「巨人の肩に乗っているから、遠くを見ることができる」という言葉があります。

 これは、12世紀のフランスの人で、古代ギリシアの哲学者、プラトンの思想を研究したベルナールという人の言葉だとされています。

 これは、人類の先師たちが残した古典を学ぶことにより、今を生きる私たちが、あたかも巨人の肩に乗って、巨人よりも遠くを眺めることができるように、偉大な先達の残した業績を学ぶことにより、さらにそれらを発展させることができるということです。

 

 ライフネット生命保険(株)の創始者、出口治明さんは、団塊の世代で、田舎育ちでした。東京の大学に入ると、当時は学生運動が盛んな時代で、周りの学生はマルクスやレ-ニン、トロツキーといった革命家の本を読んでいましたが、出口さんは、それまでそのような書物とは無縁の環境で育っていました。読んだこともないことを正直に告白すると、軽蔑のまなざしを向けられました。

 そこで奮起して、マルクスの本を分からないなりにむさぼるように読みました。すると、マルクスは、やたらとへ-ゲルの話をするので、次にへ-ゲルの本に挑戦しました。今度はヘ-ゲルを理解するには、カントを知らなければならないと、次にカントに挑戦しました。そうやっていくうちに、古代ギリシアのアリストテレスやプラトンにまでたどり着くのでした。

 こうして出口さんは、「巨人の肩に乗って」西洋哲学の歴史を学ぶことになります。

 こうした若き日の勉強が役に立ち、後年、『哲学と宗教全史』というベストセラーを書き上げることになるのです。

 

 この出口さんに限らず、私たちも知らないうちに「巨人の肩」に乗って、便利生活を満喫しています。

「巨人の肩」に乗るのに安価ですぐにできるのは、本を読むことです。古典は、多くの人が読んで後世に残すべくとして残されたものです。古典を読むことにより、思考の幅を広げ、現在において流行に流されない生き方をするために役立てていきたいものです。