最近、カエサルの象コインをオークションで手に入れたので紹介します。
2つ入札していて、どっちか落札出来たらいいなと思っていたら両方落とせていました。
■TKC017 Crawford 443/1
デナリウス / 銀貨
発行者:ガイウス・ユリウス・カエサル / Gaius Julius Caesar
発行年:前49年
発行地:軍営随伴造幣(カエサル遠征軍)
重量:3.23 g
サイズ:18.7mm
ダイ軸(Die Axis):11h
状態:GVF
表銘文
CAESAR
「カエサル」
図像(表)
右進する象が、角を持つ蛇を踏みつける図。
→ 象は力・威厳・不可避の支配を象徴し、カエサル自身を表す存在。踏みつけられる角ある蛇は、しばしばグナエウス・ポンペイウスおよび元老院派(旧体制)を象徴すると解釈される。名前を出さず象徴のみで敵を示す、極めて洗練された内戦プロパガンダ表現。
裏銘文
銘文なし
図像(裏)
司祭職の標章(シンプルム、アスペルギルム、セクリス、アペクス)。
→ カエサルが最高神祇官(Pontifex Maximus)であることを示し、軍事的正当性だけでなく宗教的権威も併せ持つ存在であることを強調。
TKC017デナリウス/銀貨
発行者:ガイウス・ユリウス・カエサル / Gaius Julius Caesar
発行年:前49年
発行地:軍事移動造幣(カエサル随伴ミント)
重量:3.24 g
サイズ:18mm
ダイ軸(Die Axis):5h
状態:VF
表銘文
CAESAR
「カエサル」
図像(表)
右進する象が、角を持つ蛇を踏みつける図。
→ 象は力・威厳・不可避の支配を象徴し、カエサル自身を表す存在。踏みつけられる角ある蛇は、しばしばグナエウス・ポンペイウスおよび元老院派(旧体制)を象徴すると解釈される。名前を出さず象徴のみで敵を示す、極めて洗練された内戦プロパガンダ表現。
裏銘文
銘文なし
図像(裏)
司祭職の標章(シンプルム、アスペルギルム、セクリス、アペクス)。
→ カエサルが最高神祇官(Pontifex Maximus)であることを示し、軍事的正当性だけでなく宗教的権威も併せ持つ存在であることを強調。
TKC017
ユリウス・カエサルは、共和政ローマが生んだ最後にして最大の英雄である。
彼の出自は名門だったが、力を失った家系だった。
ユリウス氏族は古く、神話的な血統を誇りはしたが、現実の政治では決して強くなかった。
若きカエサルには、頼れる地盤も、確実な後ろ盾もなかった。
だから彼は、人を掴み、動き、前に出続けるしかなかった。
借金を恐れず、評判を恐れず、失敗を恐れなかった。
破綻寸前の借金を抱えながらも、「大きな地位を得てこそ返せる」と言い切った男に、凡庸さは最初から存在しない。
その才覚を最初に見抜いたのが、クラッススだった。
そして危険を感じつつも、殺さなかったのがスッラだった。
若きカエサルは、すでに特別な雰囲気を持っていた。
しかしカエサルが台頭するのは意外と遅い。
年齢で言えば40歳を超えてからだ。
そのカエサルを英雄へと押し上げたのは、ガリア遠征である。
前58年から50年。
彼はローマの辺境で、戦い、統治し、書いた。
戦場では冷静で、判断は早く、勝つときは徹底的に勝ち、負ける前に必ず手を打った。
だが、彼の本当の強さは剣ではない。
彼は戦争を「ローマ市民にどう見せるか」を知っていた。
『ガリア戦記』は、単なる戦争記録ではない。
あれは、英雄叙事詩を装った政治文書だ。
敵は勇敢だが野蛮、自分は冷静で合理的、常に防衛と秩序のために戦っている。
そう語ることで、カエサルは軍の忠誠と市民の支持を同時に手に入れた。
この時点で、彼はすでに「ただの将軍」ではなかった。
内戦は避けられなかった。
だが、カエサルはそれを望んだわけではない。
ポンペイウスは敵ではなかった。
むしろ、理解者であり、理想的な相棒だった。
娘ユリアの死と、クラッススの戦死が、二人をつなぐ最後の糸を断ち切った。
制度の中で守ろうとする者と、制度を越えて動ける者。
その差が、ローマを割った。
ルビコン川を渡った瞬間、カエサルは賭けに出た。
だがそれは、激情ではない。
彼は知っていた。
戻れば破滅、進めば未来があることを。
内戦でのカエサルは、容赦なかった。
だが、復讐はしなかった。
敵を赦し、旧敵を登用し、敗者を再びローマに組み込んだ。
勝者の寛容は、彼が単なる軍人ではなく、国家を構想していた証拠でもある。
そして彼は、ついに一線を越える。
生きたまま、自分の顔をコインに刻んだ。
それは傲慢だったかもしれない。
だが同時に、「もう誰の名を借りる必要もない」
という宣言でもあった。
終身独裁官。
その称号は、王ではなく、ローマを終わらせないための最後の形だったのかもしれない。
だが、彼は早すぎた。
共和政の言葉で語り続けた男が、共和政の限界そのものになってしまった。
前44年3月15日。
三月のイドゥスの日。
刃を向けた者たちは、ローマを救ったつもりだった。
だが、救ったのは理念だけで、現実ではなかった。
カエサルの死は、共和政を蘇らせなかった。
むしろ、「もう彼なしでは回らない」という事実を暴露しただけだった。
彼の名は称号となり、彼の養子は皇帝となり、ローマは帝国へ変わる。
■TKC017 Crawford 458/1(売却済)

デナリウス / 銀貨
発行者:ガイウス・ユリウス・カエサル(Gaius Julius Caesar)
発行年:紀元前48–47年頃、北アフリカの軍事造幣所(行軍造幣)
重量:3.06 g
サイズ:17 mm
ダイ軸(Die Axis):6h
状態:VF-
表銘文
(無銘)
図像(表)
女神ウェヌス(Venus)の頭像、右向き、冠を戴く。
→ カエサルの家系(gens Julia)は女神ウェヌスを祖とするとされ、この肖像はカエサル自身の神的血統を暗示する。
裏銘文
CAESAR(右縦書き)
図像(裏)
アエネアス(Aeneas)が左に進み、肩に父アンキセス(Anchises)を担ぎ、右手にパラディウム(女神ミネルウァ像)を携える。
→ ローマ建国神話における英雄アエネアスは、ウェヌスの子であり、この図像はカエサル家がトロイアの血統(=神聖な起源)を受け継ぐことを示す。
ユリウス・カエサルは、ローマを救おうとして、ローマを次の形へ変えてしまった英雄だった。
だからこそ、彼のコインを手にすると、
ローマの運命に触れている気がする。




