子供は「未来からの使者」だといいます。

 未来は彼らが大人になって生きる世界です。

 しかし、今の大人たちが、この「未来の使者」たちに素晴らしい世界を用意することができるかと問うと、なかなか答えにくいところがあります。

 

 1992年、ブラジルのリオ・デジャネイロで開かれた国連の地球環境サミットでスピーチした12歳のカナダの少女の言葉は、「リオの伝説のスピーチ」として、今でも語り草になっています。ご存知の方もおられることでしょう。

 

 その少女は、子ども環境運動の代表として6分間のスピーチを行いました。カナダからブラジルまでの1万キロの旅の費用も自分達で捻出しての登壇でした。

 

 子供たちは、自分たちが生きる未来の地球に不安を抱えています。

 地球環境の危機的状況については、下手な大人たちよりもはるかに勉強しています。

 

 未来に生きる子どものために、世界中の飢えに苦しむ子どものために、そして死に絶えようとしている無数の動物のために話しているのです。

 

「オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。

 

 死んだ川にどうやってサケを呼び戻すのか、あなたは知らないでしょう。

 

 絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう。

 

 そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのか、あなたは知らないでしょう。

 

 どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください」

 

 耳に痛い言葉ですが、もっと痛い言葉が続きます。

 

 学校や幼稚園で大人たちが子どもに教えていることについて言っています。

 

「あなたたち大人は、私たち子どもに、世の中でどうふるまうかを教えています。

たとえば、

争いをしないこと

話し合いで解決すること

他人を尊重すること

ちらかしたら自分でかたづけること

ほかの生き物をむやみに傷つけないこと

わかちあうこと

そしてよくばらないこと

 

ならばなぜ、あなたたちは、私たちにするなということをしているんですか」

 

 子ども達の言うことはもっともです。

 

 多くの大人は、子供たちの言い分は分かっていても、自分たちのような権限もお金も知恵もないものには、何ともできないと思い込んでいないでしょうか。

 世界を変えるのは、政治家や学者みたいな専門家にお任せしてしまってはいないでしょうか。

 でも、本当の平和は、誰かが作ってくれた世界ではないと思います。

 自分の属する小さな世界から平和を実現していく未来にしか、本当の世界平和は実現しないのではないでしょうか。

 

(引用 セヴァン・カリス=スズキ『あなたが世界を変える日』学陽書房)