何も伝えずに海にやって来た

崖の上から下を見ると、大きなとんがった岩に大きな水飛沫が立つ

大雅(……これでいい……)

そう思うと大雅は

……パッ
























……グシャッ!



大雅は自殺を計った