南武線のジェントルマン | アロマ&心理カウンセリング 心とからだのセルフケア @東京 調布

アロマ&心理カウンセリング 心とからだのセルフケア @東京 調布

心とからだの健康はセルフケアから。セルフ・カウンセリング、AEAJアロマテラピーアドバイザー・アロマハンドセラピスト資格認定教室 アロマシオン主宰
セラピストのためのweb制作も承ります。アロマ、カウンセリング、自然療法、Web制作のこと語ります

他のブログで、電車にまつわる不定期エッセイ「井の頭線物語り」を書いています。

今日は、その一編をこちらでも…



夕刻の南武線はとても混んでいた。
学生さん、帰宅する会社員。
家路へ急ぐお父さん、お母さん、おじさん、おばさん。
そして…
もみくちゃにされた車内での異変は、乗ってから数分で起きた。
私に背を向けた初老の男性の正面に、少し小太りな若い青年がいた。
彼は、優先席付近の手摺りを握り、
ぎゅうぎゅう詰めの車内で身体震わせている。
人の隙間から足元を見ると、どうにもおぼつかない。
うっ…酔ってるのかな?

倒れまいとしながら、足元はぴくぴくと痙攣している。
重たそうな身体を支えようと手摺りを握りなおしているが、
混雑の中、身体を立て直すのが精一杯なようすだ。
少しの間、様子を見ていたが、だんだんと態勢を崩し、
その場に倒れかけた。

私の前の初老の男性の目にも、それは映っていた。
初老の男性が「あぁ…」と青年に手を貸そうと声を発すると同時に、
私もその青年の背中に手を伸ばし「大丈夫?具合悪いの?」と声をかけていた。
すると青年は背を向けたまま「脚が悪いんです…」と小さな声で答えた。

私は、やや大きな声で
「脚が悪いのね。」
「誰か座らせてくれれば良いんだけど…」と言った。
すると、初老の男性は「どこまで行くの?」と青年に聞いた。
青年は「立川です」と答えると、続けて初老の男性は、
「立川は遠いいなぁ…誰か座らせてくれると良いなぁ」と、
誰に言うともなしに、優先席を探った。

私から優先席は見えなかったが、初老の男性からは見える位置だった。
ややして、優先席付近に動きがあり、おじさんが席を譲ってくれた。
席に着くのも一苦労な混雑だったが、初老の男性の手助けもあり、
青年は無事、席に着くことができた。

青年が落ち着くと、初老の男性は、私を振り返り会釈をし、
席を譲ってくれたおじさんにも「ありがとう」と言った。
数駅過ぎた所で、初老の男性は、降りて行った。

降り際にもおじさんに「ありがとうございました」と、
爽やかに挨拶をして。