アゲハ ~第1話 上野 美知瑠5~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



その後、静香は先生からの勧めで学校を早退した
また美知瑠も、お昼休みが終わるとすぐに早退した

蝶(…やっぱり何かあるんだな…)

学校が終わった蝶は、美知瑠と静香のことを考えながら家へと帰った

蝶「…ただいま」

哀幻波「お、お帰り」

蝶はまた店のドアから入ってしまった

哀幻波「また店のドアから…」

蝶「あ、ごめん…考え事してて…」

哀幻波「そういやついさっき、お前と同じ高校の女子が相談に来たぞ?」

蝶「え?誰?」

哀幻波「上野美知瑠っていう背が高い女子」

蝶「…え⁉」

美知瑠が来ていたことに驚いた蝶は、すぐに哀幻波に寄った

哀幻波「おおっ、どした…?」

蝶「何の悩みだったの…⁉」

哀幻波「え?なんで…?」

蝶「うちのクラスメートでここ最近従姉妹の子と揉めていたの!もしかしてそれ⁉」

哀幻波「…そうだけど?」

蝶「教えて!」

哀幻波「あぁ…」

哀幻波は蝶に美知瑠の悩みを話した

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美知瑠が店に来たのは1時半過ぎ
ちょうど昼休みが終わった時だ

美知瑠の悩みは、従姉妹のことだった

哀幻波「…今日のお悩みは?」

美知瑠「…い、従姉妹を…助けたいんです」

哀幻波「助けたい?」

美知瑠「…私の従姉妹は、大森静香って言って…あの“大森塾”の娘なんです」

哀幻波「あの名門の?」

哀幻波は聞いて驚いた

“大森塾”は厳しいが成績がよく上がったり、名大学へ行けたりするなど様々な成績を残してある
静香はその塾の塾長の娘だった

美知瑠「小さい頃からずっと机に向かって勉強勉強…バレーばっかの私とは全く正反対だったんです。勉強も出来て、学年でもトップで、塾長のおばさんもよく褒めてました」

哀幻波「へぇー」

美知瑠「…でも、高校受験で静香は失敗しちゃったんです。行けると思っていた名門女子高の受験でやりもしないケアレスミスをして…あと1点っていうところで落ちちゃったんです」

哀幻波「あ…そうだったんだ…」

美知瑠「それから…だと思うんです。今まで褒めていたおばさんが、急に静香に手を出すことになったのは…」

哀幻波「それ…虐待ってこと?」

美知瑠「前に静香がテストでいい点を取ったにも関わらず、おばさんが何回も叩いたところを見たんです。おばさんは罰だと言ってました。でも…それにしてはやり過ぎだと思ったんです」

哀幻波「…罰ね…」

美知瑠「おばさんが手を出すようになってからは静香も変わって…夜中の3時くらいまで勉強やったり、休み時間も、お昼休みも勉強ばっかりで…」

哀幻波「え?夜中の3時?」

美知瑠「はい…学校が無い休日は朝早くから夜中までやってるって言ってました。1問でも間違えたら…ご飯抜きとか、1日何も口にしてない時もあったって…」

哀幻波(やり過ぎだろ…!)

美知瑠「エスカレートする一方だと思った私は止めろって言ったんです。でも静香は聞いてくれなくて…それで喧嘩になったり、今日だって…“推薦で入ったくせに!”って言われちゃって…」

美知瑠の目に涙が溢れた
自分が言われたことももちろん、これ以上従姉妹が変わっていく姿も見たくないのだろう…

美知瑠「どうしたらいいんですか…?私は静香を助けたいのに…」

哀幻波「……分かりました」

哀幻波は答えを出す

哀幻波「…まずですね。その…従姉妹が心配だということは分かりました。ですが、あなたが首を突っ込んでいいとは思えません」

美知瑠「え…?」

哀幻波「これはあなたの家の問題ではなく、その従姉妹の家の問題でしょう?あなたが首を突っ込んで、何か起こるということはありませんよ?」

美知瑠「え?じゃあ…放っておけってことですか⁉」

哀幻波「ええ」

美知瑠「!な、なにそれ…⁉」

哀幻波「ただ…あなたが手助けをするという手もあります」

美知瑠「…え?」

哀幻波「まず、その大森さんのことを分かっているのでしょうか?何も考えずに止めろと言うのは逆効果ですよ。それでキレられるのは当たり前です」

美知瑠「あ…そっか…私何も…」

哀幻波「それに放っておけと言っても…大森さんがどう行動するかです。聞くところ、お母さんの言いなりになっている様に思えますし、自ら行動を起こさないと、一生変わることは出来ませんし、最悪の場合は病にかかりますよ」

美知瑠「わ、私はどうしたら…」

哀幻波「そうですね…まず、あなたが味方になってください。今あなたは大森さんにとって、敵ではないかと思われています。よく話し合って、和解して、大森さんの心を理解した上で助けてみてください。そして…大森さんのお母さんも理解させてあげてください」

美知瑠「あ…ありがとうございます…。でも出来なかったら…」

哀幻波「その時はまた…我々にお任せください」