アゲハ ~第10話 須川 香留3~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



リビングのソファに蝶と哀幻波は対面するかの様に座り、蝶の元にはオレンジジュース、哀幻波の元にはアイスティーが置かれる

哀幻波「…友達のことだよな」

蝶「それもあるけど…正義のこと」

哀幻波「正義ねぇ…」

蝶「私達はこの世で苦しんでいる人達を助け、闇の心を殺して来たんだけど…香留にあんなことを言われて…」

香留『あんたらは闇の心を殺して、平和にさせようとする。…でも、その心を殺された人達が嫌な思いをしてもいいの?』

蝶「…確かに一理あると思った。別にそういう意味でやってた訳じゃない、でも…」

哀幻波「やられた人はどう思うか、だよな?」

蝶「うん…」

哀幻波「今まで色んな人間の闇の心を殺して来た。依頼人を少しでも助けようとした。決して間違いでは無い。けど…それで終わればそれでいい話。闇の心を持っていた人間がちゃんと反省して、次はないようにっていう事を学べばいいんだ」

蝶「…」

哀幻波「けど、そう簡単には出来ないんだよな。人生には色んな問題があって、それを自分の手で解決して行かなくちゃいけない。解決する前や間でストレスや色んな感情が生まるけど、解決した後は達成感、またはそれを面白くないと思う人間に横取りされたり、潰されたり…また次の問題が来て解決しなきゃ行けない時もあって、色んな問題が起こるんだよ」

蝶「確かに…」

哀幻波「結果、そのおかげで闇の心なんて減らない。増えていく一方だけど…そんな闇の心を減らすために俺らがいるんだよ。少しでもたくさんの人を救えるように、命を絶つなんてことをさせないためにも…」

蝶「……」

哀幻波「蝶、人間の感情の中で1番恐い感情ってなんだと思う?」

蝶「え?…怒りとか?」

哀幻波「“憎しみ”だよ」

蝶「あ…そっか」

哀幻波「“憎しみは負の連鎖”とも言うだろ?“憎しみ”という感情を持つだけで、殺意が沸いたり、犯罪に手を染めたり、復讐をしたりなんてことが簡単に思えちまうんだ」

蝶「え…」

哀幻波「俺らも父さんの敵を撃つとか言ってるけど…それは“復讐”に入る。結局俺らもアゲハ族を語った殺し屋なんだよ。いつかは父さんを殺した奴らが目の前に現れると思う。けど俺らはその闇の心を殺すだけで済むのか?ってなると…お前の友達が言ったことと同じになるよな…」

蝶「結局…私達がやろうとしてることはドクロ族とかと同じってこと?」

哀幻波「…認めたくはねぇけど、そうなるよな」

蝶「……結局、正義って何なの?」

哀幻波「…分からない」

哀幻波は首を横に振る

哀幻波「分からない。自分は人を助けているようで助けていないのかも知れないし、ドクロ族みたいにいつかは人を殺すのかもしれない」

蝶「そんな…」

哀幻波「…でも、俺がこの道を選んだことを間違っているとは思いたくねぇんだ」

蝶「え…?」

哀幻波「自分で決めた道は進んで生きたいし、大切なものは守っていきたい。それが正義なのかは分からないけど、俺は自分を信じたいんだ」

蝶「兄さん…」

哀幻波「自分を信じなかったら…正義とは言えないと思うからさ」

蝶「…!」

哀幻波「ってまぁ、少しかっこつけちったこと言っちゃったけど…父さんだったらなんて言っていたかな?」

哀幻波はある棚の上に飾っている写真立てを見る
そこには蝶と哀幻波の父親・黒木竜之介の写真が飾ってあった

蝶「お父さん…っ」

蝶はその写真を見てうるっと涙目になった

哀幻波「…復讐の時は、その時考えるよ。心だけを殺すか、身体も殺すか…その時は、“あの監獄”に入る覚悟も出来ているから」

蝶「…!」

哀幻波「んで、蝶はどうしたい?その香留っていう友達と」

蝶「……私は……」