映画「商店街な人」の主題歌は理事の吉田理恵の作品です。
彼女は東京大田区で被災した一人です。
ものづくりの
お涙頂戴ではありませんが、彼女が2週間飲まず食わずで
命がけで作った音楽です。
ただネガティブではなく自分自身を含め 被災された方に
希望をもたらす音になっていると思います。
是非お聞きください。



以下彼女から 上映会当日に彼女からスタッフに届いた
メッセージです。

私の会社はこの度の地震で本社スタジオが被災しました。

高層階で、関係者以外立入禁止の機器ぎゅうぎゅうの電子要塞が、
ただの瓦礫になりました。
地震当初はまだ被害の深刻さを把握しておらず、
メーリングリストでチャリティーしようと書く余裕があったのですが、
2週間くらい瓦礫を片付けながら、日に日に機材損壊の大きさが判明していきました。

毎日ニュースで死亡者数が増えているのと比例するかのように
死んだ機材を次々発見する度に呆然とし、
うちの会社もトドメを刺されてしまったと思いました。

が、避難所生活の人々と同じ空の下で耐えていこう、
という気持ちで、残った1割の壊れかけた機材で
また一から映画音楽を作り始めました。

残ったシステムは10分の1、
動作不良になった機材を使用するので
作業にかかる時間は10倍以上、ということで、
作った音楽を映像にはめ込む作業の日までに間に合わせるには、
一日中音楽だけ作っていても
10日以上は寝れない計算になり、
体と頭がいつまで持つかとも思いました。

でもこの時もまた、
被爆覚悟で原発に放水する東京消防庁のニュースを見てしまい、
この人達に比べたら、少々体壊すくらい別にいいや、
と覚悟して作業に入りました。

(なのに、普段の仕事よりチープな音しかでない機材しか残らりませんでしたが)

被災後2週間は、これから何をどう頑張ればいいのかわかりませんでした。

スタジオにある製品検証システムまで損壊し、
うちの製造事業が完全ストップしたからです。

映像を見ながら登場人物の動きに合わせて
音楽を作曲していく作業をしている間、
映画の中で製造業社長の私が、

世界進出します、という話をしているシーンがあり、
ここの音楽を作るのは特に辛かったです。

なぜなら、本当はこの夏に
、映画のシーンのインタビュー通りに海外進出するはずでしたが、

この度の機材損壊によって、それも全てなくなってしまい、
「あ~、このシーン、嘘になっちゃったなあ」と。
正直、今もまだ、これからどうしたらいいか目処が立っていません。


何をすればいいかわからなかったから、
目の前にあった映画音楽制作作業が逆にありがたかったとも言えます。

この音楽制作は一生忘れないものになりました。

被災し、被災者に励まされながら、
もうだめだと思ったり命だけはあって良かったと思ったり、
地震後リアルな自分の絶望から希望までの道のりが
「商店街な人」の音楽で作ったストーリーになりました。

エンドロールの主題歌、歌詞もできていますが、
自分の歌のレコーディングが間に合わなかったので、
エンドロールでは歌メロを楽器でやっています。

でも、東京で被災してどん底、
そして被災地の人達と同じ空の下で
一緒に耐え抜こうという気持ちを書き、

それぞれの場所で大好きな自分の町の未来をみんなで作ろう、
という内容が折り重なった作品になりました。

早く聴いてもらいたくて、
カラオケ持って今日自分で歌っちゃおうか!?
と思ったくらいです(笑)。
そのうちみんなで歌えるといいですね。

御披露目直前になりましたが、
この音楽は被災による絶望からの復興そのものです。