ーアンクの妹
リンダ・キキーモラ(28)ー
アンクの妹はリンダと言い、アンクとは7歳差だ
アンク「おはよう、リンダ」
リンダ「お兄ちゃんおはよう、良く眠れた?」
アンクが泊まった翌日、家族4人で朝食を食べる
バターの香りがするクロワッサンが主役だ
アンク「…あ、このクロワッサン美味しい」
父親「分かるか?そこの“トム&サビーヌのブーランジェリーパティスリー”から買ってきたんだ」
リンダ「あ、私あそこのマカロン大好き!しかもパリで1番のパン屋さんよね!」
アンク「うん、コーヒーに良く合うよ」
母親「たくさん食べてね」
リンダ「そう言えばお兄ちゃん、最近はどこの国行ったの?」
アンク「!」
リンダから職業の話を聞かれた
家族はアンクが死刑執行人だと知らない
通訳と嘘をついているため、ありもしない話をし出した
アンク「あぁ…最近は隣のドイツに行ったよ(昨日の刑務所がそうだったからな…)」
父親「本当か?」
アンク「うん、結構通訳も忙しくてさ。でも色んな国を見れるから楽しいよ(ほとんど刑務所巡りだけどな)」
母親「しばらくは仕事無いの?」
アンク「そうだね…俺の他にも通訳はたくさんいるし、予定(死刑執行)はしばらく無いからパリを歩いているよ」
リンダ「えぇ~、お兄ちゃんいいなぁ。休みで」
アンク「そうか?」
父親「リンダは今、重大なプロジェクトの主任を担当してるもんな」
アンク「何?どんな?」
リンダの職業は、ファッションに関する仕事だ
今は有名なブランドの『Audrey』の課長の立場で、重大なプロジェクトを担当している
リンダ「もう毎日大変だよ、アイディアを考えたり、会場の手配とか、取引先の取引とかね」
アンク「そんなに大変なのか」
リンダ「でも楽しいよ?私にはたくさんの仲間がいるし、後輩を可愛がってるし、何より大好きな服を扱える仕事をしてるからね」
アンク「それは良かった」
リンダはファッションの世界でトップになることが夢だ
自分とは全く別の道へ進んでいるが、アンクにとって、それは嬉しいことだ
リンダの夢が叶ってほしい
この時ばかりは、そう思っていた
それからしばらくして、アンクに次の仕事が近付いていた時の事だった
アンク「もうすぐ仕事か…」
予定表を見ながらパリの街を歩き、その足でいつの間にか教会に到着した
アンク「…う、死神で死刑執行人の俺が来るとこじゃねぇな……ん?」
アンクが教会の敷地内を覗くと、黒い服を着た人達が集まっていた
良く観ると、細長い箱に囲むように立っている
葬式だった
誰かが無くなったんだろう
アンク(……可哀想にな……)
アンクは通り過ぎようとしたが、ある夫婦を見つけた
妻「うっ…ううっ…!」
その妻の方は、泣いていた
夫は妻を支えるかの様に歩いていた
アンク(うわっ…)
妻「ごめんね……ごめんね…っ」
夫「落ち着け、自分を責めるんじゃ無い」
妻「でもっ…!話さえ聞いていれば…!」
夫「あぁ…涙を拭きなさい。服が台無しになるぞ?」
アンク「あの…使ってください」
話をかけたく無かったが、アンクは妻の方にハンカチを出した
妻「!……す、すみません……っ」
夫「すみません……恥ずかしいところを……」
アンク「ちっとも恥ずかしく無いですよ。御愁傷様です」
夫「……うちの娘でね」
夫が細長い箱・棺桶を見て話し出した
夫「つい最近まで、有名なファッションブランドの会社で働いていたのですが……こんなことになるなんて……」
アンク「……何かあったんですか?」
妻「……私達が……行けないんですっ…!」
妻の口が開く
夫「あぁこら…無理に話さなくても…」
妻「私達が行けないんです…っ。あの子は会社で酷いいじめに遭っていて…、私達に相談して来たんです…っ。でも、私達は…酷い事を言ってしまって…っ」
アンク「会社でいじめに…」
夫「…後悔してます、あの時娘は“辞めたい”と言っていたんです。でも“いじめられてるのはお前に原因があるんじゃないか?”とか“舐めてるのか?”とあの子を責めてしまって…少しでもちゃんと話を聞いていればこんなことに…」
アンク(パワハラの自殺か…)
妻「うっ……!」
夫「…娘が遺書を残してくれまして、会社のプロジェクトに参加することになったが、責任者に酷くいじめられたと…」
アンク「そうだったんですね…」
妻「その“キキーモラ”って人…許せませんっ…!」
アンク「……え?」