アメリカ大学生 親の会(海外大学進学 親の会)のforumができました!

お子さんがアメリカや海外の大学に進学している、進学を控えている、留学を考えている方はもちろん、お子さんがが大学卒業しましたという方(こんなでしたよ~などのご意見)、現役海外大学生、留学ってどんな?と考えている学生さん、皆さんで意見や情報の交換ができたらい良いな、と思っています

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娘は絵を描くことが好きで、高校卒業後は美術学校に行きたいと話していましたが、高3に上がる時に突然進路を変えて薬剤師になりたいと言い出しました。当時の目標は病院内で働く薬剤師だったかと思います。

 

ここで、私が知っている範囲内でフランスの医学部受験のことを書きます。

もう5年以上前のことですし、結局娘はフランスでは薬学部に進学しなかったので、こんな感じか、と言う程度にしかわかりませんので100%鵜呑みにされませんよう

 

フランスの教育の理念は「スタートは平等に」なのだそうです。なので、バカロレアを合格したら、誰でも大学に登録することが可能です。

フランスの若者の失業率は30%と非常に高く、そのためか皆確実に仕事に就ける、理系なら医学部、文系なら法学部に登録する学生が非常に多いです。他の学部と同じで、これら学部に入るための入学試験はありません。

 

なので、医学部の入学者は2000人以上となり、最初は教室に入れないほどです。

が、中には「医学部ってどんな?」と軽い気持ちで登録する学生もいますので、授業が進むにつれて人数は減っていきます。

 

娘は薬学部を志望した、と書いたのに、なぜ医学部のことを書いているかと言うと、1年生は医学、歯学、薬学、助産師、キネジスト(整体や理学療法をする人)は一緒になって勉強し、試験結果の上位から医学部、歯学部、薬学部、、、と割り振られるのです。医学部2年目に上がれる倍率は10倍前後と聞いたことがあります。

 

1年目の勉強の大変さと同級生との熾烈な競争は有名で、映画にもなっています。

 

 

1年目から2年目に上がる試験はマークシートです。が、日本のように5択とかではなく、5つ全てあっている場合もあれば、すべて間違えている問題もあり、1〜4つだけ正解と言う問題もありで、鉛筆を転がしておけ、は通用しません。

 

また、フランスの教育の理念は「スタートは平等に」と書きましたが、医学部2年目に上がるための予備校があり、多くの学生は予備校に通っています。

パリにもいくつか予備校があるようです。

娘も、もし医学部に入るのなら予備校に行った方が良いだろう、と一度見学に行きましたが、授業と自習室の使用料で1年で5000ユーロくらいと言われた記憶があります。もちろん、数学だけ受けるなどすればもっと安くできますし、医学部に進学した娘の同級生は予備校に年間1万ユーロ使った子もいました。

つまり、実際は全く平等ではありません。

 

大学に入るまで塾に行く子などフランスではあまりいませんが、大学生になってから塾通いとは日本と真逆です。

 

話を2年生に上がるための試験に戻します。

試験方法はマークシートなので、当然同じ点数を取る人が何人も出てきます。その場合どう言う風に順番を決めるかと言うと、誕生日の早い順というのです。

娘は学年の区切りの最後の方に生まれたので、これだけで不利な立場となります。

 

こんなで当然2年目に上がれない学生の方が多いので、上がれなかった学生は留年します。留年は2年しか認められないので、2回試験を受けて2年目に上がれなかったら自動的に医学部は退学となります。

 

グランゼコール に上がるためには、進学予備校(プレパ)に2年通い、太陽の陽を見ないほど勉強します。多くの学生が脱落してきますが、生き残った学生がグランゼコール に入るための入学試験を受けます。当然受験に失敗する学生も出てきます。

プレパの場合は、プレパで勉強したことも学歴とみなされ、例えば2年通った後グランゼコール 受験に失敗し、その後プレパを辞めたとしても、大学3年に編入できます。

が、医学部もプレパ同様にものすごく勉強させられるのに2年生に上がれなかったら、医学部にいた間は学歴とカウントされず、別の学部で1年生から始めないとなりません。

 

また、娘は薬学部を目指していましたが、例えばマークシートの試験の結果が良すぎてしまい、歯学部に振り分けられてしまったとします。そうすると、いや、私は薬学部に行きたいのだと言っても希望は通りません。

フランスの医学部に進学するのは大きな博打を打つのと同じです。

 

こんななので、娘はフランスで薬剤師を目指すことはやめました。

その後、今通っているカナダの大学の説明会に出かけ、説明会が終わった後カウンセラーに、自分はこんなことを勉強したいと話したところ、ドンピシャな学科を見つけてくれて、娘はその日をきっかけにカナダの大学を目指すことにしました。

 

話は逸れますが、日本の医師の残業上限が年1860年(月155時間相当)とする報告書案が示されているそうですが、フランスの医師は日本よりワークライフバランスが取れているように思います。

近隣医師とのネットワークがちゃんと作られているようで、お医者さんの休みが重ならないようにスケジューリングされていました。かかりつけのお医者さんに診てもらうために電話をすると「◯月X日まで休みなので、その間はDr.〜の所に行ってください。電話番号は〜」とメッセージが流れて教えてくれました。これは獣医も同じでした。

私はフランスに住んでいる時にひどい肺炎になり数日間入院しました。その後数ヶ月間その後の様子を診てもらうために入院した病院に通ったのですが、診察が終わり次の予約を取る時、担当医の秘書の方が「Dr.~は12月はバカンスだから次の予約は年明けね」と言われました。

 

また、日本では医学部入試で女子や多浪の学生の合格者を減らしていることが発覚しましたが、その際、フランス大使館がこんなtweetをして話題になりました。上記の通り日本よりワークライフバランスが取れているので、女性医師も日本より働きやすいのではないか、と自分の経験から思います。

 

補足1 フランスの高校は、大学に進学するための普通科高校と、手に職をつけて高校卒業後就職をする職業高校がありますが、職業高校のバカロレアを取った学生でも大学に進学することはできます。が、職業高校は普通科の授業を殆どしませんから、勉強についていけるかは別問題です。

以前、職業高校から医学部に進学し、2年目に上がれたという伝説の生徒がいた、と聞いたことはあります。

 

補足2 あまりに医学部に登録する学生が多いので、最近は普通高校の理系のバカロレアを取った学生しか医学部に登録はできないと息子が話していました

 

補足3 医師不足と特殊な医学部事情を解消するために、マクロン大統領が2018年10月に医療改革を発表しています。こちら

 

補足4 フランスの大学は殆どが国立大学で、フランス人なら学費はほぼ無料ですが(外国人留学生の学費は値上げが発表されています)、学費が発生する私立大学もあります。私立大学の医学部に進学すると、たとえ2年生に上がれなくても、プレパのように学歴と見なしてくれて、相応の学年に編入できるそうです。

 

補足5 フランスの医学部がこのように2年目に上がるのが困難なので、最近はベルギーの大学を目指す学生が増えて問題になっています。記事はこちら