俺が25歳の時。

その頃俺は仕事をしていなかった。

今までの人生の中で最も密度が薄かった時期。

多少の貯金が有った為、働きもしないで毎日遊んでいた。

朝からパチンコ屋に並ぶという愚行もしばしば。

ある日俺は行きつけのスロット専門店で沖スロを打っていた。

ボーナスが成立するとハイビスカスが光るというだけの単純な演出。

だが、それが逆に俺の心をわし掴みにした。

確か朝から打っていたんだが、その日はガンガン光る。

圧倒的勝利。

俺は上機嫌で打ち続けていた。




その時。




ドカッ!!




隣の男が台を殴っている。

男の台に目を向けると回転数は1000回を越えたところだった。

圧倒的敗北。

かなりイライラしている様だ。

頻繁にタバコに火を着け、時折財布の中身を確認している。

俺の台がまた光る。

隣から舌打ちが聞こえた。

挙げ句BIGだ。

けたたましいボーナスのBGMが店内に響き渡る。

男はまた台を殴った。

坊主頭に作業着。

割といかつい感じだ。

これは絡まれちゃうかなと覚悟していたその時。

「じゅんさん!」

隣のハゲが俺の名前を呼んでいる。

全く見覚えがない。

「じゅんさんじゃないっすか!」

いやだからお前は誰なんだ。

「ひでですよ!分からんっすかじゅんさん」

ヒデデスヨ?

言葉の意味が分からない。

その時の俺にひでという知り合いは、
以前一緒にホストクラブで働いていて結構仲良かったけど、
いつの間にか音信不通になり何年か会っていなかった髪の毛の長い男前しかいない。

断じてこのハゲではない。

が、良く顔を見てみる。

確かにあの王子の面影がある。

だが何故ハゲなんだ。

いや、何も聞くまい。

偶然の再会を果たし二人で飲む。

ひでさんはまたホストクラブに戻る事を考えていた様だ。

なら何故ハゲなんだ。

とは聞かなかった。

数ヶ月後、彼は髪を伸ばし再び夜の街に戻っていった。

彼との再会がきっかけになった俺は、
彼から数ヶ月遅れてホストクラブに戻る。

当時その店のNo.1だった藤堂博都とひでさんと俺と、三人でつるむ事が多かった。

そのままクラブアークが始まるのだけれど、それはまた別の話だ。

あの時ハゲたひでさんに偶然会わなければ今の俺は居なかったかもしれない。

彼と偶然に感謝しつつ、そろそろ仕事の用意を始めなければ。

今日もクラブアークは営業してます。

フレッシュな男前からアダルトな俺達まで品揃えは豊富です。

本日もクラブアークをどうぞよろしく。