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アロウのノート

このブログでは主に、
ゲーム【 MONSTER HUNTER 】(通称モンハン)
を題材とした小説を掲載していきます。

内容としては、
作中で言及されていない未知の部分に
独自の解釈を加え展開していく
“ファンタジー色の強いMONSTER HUNTER”といった形になります。


またpixivにて
同物語をポケ●トモンスター赤緑
ぐらいの違いで描いた作品を掲載してく目論みです。
http://pixiv.me/deuteros


“第一章『運命の始まり』”を除き、
同題名の部分には違いを持たせないので、
「あ、このタイトル知らないな」
と思ったら読んでいただけると私が喜びます。




……………………………………………………………………


MONSTER HUNTER Lost Anotherまる




第一章:『運命の始まり』

┣第一節“アリマ=ヴォルケン”【赤依ノ詩篇】(1/2) ,(2/2)
┣第二節“リセシアス=マクレイン”【赤依ノ詩篇】
┣第三節“四人の出逢い”【赤依ノ詩篇】
┣第四節“風とチーズ”【赤依ノ詩篇】
┣第五節“ハンター・リセ”【赤依ノ詩篇】
┣第六節“背を預けられぬ男”【赤依ノ詩篇】
┃└第六節“【白依ノ詩篇】
┣第七節“レイシャの瞳”【赤依ノ詩篇】
┣第八節“始まりの狩人-Ancestor of Hunt-”【赤依ノ詩篇】(1/2),(2/2)
┣第九節“初めての狩りへ”【赤依ノ詩篇】
┣第十節“生き残る為に”【赤依ノ詩篇】(1/3),(2/3),(3/3)
┣第十一節“先達の狩人”【赤依ノ詩篇】(1/2),(2/2)
┣第十二節“調和を生み出す手”【赤依ノ詩篇】(1/2),(2/2)
┣第十三節“死闘!アプトノス”【赤依ノ詩篇】
┣第十四節“黄昏に並ぶ夢”【赤依ノ詩篇】(1/3),(2/3),(3/3)
┣第十五節“好き狂暴期”【赤依ノ詩篇】(1/2),(2/2)
┣第十六節“アムニス結成”【赤依ノ詩篇】(1/4),(2/4).(3/4),(4/4)
┗第十七節“骨折り損の草臥れ儲け”【赤依ノ詩篇】(1/2),(2/2)

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前回


 改めて見渡すと辺りは大分落ち着いては来たが、未だに瓦礫を撤去する人、
岩を何処かへ運び出す人、医療班らしき人達に怪我人と、
まだまだ沢山の人で賑わっている。

 まだ正午前だが、今日はこのまま日が暮れてしまいそうだった。
 リセが
(今日ってギルドの業務どうするんだ?
てか狩りに行ってるハンターは戻ってきたら集会所潰れてるんだよな‥‥)
などと考えながら立ち尽くしていると、
そこへ作業が一段落したのかレイシャがやってくる。

「‥‥“しゅ”ごめんね。大丈夫だった?」
「あ、レイシャ!フレンダも無事だし、
アズに聞いたんだけど崩落はズッコケが原因じゃないみたいだよ!!
何か向こうの金ピカさんが関係してるらしいよ」

 とにかく、真っ先にレイシャに言わなければならないニュースを伝えた。

「‥‥そう、教えてくれてありがとう。
向こうの金ピカさん‥‥って“せっちゃん”?
何かさっきからいる感じはあったね」
「せっちゃん?知り合いなの?」

 またレイシャの例の癖が発動しているようだった。
あの厳つい外見から察するに、絶対そんな愛称の人物ではないはずだ。

「‥‥“せっちゃん”ってのは《ラセツ》の事だな。
奴も元はミナガルデの凄腕ハンターだ」
 そこにアリマもやって来て代わりに答える。

「ラセツ?元?今は違うの?あの格好で?」
リセは事情が飲み込めず一遍に質問してしまう。

「‥‥奴は二年前ミナガルデを追放され、今は牙獣族《ジェヴォーダン》の族長だ。
本人と少し話したがどうも奴がこの近く、
と言っても街から三百メートルくらい離れた場所で黒炎と出くわして戦闘、
丁度集会所の真上辺りにぶっ飛ばされたのが崩落の一番の原因らしい。
傍迷惑な話だな」



 ‥‥‥‥‥え???なんだって??それはそれで一体どういうことなんだ。



 難解な言葉や難しい単語は無かったが、
リセの常識に照らし合わせると大分理解し難い内容だ。

「‥‥‥ってあの人が牙獣族の族長!?若くない!!?
‥‥でも牙獣族って二年以上前からなかったっけ?」

「二年前トップが代わったんだ。
まぁそれ以前から奴は奴で牙獣に繋がりがあったらしいが」

「言われてみればそうか。フェイロンや甲殻族もそうだったらしいし‥‥」

 リセの出身フェイロンこと飛竜族、
後は甲殻族も長がリセの知る限り数十年代わっていないが、
確かに父が若い頃は別の人間がトップだったと聞いた気がする。
そこはまぁ良いとして‥‥。

「三百メートル飛ばされた???人が人に?????
いくらあの黒炎が相手でも‥‥‥‥いやあの人も大分元気そうだよ?」

 三百メートル飛ばされた先でおもむろに瓦礫の撤去‥‥。

「黒炎がどんな攻撃をしたのか知らんが、
アイツはアイツで威力を相殺する為に何かしたんだろう。
ラセツもラージャンと肉弾戦を繰り広げるような化けモンだ」

 今、何か聞き捨てならない事をサラッと言われた気がした。

「‥‥‥はあ?!!!??
ラージャンて確か片手で10トン級のアプトノスくらいなら
軽々と投げ飛ばす怪力でしょ!?!?」

 何か今日は自分の世界の常識がもの凄いインフレーションしてる気がする。

「一応《破砕拳》ってハンターの武器に匹敵する威力の手甲型武具は使ってた。
多分今も」

 ああ‥‥一日で色んな知識が脳内辞書に増えて整理出来そうにない。
でも気になるから聞くしかない。

「はさいけん?全然聞いたこと無いんだけど‥‥‥」

「ああ、知らなくて良い。俺も良く知らんから。
ところで、今はそんな事よりお前さ‥‥‥」

「え?俺が何?」

 アリマが凄く不思議そうな顔で見つめてきた。
右手で口元を覆い、考え込むような仕草まで。出会ってからあまり見た事無い表情だ。
関係ないけど手がおっきいなぁ‥‥それとも顔が小さいのかな?
 さっぱり訳の分からないリセがそんな事を考えていると、
アリマは一度首を傾げ、左手で何やらリセの右足の方を指差した。



「‥‥‥‥なんか右足折れてね?変な方向にくにゃってるぞ‥‥?」



 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。



 ‥‥‥‥‥折れてる?誰の足が?足が、折れてるって?くにゃってる??何???



 ‥‥足が折れてる!?俺の!!??



 すぐに足下を見る。右足をヒョイと上げる。



ブラブラ、ブラブラ。

オレノアシ=オレテラッ!?!







「うびゃあっ!??!!!??!!」



 アリマの言葉を理解した瞬間、リセは全身に響く凄まじい激痛に襲われた。
そのままその場にしゃがみ込み右足を両手で押さえる。
「‥‥ハッ!?‥‥足が、足の骨が折れたぁ~!!!」
 あまりの痛さに凄く当たり前の事実を口走ってしまう。
「いやいやいやいやいや!?はあぁぁぁぁぁぁっ!!??お前気付くの遅いよ!!
何で普通に救助加わってたんだよ!!?お前今んとこ一番重傷だぞ!!!」
 そういうとアリマは即座に俺をおんぶしてイッタァァァァァァッ!!?
治療班のところまで運んでくれてるイテテテテテテッ!!?

「イタイヨーー!!!イタイヨーー!!!」
「気をしっかり持てーー!!!さっきまでの金剛の精神はどこいったーー!!!」

 こうなったらもう恥も外聞もな痛いイタイイタイ!痛いモンは痛い!
すぐに即興で組まれたテントの近くに運び込まれた!
 沢山の人で賑わってる!
活気あるね!怪我人だらけだけど!
 でも自分が明らかに重傷過ぎて浮いてると言うか、なんかみんなの視線が痛いッ!

‥‥‥わ、笑うなぁぁぁぁぁぁーーーーッ!!!!!
こっちは死ぬほど痛いんだかんね!!!!

 ‥‥ハッ!?しまった今の口に出してないよな!?
キャラ崩壊とか言われちゃ‥‥いや周囲を敵に回してしまう!
只でさえ怪奇・針のムシロ男だのにッ!

「あ~左肩の打撲もあるね。ていうか全身鞭打ちな感じかなぁ。
とりあえず痛み止めの服用と折れた足の固定からかな」

 何か医者らしき人がノンキ‥いや冷静に語っている。

「はい、苦いけど我慢我慢」

 更に見覚えのある面々がちらほら、口々に話し掛けてくる。



「リセ、お前やっぱ素質あるな!相当なクレイジーだ」

「‥‥今までどうやって動いてたの?」

「私なんてさっき抱っこされてた」

「ドハハハハ!お前みたいな馬鹿は大成するぞ!」
「バハハハハ!さっすがアリマの目に狂いはねぇな!」


 ほぼ地べたの粗末な布の上に寝かされて、
首にも少し何か巻かれたから周りが良く見えないけど、
まあ大体誰に声を掛けられてるか分かる。



 ‥‥けどどうでもいいし!返事どころじゃないし今!



 ‥‥‥‥?



‥‥‥‥‥んん?



おおお??



ああ~‥‥なんかちょっとだけ楽になってきたぞっ。
 ついでに何か下半身の感覚も鈍くなってきた。
これが鎮痛剤ってやつの威力なんだぁ‥‥。

「‥‥早速落ち着いてきたようだな、リセ。ハンターに纏わる薬品は速効性だ」
「あ、アリマ?うん‥‥‥それにしても鎮痛剤ってすごい‥すご‥‥‥
ん?あれは‥‥?」

 その時だった。
仰向けに寝ているリセの視界が何かを捉えた。
遙か上空に煌く“流星のような何か”を。

 しかし今は昼間‥‥流れ星なんて‥‥ん!!?あれ!??
‥‥間違いない!此方に迫ってきている!!

 リセが咄嗟に上体を起こすと、アリマやレイシャが異変を感じ取り身構えていた。
そしてリセの優れた視力は、未だ高空にあるその物体の正体を看破する。

 あれは巨大な岩石か?!!?マズいッ!!!!広場に直撃するッ!!!!
理解が辛うじて追いついたその時。


「雷轟ッ!!!!!!!!!!羅刹撃ッッッ!!!!!!!!!!!!!」

ズドォォォォーーーーーン!!!!!!!!!!!

パラパラパラ‥‥‥。


「‥‥‥‥はいっ?」


 せっかく理解が状況に追いついたと思ったら、
状況は更に加速し光の速さでリセから遠ざかっていってしまった。

 ‥‥‥説明しようッ!多分無理だがッ!
凄い上空から崩落とは関係無い感じの巨大な岩が広場めがけて降ってきたのだッ!
その時何やらアズとせっちゃんさんのいる辺りから眩い閃光が迸り、
直後巨大な光の玉?が岩石に向かって高速で飛んでいき、これを迎撃ッ!
寸での所で木っ端ッ!!!!微塵にッ!!!!
粉ッ砕ッしたのだァァァーーッ!!!!!!


 ‥‥って?マジで何今の?人間って手からあんなん出せんの?
リセはパラパラと降り注ぐ巨岩の欠片と粉塵を浴びながら、
起こした体ごと思考までも固まってしまう。

 何か岩が崩れた瞬間、破片に混ざって黒い粉末が舞った気がした。

「こらラセツ!!!それを此処で使うなと‥‥」

 混乱の中怒鳴り声が聞こえてくる。
どうもアズの声らしいが、何だかいつもと雰囲気が違うような‥‥?本当にアズ‥?

「うっせぇな、助けてやったんだから良いだろぉ?
ってな訳でこれで今回の件はチャラって事で!!
アリマ兄貴オアレイシャベティその他、またなっ!!!!!」
「待ちなさっ‥‥‥!!!」
「お~う、またな~」

 のんきに手を振るアリマと慌てた様子のアズを後目に、
金色の人物が両腕を地面に打ち付けた。


ズドォォォン!!!!!!!


 地面を揺らす衝撃と轟音を伴い、
金色の人は一気に飛び上がってそのまま山肌から山肌に飛び移り、
あっという間に見えなくなった。

 去った後に残されたのは無残に砕かれた石畳。
‥‥ああ、これが例の?こりゃ確かに‥‥。

 一度は納得しかけたリセではあったが、
やはりミナガルデ滞在一日半ほどのリセの情報量キャパシティは、既に限界を迎えていた。


 ‥‥もう、どうでもいいや。


 どうせ分かりたくても分からないので、リセは、考えるのを止めた。







 リセ達一行は集会所を後にした。
‥‥と言うより、正確には這い出した。

 レイシャの衝撃発言の余波は凄まじいものだったが、
這い出したレイシャが直後口にした「冗談。てへっ」も衝撃的だった。
 レイシャの些細な冗談によって難攻不落を謳われるミナガルデ、
その山肌をくり貫き築かれたハンター集会所は脆くも崩れ去ったのだ。

 いや、マジで。
洒落にならない。
本当に大惨事だ。

 因みに今呆然と立ち尽くすリセの目の前で何が起きているかというと、
駆け付けたギルド職員を始めとする屈強な男達、
更にはアリマとかレイシャとかオアとかゴツい兄弟とか、
真っ先に這い出した猛者達が一丸となり、
必死で集会所に生き埋めになったハンター達を救助していた。

 辺り一面に怒号が飛び交う修羅場だ。
リセは彼らほど強靭ではないので、加わりたくとも体が動かないのだ。
 ‥‥と言っても、埋まった後即座に這い出したらしい数人、
特にアリマなんて(実物見たこと無いけど)
最強の牙獣種《ラージャン》を彷彿とさせる凄まじいパワーで
瓦礫を退かしてるので大丈夫そうではある。

 思い返すと崩落の直前アリマは
「テーブルの下に伏せろぉぉぉぉぉ!!!」と叫び、
一番大きな岩の固まりに突っ込んでいった。

 レイシャのボケにほぼ全員がズッコケるという展開から
急に集会所の天井が崩落したのに、あんな反応を見せるなんて‥‥。

 あのオアでさえ「ちょ待てよ」とか言って埋まっていったのに‥‥
‥いやあれはあれで余裕あるのか。
自分は普通に「ぎゃあああああああ」とか言ってたと思う。

 本当にアリマは凄い人だ。
彼のおかげでリセもそれほどギュウギュウには埋まらなかったし、
他の皆もそうだろう。そう思いたい。

 今も片手で自分の三倍くらいの大きさの岩を
軽々と持ち上げて人がいない方に放っている。
 良く良く見れば、いつの間にかアズにゃんやネコ
‥‥いやアイルー達まで救助に加わっている。
アイルー達は猫に毛が生えた程度の大きさの体で、
荷車に負傷者達を乗せ手際良く次から次へと運んでいるし、
細身に見えるアズもアリマの次くらい手際で瓦礫を撤去している。

 確かに味方なら心強そうだ。
 それに何だか全身金ピカふさふさの人物もいるが、彼も相当凄い。
あれ?集会所にあんな目立つハンターいたかな?
それに風の気配もパワーもアリマやアズ並みかもしれない。

 ‥‥ボーっと眺めていたが、
リセはふとベティやフレンダの事を思い出した。
そうだ、
集会所にはハンターじゃない人もいたし、とにかく自分も救助に加わろう。

 リセは痛む体で前進し集会所に舞い戻る。

 アリマ達の側にいてはむしろ邪魔になりそうなので他のハンター達と協力して、
地道に瓦礫を運び出していく。

「誰かいませんか~!」と声を張り上げながら瓦礫を退かしていると、
やがて瓦礫の下に人の腕が見えた。まさに緊張の一瞬である。

 瞬時に頭を過ぎる最悪の展開を掻き消すように、
リセは瓦礫と岩を退かしていく。
すると下から現れたのはフレンダだった。
何とか全身を掘り起こして砂埃を払い、
大きな外傷が見当たらないのは確認出来たが、彼女は目を閉じ微動だにしない。

「フレンダ!!頼むから目を開けてくれ!
(ホントにマジで)レイシャの為にも死んじゃ駄目だって!!!!!」

 必死の呼び掛けにも応えはない。
首まで覆う上に着膨れ気味のギルドガールの制服、
呼吸の有無すら良く分からないので、リセは咄嗟に口元に耳を近付ける。
すると‥‥。

 すぅ‥‥すぅ‥‥。
微かだが呼吸音が聞こえた。生きているのは間違い無い。まずは一安心だ。

 リセは脱力しフレンダに覆い被さるような格好のまま一息つく。

「‥‥もしかして、私の貞操ピンチなの?」
「うおわっ!!!!!!!!!!!」

 突然耳元で声がして、リセは飛び退いた。

「‥‥なんてね。助けてくれてアリガトウ」

 全く笑えない冗談だが無事で何よりだ。
フレンダがふるふると首を振るとボブヘアーに付いた埃が舞った。

「とりあえず怪我してるかもしれないから向こう行こう」

 リセは凸凹の足場で何とかフレンダの体を抱え上げた。
世に言うお姫様だっこというやつだっけ?

「‥‥‥リセ?貴方は大丈夫だったの?」
「うん、アリマ達の側にいたからね」

 本当は体の節々が痛むが、ここは強がるところだ。
アリマは即断即決が信条なら自分は嘘を付かないのが信条だが、
“大丈夫じゃない”わけじゃないからセーフだろう。

 リセは負傷者が手当を受けている広場の中央までフレンダを運び終え、
地面に降ろす。

「はい、一応安静にしててね」

「うん、ホントにありがとう。
お世話になったからさっきおっぱい触られたのは他言しないでおく」
「え!!!??触ってな‥‥‥‥あ」

 全く身に覚えがないと言いたいところだが何となく覚えている気がする。
さっき覆い被っていた僅かの間、自分が右手を付いていた場所‥‥。
なんだか妙に柔らかかったし気持ちよかった気がする。
あんな状況だから意識していなかったが哀しいかな男の性、
あの甘美なる感触がまだ手に残っている気がする。

「すみませんでした」

 ここは謝罪の一手だ。必要なら土下座も厭わない。

「いいってことよ」
と思ってたらやたら男前にあっさり許された。

 ‥‥どうも彼女、
アリマ裁判から薄々感じていたがレイシャと大変気が合いそうだ。

「ありがとう!じゃあ俺瓦礫の撤去に戻るよ」
「あ、待って‥‥」

 後ろからまだ声を掛けられた気がしたが、
ちょっと体の痛みが強まり
平気な顔を保のがキツくなってきたのでフレンダに背を向ける。

 しかし集会所(跡)に目を移すと、
皆の働きもありほとんど作業は収束していた。


「死傷者、重傷者はいないなーーー!!!!!」

「ああ、今んとこゼロだーー!!!!!」

「まだ見つかってない奴はーーー!!!!!」

「確認中ーーー!!!!!」


 アリマとオアのそんな声が聞こえてくる。
それはリセ(と言うかレイシャ)にとってとてつもない朗報だ。

 ひとまず安心したリセは辺りを見渡したが、マスターが見当たらない。
体が小さいからか、助け出されていないからか‥‥。

 ならば仕方無い‥‥
と恐る恐るあまり近付きたくない人物に背後から近寄る。
‥‥と、その人物が振り向いた事にリセが気付いた時にはすでに、
喉元に鋭く細い刃が突きつけられていた。

「ああなんだ、リセ君ですか。驚かせて悪かったね。
ただ私の背後からソロソロと近付くのは止めた方が良い」



 やっぱコワァァァァァァァァァァイ!!!!!!!!

 アズ、彼が一体いつ腰のレイピアに手を掛け抜き放ったのかも
リセには全く分からなかった。

「あああアズさん、質問があるんですが」

 それでもリセは、どうしても今すぐにアズに聞きたい事がある。

「ん?別にアズで構わなし畏まる必要もないよ。それで何かな?」

 こうして話している分には物腰柔らかく気さくな人にも感じるのだけど‥‥。

「今回の件レイシャの処遇は大丈夫でしょうか?」

 そう、さっきからこれが気掛かりで気掛かりで気が気じゃない。

「ん?レイシャ嬢かい?
ああ、報告は受けたけどこの崩落の原因は多分それではないから平気だよ」
「ええっ!!!??そうなの?!!??!」

 それはリセの不安を根底から覆す威力の言葉だった。

「事情を詳しく説明してあげたいけど今は忙しいし私自身情報を確認中だ。
とにかく君はレイシャ嬢の事が何より心配だったのでしょう?
君自身が中々ヒドい有様なのに」

 やはり悪人に思えない。

「いやその、うん。それだけ分かれば充分だ、ありがとう」
「どういたしまして。さて‥‥君も気のなるようだが、
私はあの金色の人物に事情を聞かねばならないので失礼するよ。お大事にね」

そう言うとアズは、謎の金色の人物の元へ歩き去っていった。

「さようなら~‥‥」

 この時リセは、
アズは自分が例の人物を見ていた視線に気付いていたのかと思い至り、
やはり全力で警戒するべきだと心に決めた。


続き




【黒滅伝説(こくめつでんせつ)】

シュレイド大陸を中心に世界中の数多の地域で語り継がれる黒龍伝説。

その最も有名かつ代表的な一形態の原型は、今とは全く異なるものだったという異聞録が存在する為、記載する。

 第一部

数多の飛竜を駆遂せし日々。

伝説は蘇らぬ。

数多の肉を裂き、骨を砕き、血を啜った日々。

彼の者は現れぬ。

土を焼く日々。
鉄(くろがね)を溶かす日々。
水を煮立たす日々。
風を起こす日々。
木を薙ぐ日々。
炎を生み出す日々。

その姿見る事叶わず。

 第二部

今呼び水に導かれ、運命は解き放たれん。

その者の名は宿命の戦い。

我らの頭上に死は輝く。

喉あらば共に叫べ。
耳あらば共に聞け。
心あらば共に祈れ。
ミラボレアスよ。

天と地とを覆い尽くす、我が焔(ほむら)を。

天と地とを覆い尽くす、我が光(ひかり)を。

我らが運命(さだめ)を。

今解き放たん。

以上が黒龍伝説の雛形とされ、現在主流とされる解釈では、黒龍に関する逸話が“大いなる龍の災厄”以前から語られていたのは確か(太古の龍大戦など)であり、第一部は何らかの理由で黒龍を探す人物の足取りを示し、第二部は黒龍と対峙し滅ぼさんとする人物を示しているという。

その性質から、この唄は「黒きを滅ぼさんとする者の唄」即ち『黒滅伝説』と呼ばれるようになった。

またシュレイド大陸の公の場で論じる事は王国が禁じているが、これを唄った最古の「赤衣の詩人」の正体とは、幾つかの文献にて「正装、戦装束は常に赤を基調とした衣装を纏っていた」と記されるロストシュレイド家の第二王子ではないかと推察されている。

その根拠は当然前述の正装の色合いの合致のみではなく、第一部の狂気を感じさせる黒龍への執念も、彼の第二王子であれば説明が付くと言うもの。

国防の要を担っていた彼ならば、王城周辺が古くから黒龍の目撃が多発していた忌み地であると知っていた可能性が極めて高く、いつか必ず訪れる運命の戦争を予期し、国の未来の為自らが万全の力を振るえる内に黒龍をおびき寄せ、討ち果たすつもりだったのではと推察されている。

これより決定的とされる第二部では、建国王の死と『大いなる龍の災厄』の際に黒龍伝説が初めて唄われたと言う説も、原型がこの黒滅伝説ならばその内容から「黒龍を前に自身と戦士達を奮い立たせる為の第二王子の檄」とすれば説明が付くと言うもの。

だが、学者の中には「その解釈が正しいとすれば、第二王子は“戦神”と呼ばれた武力のみならず“天地を覆い尽くす”“人知を越えた何らかの力”を持っていた事になるのではないか」と更なる疑問を呈する者もいる。

シュレイド軍の精鋭は“火攻め”を得意として数多の戦争を勝ち抜いたとされている為、それを指摘する意見はあれど、これについても「戦神と呼ばれた者が、只の火攻めを如何にも“黒龍に通用する力”であるかのように語るのはおかしい」と反論され話は平行線となる。

現在シュレイド大陸では「国が滅亡した事実がある以上、第二王子始めシュレイド軍は黒龍を討たんと奮起したが、結果強大過ぎる力を前に為す術もなく屈し、その運命を儚む唄」と言う結論に収束しつつあるが、シュレイド大陸外の学者には第二王子と赤衣の詩人、更に古シュレイド王国滅亡後に端を発した幾つかの伝説の神を、同一視する者達がいる。

彼らは「襲来した黒龍は一体ではなく、あれは『第二次龍大戦』だった」と主張しており、シュレイド軍は少なくとも数体の黒龍を撃破したとしている。

ただしこの説を唱える学者は九割方“ロストシュレイド陰謀説”論者であり、要するに“運命の三王子はこの滅亡を生き延びており、ロストシュレイド家は今も世界を支配している”との異説を支持するロマンチストだと位置付けられる。

しかし異説と見なされつつも一応の根拠はあり、大陸内外に残された当時の記録にあるシュレイド大陸での複数体の黒龍の目撃情報や、当時のシュレイド軍の不可解な出兵、交戦記録、他に彼の高名なルーツェの著書などは存在する。

更に「現実に国が滅亡したのだから敗北した」と真っ向から対立する意見が「人類を憎み世界を滅ぼすとも語られる黒龍の襲来が事実ならば、何故黒龍は破壊行為を一国に止め、世界は今も平穏を保っているのか」というものである。

この大いなる龍の災厄や黒滅伝説については、不用意に議論を始めると収拾が着かなくなる為、識者達の間ではシュレイドの箝口令に関わらず無闇に口外する事はタブーとされている。

更に千年前の出来事である為、資料が残されていてもその信憑性の調査から始める必要があり、同時に全ての歴史の舞台となったシュレイド大陸での調査議論が東西シュレイドどちらからも禁じられている為、真相は何れも闇の中である。




【運命の三王子(うんめいのさんおうじ)】

旧シュレイド時代、数多の政争を生き延びたロストシュレイド家の三人の王子を指す言葉。

国王は多くの妃との間に子をもうけたが、最後まで生き残ったのは年長から順のこの三名のみだったという。

彼らの逸話として唯一現代に伝わるものは、ある武術大会での出来事である。

見事決勝まで勝ち残った第三王子は、突如「この闘いの勝者と闘え」と見物席にいた第二王子に対し要求した。

これを受け第二王子が「ならば決勝まで残ったお前達二人を同時に相手にする」と提案したところ、第三王子は憤慨。

その際、国王を挟んで第二王子の隣に控えていた第一王子が発言、自身と第二王子、第三王子と対戦相手の四人二組による決勝戦を日を改めて行うというのはどうか、と持ちかけ第三王子と対戦相手はこれを承諾。数百万の観客は更なる熱狂に包まれた。

当時、第二王子は世界に『戦神』の名で知られた人物であり、第一王子は絶大なカリスマこそあったものの優秀な為政者であり、並びに研究者として名を馳せていた為に人前で剣を振るう機会はなく、その二人が共闘するとあって世界中の人々の興味関心を集めた。

そしてこの闘いは後世まで残る伝説として、今も世界各地で語り草となっている。

尚、一説にはこの三名が何れも後の『大いなる龍の災厄』を免れたとも語られるが、後年の足取り、没年は一切不明である。




【失われし王(うしなわれしおう)】

古シュレイド王国末期、建国王の死後王位を継ぐべく立ち上がった古シュレイド王家の第一王子を指す敬称。

詳細は不明だが、建国王健在当時からほぼ全ての国民が、彼の一刻も早い即位を陰ながら切望したほどのカリスマの持ち主だったと言う。

一説には、王位継承は確かに成されたとも言われ、その場合彼は王子ではなく紛れもない王と言える為、古来より失われし王の名で呼ばれている。




【喰龍人(がりゅうど)】

大陸の極一部の者達の間で語られる『旧シュレイド城黒龍翼下説』より更に秘匿されたもう一つの『黒龍伝説』。

それはヒンメルン山脈に巣くう「龍を喰らう人の形をした何か」の存在を示唆している。

事の発端は現在より数十年前、黒龍の目撃情報を伝えられたギルドが調査の為、秘密裏に四名の一流ハンター達を選出し派遣した際に起きたとされる。

彼らがシュレイド城に辿り着いた時、其処に生きた黒龍の姿は無く、代わりに力無く地に伏した龍の亡骸と、それを喰らう人間大の大きさの生物がいたと言う。

当時のギルド上層部の議事録には、遭遇したハンターの内三名はその場で殺害され、生き延びた一人もその詳細を語った後ほどなく死亡したと記録されている。

彼の者によれば、その姿は人に似て四肢はあるが背部が異様に盛り上がり首は無く、腰にのたうつ尾は見えたが翼はなかったという。

議事録の最終項には、語り手となった最後の生き残りの死因は不明、彼は今際の際にあるメッセージを伝え息を引き取ったと記されている。

その伝言とは「我、災厄を免れし運命の一柱、その成れの果て。汝、敗走しそれのみを語り伝えよ」だとされるが、この言葉が意味する所は未だ不明である。




【襲焔の渦(ジ・エンド・オブ・ボルテクス)】

本来は焔の嵐と巨岩の雨を伴う終末的な自然現象を指す言葉であるが、その怪異は実際には作為的なものであるという説が根強く、現在では現象を引き起こす存在そのものを指す徒名。

現象自体は遙か古代から言い伝えがあり、それは恐るべき紅き龍の力によるものと永らく伝えられてきたが、現代より遡る事千年前、同種の力を扱う人間が出現したと記す文献が存在している。

突如としてシュレイド大陸に現れた人の姿をした襲焔の渦は、燃え盛る隕石と類い希なる武力を持って大陸各地で未曽有の殺戮を繰り広げた。

犠牲者は数百万人に上るとされ当時から忌むべき出来事として語られていたが、同時にその神の如き力を目の当たりにし魅了された者も多く、中には愛する者を奪われていながら、襲焔の渦を神と信仰する人々も多かったという。

故に現代において、襲焔の渦は『最も畏怖すべき邪神』と位置付けられ、主として戦いを生業とする者達に広く信仰されている。




【始天神(センアンセスター・オブ・ゴッド)】

「伝説の中の伝説」と謳われる神格化された人物。シュレイド大陸の誰もが知るお伽話の登場人物であるが、その実像の一切は謎に包まれており、現在では神格化された理由すら定かではない。

僅かに残された文献の解読された一節には「影無き者」、「白面の騎士」と記される他「彼の者、神の如き者達を以て神と崇め奉られる。彼の者、神々を盟約により束ねし神々の盟主なり。彼の者来降せし時、星に大いなる福音か、避けられぬ死を齎す」と記載されている。

更には始天神に連なる神として『緋天神』、『黒天神』が存在するという。




【九龍の座(チェイン・オブ・ルーツ)】

実在を裏付ける根拠の無さ、突飛過ぎる内容から伝説と言うよりはお伽話に近く、真偽について真面目に研究している人間は存在しない。あくまで何故そのような物語が語られるようになったのか、その歴史的背景を研究する歴史民族学者が存在するのみである。

これによれば、シュレイド大陸にて名を残し、英雄をも超越して限りなく神に近づいた者達は、始天神よりこの九龍の座へと導かれ、そこで永遠の命と自然を司る龍の力を与えられると言われている。