夜中(といっても当時は10時くらい…)に帰宅した父が、
レコードの針を慎重に落とし、隣近所に迷惑な音量で、
このレコードを何度もかけた。
酔っていたのだろうね…
ごきげんに、せまい部屋でスイングしながら。
母は小さな声で、どやしつけていた。
おかしいけれど、大声で怒鳴ったら近所迷惑に拍車がかかるから、
小声で「静かにしろ、やめろ」と怒鳴っていたんだよね。
当時は高かったであろう真空管のアンプと、
小さいけれど高性能な山水(sansui)のスピーカー。
1960年代、ジャズに憧れプロトランペッターになった彼の道楽はすごかった。
風呂屋の月賦(ローン)取り立てがくると、息をひそめ居留守を使っていたのに、
高級な音響製品は揃っていて、確かカローラにも乗っていたかと思う。
『イパネマの娘』が大ヒットして有名だったけれど、
私はアストラッド・ジルベルトが歌う『コルコヴァド』が好きだった。
特に ♪Oh how lovely ってとこが。
Quiet night of quiet stars
Quiet chords from my guitar
Floating on the silence
that surrounds us
Quiet thoughts and quiet dreams
Quiet walks by quiet streams
And the window that looks out
on Corcovado, Oh how lovely…
特にこの「 ♪Oh how lovely」ってとこが。
『ワン・ノート・サンバ』では、
難しい音階で歌うとこが好きで、子どもの頃はバツグンな音程で歌えた。
歌のタイトルも歌詞も知らないのに、音だけはソラで言えた。
今は何もかもが衰えてしまったけれど、
耳が肥えたのは、この時代のおかげだと思う。
古きよき時代を偲んで、大人になってからCDを探した。
なぜだか、あの懐かしい『ゲッツ・オー・ゴー・ゴー』は探せず、
聞き覚えのある曲ばかりが入っているゲッツ／ジルベルトを手に入れた。
でも『ワン・ノート・サンバ』は入っていなくて…
探していくつか買ったものの、
タイトルがわからないので、結局出会うことはできず。。。
6/5にボサノバの女王 アストラッド・ジルベルトが亡くなったという。
享年83歳。
寂しいニュースに「またひとつ、歴史が消えたな…」と。
『ワン・ノート・サンバ』をどこかで手に入れておこうか。
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