アゲハ ~第5話 若松 孝司6~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



「よーし、全員集まったか?」

集合時間になり、遊園地の正門前には1年生と2年生が列になって集まっていた
だが

「せんせーい!若松くんがいませーん!」

沢田「真…まだ来てないな」

花「あー…なんで置いて行ったのかな?帰ってると思ってたのに…(・・;」

ミカと若松だけがいなく、すぐに帰れない事態となっていた

「三神くんと若松くんだけですね」

「あの2人は何やってるんだ」

教職員も困り出す
すると1人の生徒が声を上げた

「…あれ?観覧車止まってね?」

止まっている観覧車を見て驚く
さらにそこに

「あのすみません!」

遊園地の案内人が慌ててやってきた

「どうしました?」

案内人「あの…只今観覧車が不具合で止まってしまいまして、そのゴンドラの中に貴校の生徒らしき人物が入っているところを目撃したのですが…」

「ええっ⁉」

沢田「え⁉ま、まさか…!」

花「…三神くん…っ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その頃、ゴンドラの中では大変な事になっていた

ガダンッ!

ミカ「止めて…っ!止めて…っ!」

ミカがなぜか涙を流して、ゴンドラのドアを強くノックしていた
息も荒く、混乱状態だった

若松「お…おい?三神?」

ミカ「やだ…っ!止めて!お母さん!お母さんを殺さないで!」

若松「三神、落ち着け!落ち着けって!」

ミカ「お母さん!お母さん!お母さん!」

若松「やめろって!」

ミカ「死んじゃヤダ!お母さん!」

若松「三神!」

ギュッ!と若松はミカのことを後ろから抱き締めた

ミカ「ハァ…ハァ…ッ」

抱き締められたことからか、ミカは呼吸を整え、冷静さを取り戻した

若松「落ち着け…大丈夫だから…」

ミカ「……お母さん…っ」

落ち着いてもミカは涙を流していた
母親のことを思い出したみたいだ

若松「…何が…あったんだ?」

ミカ「……お母さん…お父さんに殺された…っ」

若松「え?」

ミカの口から衝撃的な言葉が出た

ミカ「…お父さんは、酒とギャンブルに溺れていて…お母さんにいつも暴力を振るっていた…。僕は助けたかったけど…まだ小さかったから何も出来なかった…」

若松「…」

ミカ「ある時…お金が無くて、お父さんがお母さんに包丁を向けてきて…。それを見たお母さんは僕のことを台所の床の倉庫に入れた…、まだ真っ白だったデイジーと一緒に…」

若松「え…⁉」

ミカ「そして…お父さんがお母さんを刺した…っ。お母さんは、僕を守るために…倉庫の上にうつ伏せになって…抵抗もしないでずっと刺されて…っ。僕はその様子を、倉庫のドア越しで…っ!」

ミカの目からさらに大きな涙が溢れる
とても辛かった
ドア越しで母親が殺される様子を幼い時に感じてしまった
母親が幼かった自分を守るために、母親自らが犠牲になったことをすごく悔やんでいた

ミカ「…そのあとは…お父さんは逮捕されたけど……お母さんは死んじゃった。頭や背中に数十ヶ所の包丁の後があって…」

若松「もう何も言うな」

若松は言った

若松「辛いなら…言うな。余計に思いだすだろ?」

ミカ「……はい」

若松「それと…ごめん」

若松はミカにデイジーを返した
ミカにとってどれほどの価値のある物か理解したのだ

ミカ「…あ、ありがとうございます…っ」

ミカはデイジーを受け取り、若松の方を見る

若松「ごめんな、お前のことも知らずに人形を…。とても大事な物だったんだな」

ミカ「…いいえ…大丈夫です」

そう言うとミカは自分のカバンに両手を入れる
すると

…ガコンッ

若松「…おっ」

観覧車が再び動き出した

若松「ほっ…良かった。これで元に戻れるな」

ミカ「…そうですね」

ミカはそう言うと、カバンから何かを取り出した

若松に見られた、ダイナマイトだった

若松「え?」

ミカ「…先輩、ごめんなさい」

シュボッ!

ミカはダイナマイトに火をつけ、若松の頭の後ろにダイナマイトを回した

若松「…え⁉」

ミカ「…忘れてください…っ!僕が…こんなものを持っていたことを…っ!」

ドォンッ!






ーそれから5分後

観覧車の回りには救助隊が集まり、ミカと若松は救助された
教職員全員も心配して、全く怒られなかった
安心して、学校へと帰ったのであった

だが、若松には何か心残りがあった

若松(…何だっけな?あの三神っていうあの1年となんで一緒にいたんだろう…?)

なぜ今日1日ミカと一緒にいたか、全く思い出せずにいた

ミカ(ごめんなさい先輩…記憶を消すことが出来るダイナマイトを使って…。本当なら工藤さんにも使っていたけど、先輩の場合は“一瞬の出来事”だったからすぐに消せたんだ…)

ミカはそう思いながら心の中で謝罪をしていた



ー第5話 若松 孝司ー








○NEXT●

→ドクロ族と接触してしまった蝶!
蝶に魔の手が襲い、蓮は…⁉