1口馬主のクラブが増えた。

会員も急増している。

だからクラブで1口に出資している有名人も多い。

カンニングの竹山や司会者の草野仁、音楽家の平尾昌晃。

最近では、アルアインで皐月賞を勝った山本昌(本名山本昌広)などが知られています。

今回取り上げるのは、将棋の渡辺明です。

2004年から(第17期)2012年まで、2015年から2016年までと計11期竜王に在位し

永世竜王の称号を持つ将棋界の強豪です。

彼は競馬好きとしても有名で、社台・サンデーの1口クラブにも入会していて、

2歳時に重賞アルテミスステークスを勝ったマーブルカテドラルが代表出資馬とのこと。

 

結論から書くと、私は渡辺明永世竜王が嫌いです。

なぜか。

皆さんは「三浦弘行九段将棋ソフト不正事件」をご存知でしょうか。

これは2017年に将棋の竜王戦挑戦者に決まった三浦九段の指し手が

将棋ソフトと一致しているということで、

将棋連盟が三浦九段の竜王戦挑戦権をはく奪した事件です。

この三浦疑惑を最初に日本将棋連盟の幹部に訴えたのが

渡辺明竜王(当時)だからです。

その後、専門家の調査によって三浦九段の冤罪が証明されましたが、

きっかけを作った渡辺明永世竜王は何のお咎めもなし。

ただし、三浦九段に対しては連盟と渡辺明永世竜王から謝罪がなされ、

連盟からの慰謝料(金額は未公表)も支払われたということで、

事件は一件落着しています。

だから、この場で事件を蒸し返したり、永世竜王に対する批判、非難をしても

今さら仕方ないので封印します。

また、渡辺明永世竜王の露出度は高い。

ここで書いても、多くの人がご存じのことと思います。

そこで、一般にはあまり知られていない

三浦弘行九段について少し書いてみたいと思います。

 

今年、永世7冠を達成した羽生善治氏が国民栄誉賞を受賞されました。

7冠とは、将棋界のビッグタイトルである

名人、竜王、棋聖、棋王、王将、王位、王座の7つです。

羽生氏は1996年にこの7冠を独占して、大きな話題を集めたことがあります。

三浦弘行九段は、この1996年の棋聖戦で挑戦者となり、

羽生7冠を破って初のタイトルを獲得し、

羽生から1冠を奪取して牙城を崩した。

羽生を破った男として、当時、有名になりました。

そして、現在もプロの一部のトップ棋士しかなることができない

A級棋士として活躍しています。

 

私が個人的に三浦九段に興味を持っているのは、その変人ぶりです。

一番印象的に思ったのは、若いころのエピソードです。

「海辺の旅館で対局して、夜、眠れなかった事件」とでも名付けましょうか。

なぜ眠れなかったのか。

三浦九段いわく。

幽霊が出るから。

ところが、あとでよく調べてみると、幽霊ではなかった。

群馬県出身の三浦九段は将棋の勉強ばかりで今まで海を見たことがなかった。

部屋で寝ていて、打ち寄せる波の音を幽霊と勘違いしたようなのです。

この話は、NHK杯の解説で米長邦雄氏が話していたものです。

このときから、私は三浦九段のキャラが気に入りました。

変人が多い将棋界の中でも、三浦九段は人づきあいをあまり好まず、

自宅で一人で研究に打ち込むタイプのようです。

これに対して、渡辺明永世竜王らは仲間と研究会を作り集まったり、

フットサルで遊んだりと、社交的なようです。

こうした事情から、三浦九段との確執が以前からあったように聞きます。

不正ソフト事件も、こうした人間関係も背景にあるかと考えられます。

 

さて、3月2日、将棋のA級順位戦では、

事件の当事者同士の渡辺明永世竜王と三浦九段との対局が行われました。

今年は星が拮抗し、両者の残留をかけた戦いでしたが、

見事、三浦九段が勝利し、A級順位に踏みとどまりました。

破れた渡辺明永世竜王はB1級に陥落してしまいました。

将棋界の最高峰である名人位はこのA級からしか挑戦できない。

A級順位戦というのは棋界ではそれほど重要な1戦です。

この戦いに勝利して、三浦九段は去年の災難の原因を作った渡辺明永世竜王に対して

将棋で決着をつけました。

渡辺嫌い、三浦押しの私としては、まことに胸がすく結果でした。

 

「三浦弘行九段将棋ソフト不正事件」をきっかけに、

それまでは食事休憩で外食が許されていたのが禁止となり、食事は原則、出前のみ。

これが幸いとなった。

去年、公式戦29連勝の新記録を樹立した藤井聡太四段(当時)が

話題となったことは皆さんもご存じでしょうが、

藤井さんの昼食が「将棋メシ」として注目され、ドラマにもなり、

将棋を知らないファンからも注目を集めることとなります。

また、加藤一二三九段がひふみんの愛称でメディアで愛玩されたのも明るい話題でした。

将棋界も、事件の暗い影は一掃されて、

いい方向に進んでいることは、ファンの一人として何よりのことです。

 

話は競馬ではなく、すっかり将棋の話題にそれてしまったので、最後に一言。

将棋の世界では有り余る才能を発揮している渡辺明永世竜王ですが、

1口馬主の世界では、結果はまだまだのようです。

天は二物を与えず、とはよく言ったものです。