以前、自分の個展を地元静岡で行った時の事である。

  私の作品の8割以上は人物画や肖像画だ。
もちろん個展もおのずと人物画で占められてくる。

  来場者による個展の評価は賛否両論だった。
良い評価の例は、「よく描けている」「リアルである」「光と影の表現がいい」などだった。
厳しい評価の例は、「知らない人物の絵は買う気がしない」「もっと風景画を描くべきだ」「東京ではウケるかも知れないが、静岡では人物画はウケない」などだった。

  もちろんこれらの評価はすべて有り難いことには違いない。私が個展というアクションを起こした結果、来場してくださった方々の反応が生まれたわけだ。

  しかし、画家には少なくとも2種類の人間がいると思う。
1. 周りの空気を読み、ウケの良い絵を描く人。
2. あくまでも、自分の描きたい絵を描く人。

  私は後者で在りたいし、自分に偽った絵を描く気も起きないので、恐らく人物画を描き続けるだろう。

  個展の結果は風景画が2枚売れて、人物画はまったく売れなかった。でもそれでいいのだ。売れる、売れないは自分にとって、差ほど重要な事ではない。

  ところが、個展が終わってから試しにネットオークションに売れ残った人物画を数点出してみたところ、完売してしまった。

  もはやマーケットは全国、否世界に開かれた!と実感した瞬間だった。ネット社会は美術業界にも激震をもたらしていることは紛れもない事実だ。