こちらのブログに登場した前髪法典を のたまっていた店長が、どうやらお店を退職されたみたいです。


そのお店をわたしが去ることになったのは、4年前の6月のことでした。

じつはコロナ禍のどさくさに乗じて、店長はわたしをお店から追放する体でいたみたいなんです(推測の域だけど、ほかのスタッフ何人かの証言もある)。

本社のマネージャーも巻き込み、揉めるに揉めて、最後はわたしが全面的に譲って謝罪もして、穏便に退職という形にまで持って行きました。


彼との最後のやり取りは、電話でした。

彼の最後から何番目かの台詞は「うとさん、分かってるのか知りませんけど····うちの会社はブラック企業です」と、なんとも力ない声で発せられた、頼りないものでした。

スマホ越しだったにも関わらず、彼の会社に対する失望感みたいなものが、わたしの心へ雪崩込んできたのが分かったんです。


そのあと続いて「退職ということなので、制服をクリーニングに出して1週間以内にお店に返しに来てほしい。僕の居ない時で構わないので····」と催促をされて

「おうおうブラック企業という割に、いっちょ前の常識は求めてくるじゃねえか!」と、強気に出たら拒めそうでしたけど、憤りを越えて彼が不憫に思えてならなくて、小言をいっさいこぼさずに「わかりました」とだけ、返事をしました。


電話を終えてから

「そういえば店長と初対面だった面接の際、聞いてもないのに、あの人自ら『うちの店はバイトに責任を押しつけたりしませんから、

ブラック企業なんかじゃありませんから って高らかに宣言してたよな····えっウソつきやん!」


ちゃんと伏線は張られていたんです。出来れば回収したくありませんでした。

(一旦は虚言だと腹を立てたけど、おそらく彼自身も面接の時点では、本気でホワイト企業と信じていた言い草だった)


制服はちゃんと近所のクリーニング店に出して、彼のいない日を狙い定めて返却に行きました。

返却までの期間、パリッと美しく仕立てられた制服を見つめて

「これを着て頑張っていた日々は何だったのかな····あんな想いをするために、あのお店へ入社したのかなぁ」なんて感傷的になっている内に怒りが込み上げてきて「あの野郎〜〜」と無自覚だったにしても、制服へ呪詛を掛けていた気がする。


でもそんな彼もお店から離れて、役割が解かれて、もう完全に許されたんだよなと感じました。いや奥底の次元では、彼は最初からずっと許されているだろうし、その上で、わたしにも恨む自由はありました。

でもあの因縁は本当に終わって、別の見方をするなら、わたしも恨むことから解放されたんだなって。


彼の事情を知る由は無いですが、より幸せになるための場所移動なはずだろうから、それが果たされたら良いよね、とは思いますよ。胸の内でも積極的な応援は出来ないけど、不幸を願ったりはないですし。

その彼のことは脇に置いても、あの時点でわたしがお店を去ることは、ごくごく自然な流れで、後悔したことが実は無いのです。


あのお店の外で知り合えていたら、たとえば友人の旦那さんという立ち位置で現れてくれていたら、もっとお互いに丁寧に関わり合えていたかもしれないな····と、

書いたこと自体が伏線になって、わたしの人生に再登場されるのは本気で嫌だな、戸惑いが過ぎるな。ご勘弁いただきたいものだな。


うと ありさ 🎒🦁


夫が引率で行った、遠足地のおみやげ。目元が娘に似ていたから買ってきたそうな。

今後ぬいぐるみは、増えゆくばかりの予感しかないので「今回はいいけど頻繁に買ってきたりしないでね」って、釘を差しておきました。