ヨーゼフ・アントン・ブルックナー(独:Joseph Anton Bruckner, 1824年9月4日 - 1896年10月11日)の交響曲第8番ハ短調は、1887年にその第1稿が完成した10曲目の交響曲である。後期ロマン派音楽の代表作の一つに挙げられる。ブルックナーはこの交響曲以降、ベートーヴェンの交響曲第9番と同様の第2楽章にスケルツォ、第3楽章に緩徐楽章を置く楽章配置を採用するようになる。

たびたび改訂が行われている。
作曲が開始されたのは1884年7月で、1887年夏に完成する(第1稿)。
1889年3月4日から1890年3月10日に改訂。これが「1890年・第2稿」。
 
 出版も複雑で、1892年、第2稿を元に、ブルックナーの弟子であったヨーゼフ・シャルク(フランツ・シャルクの兄)が出版。これは「初版」または「改訂版」と称される。
1939年、ローベルト・ハースによる第1次全集(ハース版)が出版された。ハース版は出版当初は単に「原典版」とも称されることもある。
レオポルト・ノヴァークによる第2次全集として、第2稿に基づく版(ノヴァーク版第2稿、1955年)、さらに第1稿に基づく版(ノヴァーク版第1稿、1972年)が出版された。
 
 荘厳な建築物と云えばよいのであろうか。しかも、複雑で難解。何百年もかけて建築された教会のようである。
第1稿では、晩年の集大成を感じる。その後の改定では、洗練されていくが、どうなのであろうか。
 
シモーネ・ヤング(指揮) ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団(1887年第1稿(ノーヴァク版))
第1稿では、第一楽章の最後、第1主題をトゥッティでハ長調にて演奏し、力強く楽章を締めくくる。実に壮大だ。後の改定、第2稿では削除されてしまった。
 
朝比奈隆(指揮) 大阪フィルハーモニー交響楽団(ハース版)
何百年もかけてその時代の様式を取り入れ増築されていった教会建築とは逆にぜい肉と思われる部分を削いでしまった洗練さが感じられる。
しかし、音を積み重ねた重厚さは失われていない。素晴らしい曲だと思う。

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