西加奈子さん著 「i 」

 

 

この本を読んだきっかけは、随分前になりますが、

西さんのインタビューが掲載されている新聞記事を読んだからです。

 

西加奈子さん

 

『自分の心をえぐり、捉えて離れないテーマに向き合った。

 

内戦が続くシリア情勢をはじめとする「世界の現実」。

 

見たくないものから「逃げることにたけてきた」自身を戒めるように、

作家である以上は苦しい現実から目をそらさず、小説を書かんといかんと思いました。』

 

                                                新聞記事より

 

西さんがこのテーマを選んだのは、小学生時代、エジプトで暮らしていた、ということが影響しているとのこと。

 

重いテーマなので、読んでいてつらかったけど、

主人公が自分の気持ちと、どう折り合っていくんだろう、というところに興味がありました。

 

主人公、ワイルド曽田アイはシリアで生まれ、

アメリカ人の父と日本人の母の養女として育てられる。

 

赤ちゃんのときに引き取られたので、実の両親のことも故郷のことも知らない。

 

でも、シリアの悲惨な状況を考えると、自分が何不自由なく暮らしていることに罪悪感を抱く。

 

「この世界にアイは存在しません」

数学の教師の言葉がアイの心から離れない。

 

数学の i とは、虚数のこと。

 

i × i  = -1

 

概念として存在するだけで、実際には存在しない i アイ。

 

「この世界にアイは存在しません」

 

アイ自身、存在すべきではなかったのではないかと苦しむ。

 

紛争や災害で人が亡くなる度、アイは自分を責め続ける。

 

i とは、主人公のアイ、そして愛のアイ。

 

ラストの感動のシーンより、少しだけ抜粋させていただきます。

 

 

        ***

 

 

「この世界にアイは、存在する」

 

私はここだ!

 

アイはここにある!

 

両親に、ミナに、ユウに愛されたから私があるのではない。

 

私はずっとあった。

 

ずっと、ずっとあった。

 

だから、私はここに、今ここにあるのだ。

 

そして、そんな私を、この私を、両親が、ミナが、ユウが愛したのだ。

 

先に私はあった。

 

存在した。

 

そして、今も。

 

アイはここにある!

 

                                     🍀「i 」より