そのスペインの彼からメッセージが
来るのは、いつも突然で。
すっかり忘れた頃に、
それは、唐突にやってくる。
しかも、ふとした思いつき?
みたいな感じの短い一言。
それこそ、「tweet(つぶやき)」
みたいな一言が。
それに私は、適当に
一言、返事を返す。
そんな程度のお付き合いだった。
だから私たちは。
お互いのことは、ほとんど
知らなかった。
私も、自分のことを話すつもりも
なかったし。
相手のことを訊くつもりも、
なかった。
おそらく彼は。
ツイッター上での、暇つぶし程度で、
やっているのだろうと。
そう思っていたのだ。
*******
それがある日。
彼からまた突然、メールが届いた。
「今、日本に来ているので、
会いませんか?」
・・・と。
日本に来てる???
マジで???
・・・と。
いつものことだったけど、
それもあまりに唐突だったので、
最初は、冗談なのかと思った。
それにものすごく、
胡散臭く感じてしまった(苦笑)
会う。。。って。
さすがにそれは、、、と思い、
やんわり、断った。
「言葉に自信がないので」
・・・と。
すると、彼は。
「日本人のガールフレンドを一緒に
連れていくから、安心して。
彼女の連絡先を教えるから、
心配なら、彼女と話してみてね」
・・・と言ったのだった。
日本人のガールフレンド???
・・・と。
ますます、謎に感じて。
だから。
どこかでは、「怪しすぎる」と
思っていたのだけど。
でも少し、好奇心も湧いてきた。
なぜなら彼は。
ウイングメーカー・ファン。
しかも、スペイン人って。
私はそれまで、スペインの人とは
知り合いになったことが
なかったので。
スペインの人って、
どういう感じなのか?
・・・という興味もあった。
あのジェームズも、スペインで
生まれ育った人だったし。
いつぞやのセールスのおばちゃん曰く、
私には、「絶対に!」スペインの血が、
入っているらしいし(爆)
まぁ、最後のは冗談だけれども(笑)
そうやってそれまでも、
何かと気になっていたスペイン。
彼がそのスペイン人で、
しかも、ウイングメーカー・ファン
であるということは。
私の興味を引くには十分で。
警戒心よりも、
好奇心のほうが上回ってしまった。
彼が教えてくれた、その
日本人の彼女と、少しだけ、
メールで遣り取りして。
なんだか、大丈夫そうだ。。。と。
そういう気持ちになったので。
私は。。。
都内で、彼らと会うことにした。。。
*******
実際に会ってみると。
彼らは、普通の。。。
ちゃんとした人たちで。
私もホッとした。
スペインの彼は、最近日本に来て、
そして彼女と出会い。
すぐに、意気投合したようだった。
その詳しい経緯も聞いたのだけど、
忘れてしまった(苦笑)
彼女のほうは、カナダ人の旦那さんと
離婚したばかりで。
娘さんがひとりいるらしい。。。
だから、英語はペラペラだった。
なんだか。。。
まだ、付き合いたてのラブラブの
二人と一緒にそこにいるのが。
ちょっと。
居たたまれなかったりもした(苦笑)
スペインの彼は、
背が高くて、イケメンだった。
私は。
自分自身も背が高いほうだし。
父も弟も、180センチ以上ある。
父方の従兄弟、従姉妹もみんな、
大きい。
そんな中で育ったせいか。
背が高い人と一緒にいると、
なんだか、身内感を感じてしまう
ところがあるようで。。。
背がとても高くて。。。
スラッとした長い手足をした
スペインの彼を見ていたら。
父を思い出した。
そう言えば。
父の体型って。
やっぱり、西洋人っぽかったよな。と。
改めて思ったりしていた。。。
*******
スペインの彼は私よりも随分若く。。。
もう、ハッキリとは覚えて
いないのだけど、たしか。
ひと回り近く年下だったような。
そのくらいの歳の差があると、
彼に伝えると。
彼は随分と驚いていたので。
西洋の人からすると、
日本人というのは、やっぱり、
実年齢よりも幼く見えるもの
なんだなぁ。。。と。
つくづく思った。。。
20歳過ぎてからも。
海外でお酒を買おうとすると、
必ず、パスポートの提示を
求められたっけ。。。と。
そんなことをふと。
思い出したりした。
昔の私は。。。
30代とか、40代の前半頃
くらいまでは。。。
実年齢よりも、若く見られたり
するのは、嬉しかったし。
見た目はいつまでも、
若々しくありたい。と。
そんな風に思っていたものだ。
でも、ある頃から。。。
少しずつ、考え方が変わっていき。
スペインの彼と会ったあの頃は、
ちょうど、そんなことについても、
あれこれ考え始めるように
なった頃でもあったと思う。。。
「年相応」とは?
・・・みたいなことを。
よく、考えるようになっていた。。。
そのせいか。。。
ひと回り近くも年下の人に、
自分と同じくらいの歳だと思われることは。
どこかでは嬉しくて。
どこかでは、微妙。みたいな。
そういう、複雑な思いが
芽生え始めてきていた頃でもあった。
私の実年齢を知って、
驚いたような顔をしていた彼に。。。
「やっぱり、スペインでもみんな。
若く見られたいと思っていたりする?」
・・・と訊いたら、彼は。
「それは、もちろん」
・・・と、答えた。
「でもね。見た目があまりに若いと、
すごい年下の子からも、完全に、
同等扱いしかされなかったりするよ?」
・・・と言ったら、彼はなんだか、
ものすごく納得した顔をしていた。
*******
もう、ほとんど
うろ覚えなのだけど。。。
たしかあの時彼は。。。
「探していた」
・・・と、言っていたような気がする。。。
彼が探していたのは。
「本物のウイングメーカー・ファン」
・・・だったのだろうな。と。
彼の言葉の節々から。
私はなんとなく、察した。
なにせ。
彼との会話のほとんどが。
彼のガールフレンドの通訳を
介してだったし。
その彼女は。
ウイングメーカーのことなんて、
微塵も知らない人だったから(笑)
意思の疎通が。。。
いろいろ難しかった。
スペインの彼も。。。
今、彼女にウイングメーカーのことを、
あれこれ伝授中だ。。。と。
そう言っていたけど。
私は心の中で。
「それはきっと。
無駄な努力に終わるだろうな」
・・・と。
そう思っていた(苦笑)
彼女が云々。ではなく。
ウイングメーカーの世界というものが、
「人を選ぶ」ということを。
私はよく知っていたから。
そこに食いつく人は、
何もしなくても、勝手に食いつくし。
そうでない人には、たとえ、
「布教」とか「伝道」をしたところで。
意味ないのだ。
スペインの彼は。
実は以前に、どこかの国の、
ひとりのウイングメーカー・ファンの
女性(だったかな?)に、
実際に会って。。。
話をしたことがあったようだけど。
彼女はちょっと、
何かが違っていた。。。と。
そう言っていた。
私は彼が。
何を言いたいのか。
なんだかすごく、
よく解ったのだけど。
それを彼にちゃんと
伝えることが出来たかどうかは、
自信ない。
「うん、あなたの言いたいことは、
なんとなく解るよ」
・・・としか、言えなかったから。
そして多分。
彼は。
私と話していてもやっぱり、
「それ」を感じることは出来なかった
のではないのかな。。。と。
そんな気がした。
探し物を見つけるために、
はるばる日本まで来てくれたのかも
しれないのに。
なんだか、期待外れで
ごめんなさい。。。と(苦笑)
心の中で、謝った。
いや。
口に出して言ったのだったかな?
そのあたりももう。。。
忘れてしまったけど。。。
そこには、「言葉の壁」があって。
こんな、せっかくの機会なのに。
肝心なところは、何も話せない。。。
何も伝えられない。。。と。
私も。。。
そういうジレンマを抱えながら。
でも、そのジレンマを。
私はまったく、表情には
出さずにいた。。。
ガールフレンドの彼女は。。。
「私に構わず、ウイングメーカーの
話をしてください。
ちゃんと、伝えますから」
・・・と言ってくれていたけど。
それでもやっぱり、
気は遣うものだ。。。
だって。
初対面なのだから。。。
海外の人と。。。
スペインの人と。
日本人とはおそらく、
価値観も違うだろうから。
だから。
もっと、ウイングメーカーの
深い話をしたかった。。。
スペインの彼が。
どういう風に物を見たり。
どういう風に感じたりするのか。
そういうことをもっと、
知りたかった。
でも。
通訳を介してでは。。。
それが出来ないこと。
それがすごく。
もどかしく。。。
だから私は、途中から。。。
もう、諦めていたな。
ちゃんと、語り合うことを。
せっかくのこの機会を。。。
すごく。
もったいない。。。と。
そう思いながらも。。。
*******
片言の英語でも。。。
ミシャールの時のように、
ダンスでなら。
それでも、なんとかなったけど。。。
今回はやっぱり。。。
「片言の英語」では。
無理だ。。。と。
自分の英会話力を呪った(苦笑)
あれがキッカケで私はその後。
また、英会話を習うことを考え始める
ようになったのだけど。
まぁ、あとになってみれば。
いろんなことが繋がっていたな。と。
そう思う。
あの日。。。
早々に、「深い会話」を諦めた私は。
そのあとはもう。。。
始終、たわいのない。。。
どうでもいいような会話を、
していた気がする。。。
*******
つづく