蝶「どうしよう…」
ステージの照明の上に残された蝶はどうやって降りようか考えていた
蝶(…ここから飛び降りたら……危ないよなぁ…)
いっそのことここから飛び降りて、綺麗に着地をしようと考えた
だがそんなこと出来ない
蝶「…それにしても…」
仁香『あんたムカつくのよ、ずっとそこにいれば?バーカ』
蝶「……私が何をしたのよ…」
先程の仁香の言葉が頭から離れられない
そもそも向こうから話しかけてきたのだ
蝶「……覚えてない…あまり話したこともないのに……」
心当たりもない蝶
それもそうだが、また悪人に騙されてしまったことを後悔していた
蝶「……私…バカだ……っ」
昨日のことといい、今回のことといい、蝶は心がぐらつき始めてしまった
蝶「もうやだ…っ」
うるっと蝶の目に涙が溜まる
蝶(自分がミスするから、人に迷惑ばっかりかけて…)
そのせいで、蓮も傷を負ってしまった
蝶(蓮…っ)
蓮のことを考え、涙を拭おうとしたその時
…ツルンッ!
蝶「わっ!」
バランスを崩して蝶は照明から落ちてしまった
蝶「きゃあぁっ!」
その時だった
…ガバッ!
蝶「わっ…!」
ドサッ!
蝶は誰かに抱かれ、それがクッションとなって助かった
蝶「あ…」
?「痛てててて…っ」
蝶「あっ…!あなたは…!」
落っこちてしまった蝶を支えてくれたのは
橙真「…あ、大丈夫か?」
2年の藤原橙真だった
蝶「あ…す、すみません!大丈夫ですか⁉」
橙真「あぁ…平気平気、何とかね…」
蝶「で、でも…どうして…?」
橙真「…女の子のピンチは助けなきゃ…ね?」
蝶「え?」
橙真「なーんて、本当はそこの入り口の前を通ったら物音がしてね。気になって見たらあれでビックリしたんだ」
蝶「あ…ありがとうございます…」
橙真「それにしても…なんであんなとこに?降りられなかったのははしごが倒れたせい?」
蝶「あ…ち、違うんです…。実は…」
蝶は先程のことを話した
橙真「…なるほど、それは災難だったね」
蝶「はい…」
橙真「なにもしてないのにされたってこと?」
蝶「まぁ…」
橙真「何か心当たりは?」
蝶「特には無いですけど…でもその子は隣のクラスの蓮って子にベッタリっていうことが気になりますね…」
橙真「…もしかしたら、それは…」
橙真は原因をはっきりと伝えた
橙真「それは“恋”かもね」
蝶「え?(・・;」
あまりの答えに唖然とした
橙真「その隣のクラスの子は、その…蓮っていう男が好きなんだよ。それを君が楽しく話していたかなんかで、“盗られた”と勘違いしてしまったわけだ」
蝶「え?いや私はそんなつもりじゃ…」
橙真「例えの話だから本気にしなくていいよ」
蝶「あ…すいません…」
橙真「それでこんな嫌がらせを…最低だな、その女」
蝶「私…蓮のことはただの“仲間”だと…」
橙真「え?」
蝶「あ、いえ…“友達”だと思っていると…」
橙真「…そうかな?」
蝶「え?」
橙真「蝶ちゃんもさ…好きなんじゃないの?その蓮って奴のこと」
蝶「え⁉」
橙真「話を聞く限り、蓮のことが好きだって感じるんだ。誰かにベタベタ触ってほしくない…とか、そういうデリカシーは守ってもらいたいって」
蝶「…まぁ、それも一利ありますが…」
橙真「だったら伝えてみたら?見ただけで何もしないのは、ダメだよ?」
蝶「先輩…」
橙真「見てるだけじゃ、余計にストレスになるからね。それに、気付いたときにはもう遅かったってことにもなるから…」
蝶「あ…ありがとうございます…っ」