(1)オセアニア系の定義について

 

プロの血統評論家はオセアニア系あるいはオーストラリア系という言葉を使っていない。

 

水上勉などは「日本産のオセアニア牝系」という言葉で解説している。

 

たとえば、ビービーガルダンなどがその例になる。

 

 

 

 

「日本産のオセアニア牝系(馬)」という表記が正確ではある。

 

これからは、このブログでも日本で生産された馬で母や母父にオセアニア産の馬については、この表記を用いることにしたい。

 

一方、オーストラリアやニュージーランド産の外国馬が日本のG1競走に招待されて優勝することがある。

 

(サイレントウィットネス、テイクオーバーターゲット、ウルトラファンタジー、フェアリーキングプローンなど)

 

これらの外国産と「日本産のオセアニア牝系」を合わせてオセアニア系と呼ぶことにする。

 

2019年のスプリンターズステークスと2020年の高松宮記念ともに2着であったビービーガルダンの母オールザチャットはニュージーランド産馬。

 

(2)「オセアニア系」という言葉の持つ誤解

 

今日取り上げるのは、「日本産のオセアニア牝系馬」になる。

 

考察の対象はリバティアイランド、ジャスティンミラノ、ドゥレッツァの3頭になる。

 

まず、私がこのブログで使っている「オセアニア系」という言葉は誤解が多い言葉だ。

 

以前、シリーズで取り上げた「アルゼンチン系」の馬と同列に扱われやすい。

 

「アルゼンチン系」の馬といえば、サトノダイヤモンド、マカヒキ、ダノンファンタジーなどで、これらの馬は母系が何代にもわたってアルゼンチン産の血脈を受け継いでいる。

 

早熟、仕上がり早で3歳の早い時期から活躍し、2歳・3歳の重賞レースに強いという特徴を持つ。

 

これは、繁殖時期が北半球より半年早いという地理的な特徴を持つことに起因する。

 

同じ南半球でも「日本産のオセアニア牝系馬」にも早熟、仕上がり早という共通点があるが、その理由は「アルゼンチン系」とはやや異なる。

 

何より、「日本産のオセアニア牝系馬」の母系をたどると、アルゼンチン系のように何代もオセアニア産で遡れる馬は少ない。

 

次章では、5代血統表で詳細を見てみよう。

 

(3)純然たるオセアニア牝系血統は日本にはいない

 

 

●リバティアイランド5代血統表

 

上はリバティアイランドの5代血統表になる。

 

母のヤンキーローズと母父All American、祖母Condesaarまではオーストラリア産だが、3代母Condescendanceはアメリカ産。

 

3代遡ると、いずれもアメリカ産かイギリス産で、オーストラリア生産馬は2代で切れてしまう。

 

●ジャスティンミラノ5代血統表

 

ジャスティンミラノに至っては、オーストリア産は母父(Exceed And Excel)のみ。

 

Exceed And Excelの父デインヒルはアメリカの種牡馬だ。

 

 

 

そしてExceed And Excelの産駒マーゴットディドはアイルランド生まれでイギリスで活躍した牝馬で、この馬から生まれたのがジャスティンミラノということになる。

 

●ドゥレッツァの5代血統表

 

 

今日の天皇賞に出走予定のドゥレッツァも、リバティアイランドと同様に母モアザンセイクリッド、祖母Danalagaまでがオーストリア産で、母父More Than Readyはアメリカ産。

 

 

3代目以降はアメリカ、カナダ、アイルランドといった欧米の主要馬産地の生産となる。

 

こうしてみてきたように、「日本産のオセアニア牝系馬」と言っても、たかだか2代遡るだけで、その本質は欧米の血流がメインということがわかった。

 

それでは、近年、なぜ「日本産のオセアニア牝系馬」の日本での活躍が目立つのだろうか。

 

その理由を次章で探る。


(4)日本産のオセアニア牝系馬が活躍する理由

 

理由の第一に、オーストリア、ニュージーランドの競馬はスプリント戦が質・量ともに大きな比重を占めていること。

 

多くのオセアニア産馬が1200~1600mの距離適性を目標に生産され、スプリント仕様に調教されている。

 

さらに、このような名スプリンターが多数出走するレースで揉まれた結果、オーストリアのG1競走で優勝する。

 

このような経緯を経て豊かなスピード値を持つ血がスクリーニングされる。

 

金持ち日本はこのようなオセアニア系スプリンターの繁殖牝馬を輸入して、日本のサンデー系種牡馬と掛け合わせた結果、リバティアイランドやジャスティンミラノといったG1馬を輩出することになる。

 

「日本産のオセアニア牝系馬」が活躍する理由には実はもうひとつある。

 

これは今年(2024年)の社台・サンデーの1口馬主の選馬と合わせて、有料記事で配信しようと思う。

 

興味のある方は、よろしくお願いいたします。