オトンが天国に行った。
私が自分に向き合って出てきた
心の中に居座るオトンとの格闘で
過去のブログにたくさん登場したオトン
※昔の記事なので、未熟さ満載でお恥ずかしw
脳卒中で半身不随になって
施設に入ってあまり会えなくなって
やっと面会ができるようになったのは
皮肉にもオトンが最後入院した直後だった。
コロナの期間中
会えるのはオトンが病院に通院する時のみ
時間を合わせて病院で合流して
終わるとそこでさよなら
食べることが大好きなオトンは
診察が終わると必ず
「あー腹減った、なんか食べに行こう」と
毎回言ってた
けど4年弱、それは一度も叶わず
施設でその大好きな「食べる」ことを
だんだんと拒むようになってから
全身が浮腫み出して入院し
もう施設に戻ることはなかった。
私の人生の半分、いや、もっと
オトンで占められていた気がするから
結局私はオトンが大好きだったんじゃないかと
今なら思う。
スピリチュアや宇宙理論的な考えだと
死は目覚めだという。
私たちが朝起きた時
「あ、夢だったかぁ」と思うあの感じらしい
そして魂はみんなピュアだから
この世界で握りしめていた
全てのエゴがない状態に戻ると。
あのオトンから
嫌な部分が全てなくなった状態って
どんなだろう…
そう考えると
めちゃくちゃ愛に溢れている人だと
ある時、気が付いた。
それが
おとんが旅立つ前だったから
本当に良かったと私は思うんだ。
10月の頭に入院してあっという間に
もう危ないなって状態になった。
面会は週に一回15分、家族2名のみというところを
怒られながら母と毎日のように行って
全身使って呼吸しているオトンに
2人で声をかけ続ける。
ナースステーションで
キッチンタイマーが鳴って
「はーい！おわりでぇーす」と
看護婦さんが部屋にくる。
私たちはすごすごと帰りながら
反応のなかったオトンの状態に
不安をつのらせる母を
励ますのが私の役目だった。
ある日、
オトンは母の声に反応して
その目を開けた。
母をうつろに見るけれど、
目はまもなく閉じてしまう。
また母が
「お父さんっ！ お母さんよ！わかる⁈」
そう言うと、
オトンはまた目を開け小さくうなずいた。
そのオトンの反応を見て
すごく喜んだ母を私は見て
（良かったね…）と思いながら
その時、気が付いた。
「この3年間、オトンはちゃんと母に会えていない！」と。
母の小さな顔の半分は
大きな「自粛という名の強制」の布で隠れていた。
「お母さん！マスク取って顔見せてあげて」
決まりごとに躊躇しながら母は
マスクを取ると
「お父さん！ホラ、私も歳をとったでしょ」
そう恥ずかしそうに涙目で笑った。
するとオトンは大きく目を見開き
「あー」と声を振り絞って涙ぐんだ。
オトンは母の顔を目に焼き付けようと
その後ずっと目を開けて
母のことを見つめていた。
以前、母は封建的な父の愚痴を
いつも私にこぼしていて
「お父さんのお葬式で涙がでらんかったら、私どうしよう」
なんて体裁を心配をしていたんだ。
会えない時間は
長年の伴侶の存在の大きさを知った時間となって
施設に入ってからは少しずつ
下手くそすぎる愛情表現を頑張ってたのを
私は知っていた。
見つめ合う2人を
そばでそっと見守りながら
「私はこの2人から生まれたんだな」と
胸が温かくなりながら
至極当然のことを考えていた。
正確すぎるタイマーが別れの時を告げて
病室を出る。
帰り道に母は
「今日はすごく目を開けてくれたね！」
「良かったねぇ、声も聞けたねぇ！」
「あぁ、これは良くなってるのかも！」
と、嬉しそうだった。
今までに見れなかった
オトンのことを心から想う母を見ながら
死の間際に好反応を示すことがある事を
私は知っていた。
「うん」とだけ頷いて
オトンの終わりを覚悟した。
その2日後
就寝から2時間後に目が覚めて
スマホを見ていると電話が鳴り
病院からの連絡があった。
（とうとうこの日が来たんだ･･･）
「･･･よしっ。」
なんだかわからない
これから始まる忙しさを感じて
私は気合いを入れた。
母もオトンから足をもがれた人間だったから
1人では何もできない人。
（私が頑張らないと…）
昔の「しっかり者のアヤちゃん」を
ひっぱり出してきて装備する。
オトンの周りを
弟夫婦と甥っ子、母と私の5人が囲む。
前日に見たのとは比べ物にならないくらい
か弱い呼吸のオトンがいた。
「お父さん頑張って！！」
「お父さん！！しっかり！！！」
「良くなって帰るんでしょ！」
母と義理の妹は
大きな声でオトンを励まし続けた。
私の頭の中では
（もう充分頑張ったよなぁ…）
（もういいんじゃないの？）
（でも、お前はもう諦めてしまうのか？）
そんな言葉がチラチラ浮かんできたけれど
その声を打ち消してオトンの側に近づいた。
「お父さん、よく頑張ったねぇ！
お父さんとの時間いっぱい楽しかったよ。
私、色んなことしてもらったのに
特に親孝行できなくてごめんね。
また来世で会おうね！また一緒に遊ぼう！
お母さんを見守っててね！
お父さん！本当にありがとうね
ありがとう、ありがとう…」
少しずつ呼吸が小さくなるオトンに
自分の言いたかったことだけ
自分本位で言った。
すると私のそれキッカケに
皆んなも言いたかったことを
それぞれオトンに言葉をかけた。
だんだんと呼吸は小さくなり･･･
次第にその間隔も開いて来た。
『2023年11月1日午前2時11分』
オトンは地球のこの世界からフェイドアウトした。
２につづきます