創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



人質の安全確認のため、水と食料を持ち込む事が許されたが、持っていく者を誰にするかと考えていた
だがその立候補者に、克幸が手を上げた

教師「ま、待ってくれ天雨くん!君は…」

克幸「生徒会長として、後輩たちを安心させたいんです。行かせてください」

教師「だが、君は…」

克幸「天雨議員の息子、と言いたいですか?」

教師「…!」

克幸「そんなの関係ありませんよ。天雨議員の息子だからって、後輩を助けなくて良い理由なんてないでしょう?」

教師「気持ちは分かるが、それなら私が行った方が…」

宗方「おい、何モタモタしてんだ!早くそこのガキ、持ってこい!」

モタモタしていたせいで、宗方は痺れを切らしてしまった
克幸を指名され、これでは克幸と代わることが出来ない

鮮斗「くっ…!見てられるか!すぐにでも克幸様を…!」

サミュエル「おっと!待って!」

飛び出そうとする鮮斗をサミュエルがすぐに押さえる
それでも踠いて抜け出そうとする鮮斗

鮮斗「サム離してくれ!克幸様が!」

サミュエル「気持ちは分かるけど、今出てったら余計に刺激するだけだって!」

鮮斗「うおおおーーーっ!離せぇぇえーーーっ!」

炎「…何やってんだか」

通信機から聞こえてくる鮮斗の踠きに呆れてしまう
助けに行きたい気持ちは分かるが、人の目が多い
『アクアリウム』も流石に簡単に人前には出れない

千晴「克幸、気をつけて…」

克幸「…あぁ」

ご指名された克幸はダンボールに入った食料と水を台車に乗せて運び、宗方の元へと向かう
その間、何もされないか緊張が走る

宗方「天雨議員の息子自らが運んでくるとは、大したもんだな」

克幸「…他の生徒は?」

宗方「まずはボディーチェックと行こうか、余計なもん持ってたら殺すぞ?」

そう言い宗方は克幸の身体に触れる
抵抗もせず、克幸は大人しく両手を上げる
何も持っていないことを確認し、中へと運んでいく

鮮斗「ぐうぅ…!」

克幸の姿が見えなくなると、悔しさのあまり鮮斗は噛み締める
克幸は台車を押して、体育館へと向かう
その姿を、宗方は後ろから見張る

宗方(…そういやこいつ、どっかで見たことあるな。初めて会った気が…)

克幸「…!」

慎重に進んでいくと、体育館へと着いた

克幸「皆、大丈夫か?」

「あっ!生徒会長!」
「嘘っ!?本当に!?」
「生徒会長~!」

克幸が体育館に入ってきた瞬間、ワァァッ!と声が上がる
安心できたみたいだ
中には拘束されながらも克幸の元へと駆けつけようとした生徒もいたが、“烈怒羅夢”のメンバーに止められる

円「おやおや、まさか天雨議員のご子息様自らが食料を運んでくるとはね」

克幸(こいつがリーダーか…)

鹿島「おい、手の拘束解いてやれ。食べづらいだろう」

丸原「え?で、でも抵抗しませんか?」

宗方「すれば殺せばいいだけだ」

厚木「あ、天雨…」

克幸「!」

声をかけられ、振り向くとそこには怪我を負った教師の厚木の姿があった
腕は応急処置を受けて包帯を巻いているが、酷い怪我だと分かり、厚木の元へと駆けつける

克幸「先生!大丈夫ですか!?」

厚木「…すまんな、俺が付いていながら…」

克幸「すぐに治療しないと…先生を病院へ!」

円「は?何言ってんの?する訳無いでしょ?」

克幸の後を追って、円が近付く
突然の提案を円は否定する

円「大事な人質を逃がす訳にはいかないからな」

克幸「だが、これだと先生は…」

円「あ?何?」

厚木「あ、天雨…俺は大丈夫だ…、うっ…!」

心配させないと厚木は言うが、顔色が悪い
この状態で長時間人質にされているため、いくら教師でも限界が来ている
放っておけないと思った克幸は、円にある提案をした

克幸「だったら…俺が人質になる」

円「何?」

ゆに「え!?」

真緒「嘘…でしょ…!?」

克幸から思わぬ発言が出たことで、生徒達全員はざわつく
だがすぐ円が銃を向けて、黙らせる

円「お前…俺に条件出せる立場だと思ってんの?議員の息子だか知らないけどさぁ、あんま舐めてるとこいつら殺すよ?」

克幸「…俺は天雨議員の息子以前に、この千鳥工業高等学校の生徒会長だ。生徒はもちろん、大怪我をしている先生の事を、放っておくなんて出来ない」

厚木「天雨…」

克幸「この学校の生徒も教師も救えるのなら、俺の命を差し出すなんて簡単だ。後は煮るなり焼くなり好きにしたっていい」

多部「煮ル?焼ク?」

鹿島「そう言う意味じゃない」

料理用語に反応したのか、多部はどこからか調理道具を取り出した
すぐしまうようにと、鹿島は言う

円「ふーん…驚いたな。今時の学生はしっかりしてるね。俺が出会った学生は、生意気なのが多かったのに」

克幸「え?」

円「いーよ?お望み通り、先公と交代。分かってると思うが、下手な真似すると殺すからね?」

克幸「!…あぁ」

ゆに「会長…っ」