リビングのソファに蝶と哀幻波は対面するかの様に座り、蝶の元にはオレンジジュース、哀幻波の元にはアイスティーが置かれる
哀幻波「…友達のことだよな」
蝶「それもあるけど…正義のこと」
哀幻波「正義ねぇ…」
蝶「私達はこの世で苦しんでいる人達を助け、闇の心を殺して来たんだけど…香留にあんなことを言われて…」
香留『あんたらは闇の心を殺して、平和にさせようとする。…でも、その心を殺された人達が嫌な思いをしてもいいの?』
蝶「…確かに一理あると思った。別にそういう意味でやってた訳じゃない、でも…」
哀幻波「やられた人はどう思うか、だよな?」
蝶「うん…」
哀幻波「今まで色んな人間の闇の心を殺して来た。依頼人を少しでも助けようとした。決して間違いでは無い。けど…それで終わればそれでいい話。闇の心を持っていた人間がちゃんと反省して、次はないようにっていう事を学べばいいんだ」
蝶「…」
哀幻波「けど、そう簡単には出来ないんだよな。人生には色んな問題があって、それを自分の手で解決して行かなくちゃいけない。解決する前や間でストレスや色んな感情が生まるけど、解決した後は達成感、またはそれを面白くないと思う人間に横取りされたり、潰されたり…また次の問題が来て解決しなきゃ行けない時もあって、色んな問題が起こるんだよ」
蝶「確かに…」
哀幻波「結果、そのおかげで闇の心なんて減らない。増えていく一方だけど…そんな闇の心を減らすために俺らがいるんだよ。少しでもたくさんの人を救えるように、命を絶つなんてことをさせないためにも…」
蝶「……」
哀幻波「蝶、人間の感情の中で1番恐い感情ってなんだと思う?」
蝶「え?…怒りとか?」
哀幻波「“憎しみ”だよ」
蝶「あ…そっか」
哀幻波「“憎しみは負の連鎖”とも言うだろ?“憎しみ”という感情を持つだけで、殺意が沸いたり、犯罪に手を染めたり、復讐をしたりなんてことが簡単に思えちまうんだ」
蝶「え…」
哀幻波「俺らも父さんの敵を撃つとか言ってるけど…それは“復讐”に入る。結局俺らもアゲハ族を語った殺し屋なんだよ。いつかは父さんを殺した奴らが目の前に現れると思う。けど俺らはその闇の心を殺すだけで済むのか?ってなると…お前の友達が言ったことと同じになるよな…」
蝶「結局…私達がやろうとしてることはドクロ族とかと同じってこと?」
哀幻波「…認めたくはねぇけど、そうなるよな」
蝶「……結局、正義って何なの?」
哀幻波「…分からない」
哀幻波は首を横に振る
哀幻波「分からない。自分は人を助けているようで助けていないのかも知れないし、ドクロ族みたいにいつかは人を殺すのかもしれない」
蝶「そんな…」
哀幻波「…でも、俺がこの道を選んだことを間違っているとは思いたくねぇんだ」
蝶「え…?」
哀幻波「自分で決めた道は進んで生きたいし、大切なものは守っていきたい。それが正義なのかは分からないけど、俺は自分を信じたいんだ」
蝶「兄さん…」
哀幻波「自分を信じなかったら…正義とは言えないと思うからさ」
蝶「…!」
哀幻波「ってまぁ、少しかっこつけちったこと言っちゃったけど…父さんだったらなんて言っていたかな?」
哀幻波はある棚の上に飾っている写真立てを見る
そこには蝶と哀幻波の父親・黒木竜之介の写真が飾ってあった
蝶「お父さん…っ」
蝶はその写真を見てうるっと涙目になった
哀幻波「…復讐の時は、その時考えるよ。心だけを殺すか、身体も殺すか…その時は、“あの監獄”に入る覚悟も出来ているから」
蝶「…!」
哀幻波「んで、蝶はどうしたい?その香留っていう友達と」
蝶「……私は……」