iPS細胞の研究で知られる山中伸弥さんは、子どもの頃は病弱で、がりがりの体型だったそうです。そんな息子を不憫に思ったお父様に言われて、中学生の頃から柔道を習いました。

 野球やサッカーはしょっちゅう試合がありますが、柔道は試合が少なく、ひたすら苦しい練習をする毎日です。1年365日のうち、360日は練習で、残りの5日が試合です。試合に勝ち進むことができれば5日ですが、敗退すればそれから半年間は苦しい練習の日々が待っています。

 しかし、中学高校での、つらく苦しい柔道の経験は、後年の研究者としての日々に活かされているそうです。

 

 研究の日々は、柔道の日々どころではありません。毎日毎日、実に単調な日々が続き、歓喜の時は、数年に一度もありません。下手をすれば、何年も研究を続けても、成果が上がらないということもあるそうです。未来に保障のない日々を耐えられたのは、柔道で鍛えられた心身があったからこそと言われています。

 

 山中さんは、高校二年生の頃には二段の黒帯になりましたが、しょっちゅう捻挫や骨折をしていたそうです。そんな折、教育実習で来校した、柔道三段の大学生に稽古をつけてもらうことになりました。相手の強さが勝っていることはわかっていましたが、負けるのが悔しくて、投げられたときに受け身を取らないでいたため腕を骨折してしまいました。

 

 骨折させてしまったことを心苦しく思った大学生は、山中さんのお宅にお詫びの電話を入れたそうです。すると、電話を取られたお母様は「悪いのはうちの息子です。ちゃんと受け身をしなかったから骨折したに違いありません。気にしないでください」ときっぱりと言い切り、傍らでそれを聞いていた山中さんは、我が親ながら立派だと感心されたそうです。

 それ以来、何か悪いことが起こったときは「身から出たサビ」、反対にいいことがあったら「おかげさま」と考えるようになったそうです。

 私も山中さんの考えにあやかりたいと思いました。